佐々木彬文の「四季・色・贅・食」 第21話 里程
日本の昔からあったとても素晴らしい単位のお話です。
『里程』という言葉を耳にしたことは有りませんか? 『京から大阪まで何里』とか、『今日は2里程歩いた』とか、この距離を『里程(りてい)』と申します。もう死語になってしまい使う方はおられないでしょうが、『里程』という言葉の響きが、何となく涼やかで美しいと感じるのは、私だけでしょうか?
江戸と京では一里の距離が異なった?
この『里程』は単なる距離を示しているのではないのです。一里=約3.9km(36町)と言われますが、これは、江戸時代から江戸で使われ出し、明治になって統一されました。(関東に多い一里です) 京都や畿内では、一里=約4.3kmが一般的で、私も※4.3km=一里と癖で計算してしまいます。
無理なく歩ける距離?
不動産屋さんの物件案内に『駅から三分』とか、『5分圏内にスーパー・商業施設あり』等と書かれているのを良く見掛けます。 「これって何メートルだろう?」と思ったことはありませんか。/p>
不動産屋さんの「歩ける距離」は1分=80mとして計算しているようです。
ですから、3分は240mです。1時間歩くと距離は4.8kmとなります。 男性成人で平地なら充分に歩けると思いますが、女性やお子さんでは一時間4.8kmはちょっと厳しい数字でかも? あ、決して不動産屋さんに言い掛かりをつけようっていうお話では無いのです(笑)。/p>
『一里』って何だろう? これは、平均して女性も男性も無理無く歩いた場合1時間で歩ける距離を『一里』としたものです。 1里=36町ですから1町=約119m/京間、1町=約109m/江戸間となります。このままお話を進めるととても見難くややこしく成りますので大雑把な表にしてみます。
京間※ 江戸間※ 「1間って何メートル?」 「どのようにして決まった長さ?」 と疑問を持たれた事はありませんか? 現在、1間=約1.81mと定められております。この長さを人は何秒で歩くのでしょうか? お部屋では2秒~3秒なんです、試してみて下さい。(※間とは、畳・面積も関係して来ますが、今は、距離と御理解下さい) |
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何畳と何坪
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茶道では大きく分けて畳一枚の縦を6歩で歩く御流儀と4歩で歩く御流儀があります。 この畳の縦の長さが1間です。1尺は約30cmですから1間は1.81mとなります。 畳の大きさは縦に対し横は縦の二分の一と定まって居りますので、畳2枚をくっつけると「一間四方」と云う呼び方になりこれを一坪と定めています。 土地の売買の折に使われる坪数の単位はここから来ています。ですから、『150坪の土地に40坪の家を建てたよ』ってお話良く聞きますが言いかえれば『300畳の広さの土地に80畳の家を建てたよ』となります(笑) |
旅のお話
お話が横道にそれましたが、茶道のお話でしたね。お茶事の動作はゆったりとしていますので、室内を歩く時間も掛かっているように見えますが、普段、街中を歩く場合と余り大差は無いと思います。(一秒で約1.19m程度)そして、この早さで歩き続けますと一時間で約4.3km(京間)進みます。この距離を『一里』(一時間で行ける距離)と昔の人は決めて旅を致しました。
道の畔に道票があり「戸塚宿二里」などと書かれていましたら『あと一時(いっとき・二時間)程か、もう少し足を延ばして藤沢の宿まで行くか』などと一日の予定が立つというものであります。 『里』で話しをすると距離と所要時間を一度に伝える事が出来て、とても便利な単位なのですが・・・最近はとんと使われなくなりましたね。
ややこしいお話
ここでややこしいお話を1つ・・・「ややこしいのは苦手?」「ここで離脱しないでくださいね」
『里』は距離の単位ですが、お話で出て来ました『町』は距離の単位と共に面積の単位としても使われます。 面積としての時に使われる『町』は一町歩と言う言い方をします。そして、一町歩=3000坪です。畳で言うと6000畳です。 「あ~あ、ややこしい!!」
そして、このお話で良く出て来ました畳の寸法をちょっと。 京間・江戸間とお断りしてお話を進めさせて頂きました、これにはとても大きな江戸時代からの隠された問題が有ったのです。
京間 3尺1寸5分x6尺3寸 955mm x 1910mm
三六間 3尺x6尺 910mm x 1820mm
江戸間 2尺9寸x5尺8寸 880mm x 1760mm
こんなに開きが有るのです。
京間の一間で計算すると一里は約4.3kmと成ります。 江戸間で計算すると約3.8kmとなり三六間で約3.9kmと成ります。 この畳の寸法の差が里程にも表れて来て居ます。
では何故、江戸間は短いのか?
考えますに、江戸は17世紀世界で一番人口密度の高い都市でした、人口が密集しているので一軒一軒の面積を小さくし、多くの人が住めるようにしたのでしょう。 良く時代劇に出て来ます長屋造りなどは、江戸間の寸法でつくられていたのだと聞いております。
ちなみに、太閤検地の頃は、一間(検地竿)は6尺3寸だったのですが、江戸時代に6尺に統一と言うか、つまりは、年貢米(税)の実質5パーセントアップを図ったのです。この時は農民だけにしわ寄せが掛りました。
江戸-京都 旅の日程は?
では、江戸―京都などは何日くらい掛ったのでしょうか? 早飛脚は、上り坂があるので、時速10km強で走ったと思われます。 京都まで408kmは、宿場・宿場で次の飛脚に引き継ぎ、走って走って、約60時間程度で着いたとされています。 また、かの有名な「時は元禄十四年三月十四日、松の廊下での浅野内匠頭事件(忠臣蔵/赤穂浪士)」の早駕籠は、当日、3月14日夕方江戸を出立、19日早朝寅の刻に赤穂に到着したようです。 所要時間は80時間強 距離にして155里・約620km 時速は9km位でしょうか? 1時間に2里のペースで東海道・山陽道を駆け抜けた様です。 |
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急な要件ではなくノンビリ旅をした場合、朝7時頃出立、昼過ぎの3時過ぎには宿場で宿を探したと思われます。歩いた時間は8時間位でしょうか・・・昔は日が暮れてからの往来はよほどでないとしませんでした。提灯の明かり代も高いし、襲われることもあるし(笑)。
8時間 X 4km =32km 408km ÷ 32km = 約13日
ノンビリ2週間位でしょうか? 道端の草花を愛で、景色を楽しみ・名物を食べて多くの人と出会い、旅を楽しんだ事だろうと思います。
皆様も、道端に『里程』があれば「あと目的地まで何時間かな?」と楽しんでみて下さい。旅の面白みが一つ増えるかと思います。
文・絵:佐々木彬文(日本画家・裏千家茶道講師)/構成:高野慈子
佐々木彬文プロフィール
● 日本画家(彬文会主宰)
● 茶道講師(裏千家 佐々木宗秀)
● クラッシックギター演奏者
学校法人岩谷学園「ikiiki倶楽部」文人画教室のお知らせ
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今月の絵:『ねこ』
日向ぼっこですか?
飼い主の帰りを待っているのですか?
ちょっと気になるネコです。
娘の飼いねこも、娘の外出中は
ソワソワとしているくせに、
足音がすると「良い子に待って
いましたよ」とこんな風に
耳をそばだて、ひげを伸ばし、
玄関に座って、娘を出迎えて
いましたっけ・・・
(絵の紹介文:高野慈子)
※絵のご購入に関するお問合せは、ヨコハマNOW編集長 辰巳までご連絡ください。
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