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佐々木彬文の「四季・色・贅・食」 第22話 茶道の中の『お・も・て・な・し』の心

by staff on 2013/10/10, 木曜日

 とても素晴らしいジェスチャーと言葉で、「日本人の心の素敵さ」を世界に語りかけて下さった方が居られました。TVでご覧になった方も居られるでしょう?!

 今回は茶道での『おもてなし』のお話です。 茶道をなさっている方でも結構ご存じ無い方が多いのです。 文化の秋、芸術の秋、秋にはここかしこでお茶会が開かれ、お茶事におよばれに行かれる機会があるかとも思われます。

 とても良いタイミングですので、少々茶道の中の『おもてなし』の心を、簡単に、掻い摘んで、『へえ~』『なるほど!』『面白い』と思って頂けるように、お話させて頂きます。

 

最初の『へぇ~』

 先ず、茶室の基本は四畳半です。是は、お香のお話しの時に書かして頂きました。 足利家八代将軍義政殿が造られました銀閣寺の同仁斎が始まりとされています。

 最初の『へぇ~』は、その畳に纏わるお話です。畳には「意味」があります。五行(仁・義・礼・智・信)の意味が各畳に割り当てられているのです。

 畳には名前が付いていています。 床の間を背にした貴人様がお座りに成られます貴人畳。 お点前をする点前畳。 御客様が座られる客畳。 拝見の折に通う通い畳(茶碗をお出ししたり、御道具の拝見の折に使われる畳)。茶室に入る所に敷かれている踏込畳

 どんなに小さな茶室(二畳しか無くても)で有ろうとも、五つの畳を心の中で割り振り、読み解きます。 これを「茶室を読む」と心して頂いて良いと思います。

 この図を見てピンと来た方は「偉い!」。 「何が」と申しますと、貴人畳は床を背にしております、そして方位は北です・・・という事は、基本として、茶室は床を北に設けて造られているという事です。

 任侠映画などで「仁義」という言葉を耳にした事が有ると思いますが、本当の意味は御客様と亭主の関わりです。 各々が相手を敬うこと。その上で、亭主はお招きしたお客様に『尽くしきる心』が大事であり、お客様はその様な亭主の『心』を酌み取り、その気働きに感謝し、お互いを讃えあう・・・それがお茶の『心』の一つで有ろうかと思います。

 そして、この二人の心の動きを『仁』と『義』として現わして居ります。ですから、『仁義』はやくざ屋さんの専売特許では無く、客と亭主の相手に対する心構えなのです。

 『仁』とは尊敬できる人を意味し、その方に対し尽くしきる心を『義』として現わして居ります。ここで注意して頂きたいのは、遜り諂う(へりくだり へつらう)のでは無く、自然体でいて、そして、先様に心を送りますと、自然と頭が下がります。この事が大切なのです。 形ばかりペコペコするのではなく自然と感謝で頭が下がるものです。

 

次の『なるほど』

 次に、『智』ですが、床を背にした畳に座られる方は「止事無(やんごとな)き」御方です。畳の名前も貴人畳ですから、本来は天皇並びに準ずる高貴な方、御公家様、その道を極められた方等です。茶道のお稽古の場合は、先生が座られます。 私もその様にしていますが、総てが見渡せ配慮が行き届く場所です。『智』の意味がここに有るのではないでしょうか。

 そして、四神は玄武であり、季節は冬であり、方位は北です。この意味を読み解きますに・・・玄武であり冬とは、心厳しく自らを戒め、孤高の人であり智で無くてはならない・・・厳しく寒い場所です。 寒さに身も凍えろうとも存在せねばならない、全てを見渡し守り、導かなくてはならない場所です。

 そして、お稽古の時に皆さんが先生にご挨拶する畳が踏込畳です。丁度貴人畳に向かう様に配された畳で意味はその言葉通り『礼』なのです。判りやす~~~~い畳なのです。

 

そして『面白い』

 最後に『信』の通い畳ですが、この畳には深い意味があります。

 まず御道具の拝見や点てたお茶碗を出す畳であり、茶室に入った折、床の拝見・釜の拝見が済み自らの座に席入りする時に通る畳です。

 『信』の意味は、拝見に出された御道具類に『嘘・偽りが無い事』は申すべくも無く、利休様の時代は戦国時代であり、それ故、客・亭主双方の『信』を守る為に利休様はにじり口を考案なさいました。 それにより、刀は茶室に持ち込めなくなり、にじり口には質素な刀掛けが作られました。

 では「点てたお茶に細工は無いのか?」とのお尋ねですが、出されたお茶を飲む勇気が必要なこの時代、『信』の意味がここで生きて来ます。敵対関係の武士同士が茶室の中で二人きりで茶を嗜む、この様な時には、『信』の一文字しかないのです。亭主も招いた客に対し礼を尽くしきります。客も亭主に対し信の一時で会い対します。ただ単に、信じると言う事だけではなく、茶入れの蓋は象牙と決まって居ります。それは何故か?!古来より毒が入っていると象牙は割れるとの言い伝えからそのように成っています。 それだけで無く、亭主は客が茶を充分に楽しんで帰って頂けるように心を運ぶ物なのです。

 

茶道のおもてなしの心とは


日本画家 佐々木彬文画

 

 最後に、茶の一般的なおもてなしの注意点を!

 まず、茶は無心に点てなくては成らない。 良く見掛けるのが袱紗捌き(ふくささばき)を大仰に捌いてみたり、茶入れや棗(なつめ)を清める段に不用な動きを加え捏ね繰り回したりする方が居られます。 その様な方の心は『私はお茶を点てられるの。どう?』とか『お茶を知ってるの。偉いのよ!』とか心の声が聞こえて参ります。 その瞬間お茶では有りません。 それは、お茶を真似た芝居でしか有りません。 お茶は知ったから偉いのでは在りません。 お茶を頂く事は日常の事です。 出来て当たり前ぐらいに思って居て下さい。 ですから、お茶をカルチャーとしてとらえ自慢なさる方が居られますが恥ずかしい限りです。

 お茶は皆さん抹茶で無くても日々召し上がっていると思います、ですから生活なのです。 茶道とは『知』では無く『智』なのです。 知に日が射さなくては意味がないのです。 文化とは、お茶を無心に頂けて、その先にある書であったり・焼き物であったり、和歌・故事・事象・森羅万象全てに対しての造詣と日々の研鑚に対してです。 お茶だけは『出来て当たり前』と心して下さい。

 御亭主が茶会をなさる時には、御道具一つ一つに心を通わせ、取り合わせやお客様を思い準備いたします。 心が無くてはなりません。 ですから、お客様もその取り合わせを楽しまれ、その意を酌まれ、「拝見」※の折などの双方の言葉に命が通います。

 茶室では、とんでもない御道具が姿を現す事があります。 美術館で硝子越しに見て有難がる道具ではなく、実際に使われ御道具が喜び輝いている茶会はとても素晴らしい物です。 国宝と云えども茶室では、一つの御道具であります。 (印象に残った御道具の一つに、川崎大師での茶会に初代大西の釜が出て来て、御亭主のお話しでは、「蓋が古く成りましたので銅鏡を蓋に見たて釜に合せて削って使って居る」との事、素晴らしい出会いでした) それは、御亭主がお客様に楽しんで頂けますようにと取り合わせた御道具の数々であり、本来の役目を果たす物であります。

 お客様もそれを見抜き御亭主の心配りに感謝して茶会は終わります。 そこには、御亭主はもっと居て頂きたいとの名残りの心があり、お客様も後髪を引かれる思いで茶室を後にします。 こんな茶会は、本当に一日が素晴らしく心が高く天に届き、心洗われる思いが致します。 それだけに、取り合わせは大切であり、何でも良いのではないのです。 そこに御亭主のセンスが現れてしまい、読み解かれてしまいます。 皆様お気を付け下さい。

 私は良くお弟子さん達に『有心・無心・残心』と云う言葉をお話しさせて頂きます。 これは、お茶だけでは無く、日々の生活の中で心にして頂きたい言葉と思います。 何一つ扱うにも心して丁寧に大切に扱えば多くを必要としません。

 お茶人として最も恥ずべき事は『お客様の足袋の裏が汚れて帰す事』です。 これが、茶道でのおもてなしの心です。

 最後に、子供の頃、良くお客様が来られる時には、父母が朝早くから客間を掃除して清めて居りました。 そして、子供たちに必ず言う言葉が有りました。 『お客様が入られるまで客間に入ってはいけません』 その日の客間は、いつもと違い、少しひんやりとして空気がピンと張ったように感じられました。 客間の『気』をお客様が入られるまで乱してはいけない事を、小さな時から教えられていたのだと今になって判りました。

 さぁ、日本のおもてなしの心を皆さんも楽しんで読み解いてみて下さい。

 

※「拝見」茶道のお作法:茶室に飾られたお道具や掛け軸、お花、使われたお道具、飲み終えた茶碗などを鑑賞します。

頓首

文・絵:佐々木彬文(日本画家・裏千家茶道講師)/構成:高野慈子

 

佐々木彬文プロフィール

● 日本画家(彬文会主宰)
● 茶道講師(裏千家 佐々木宗秀)
● クラッシックギター演奏者

 

お知らせ

  • 10月12日 ワールドポーターズ6F ワイン大試飲会会場にて 佐々木画伯 小品展 開催
  • 10月27日 ベイクオーター自治会主催 『野立て』 裏千家 佐々木寒天庵宗秀彬文
  • 毎月第3日曜日 午後1時~5時迄 横浜技能文化会館 茶道教室(彬文会)(e-mailで申込)
  • 粋生倶楽部 文人画教室 お問合せ 岩谷学園
  • 日本画・裏千家茶道教室のご案内 月2回(6,000円) お問合/お申込み 045-641-6822


(岩谷学園 粋生倶楽部 文人画教室にて)

 

今月の1枚『ヒポ』


35x25  20,000円

カバ君です。
学名はHippopotamus amphibiusというそうです。長い名前です。英語名もHippopotamusヒポポタマスです。河馬と書かれるよりも「ヒポ」とか「ヒポポ」と呼ばれる方が好きかなぁとカバ君の声が聞こえてきます。
 
「実物よりも素敵に描いてもらえて嬉しいです。川の水も綺麗でしょう?!カメラ目線? いやぁ~モデルですからねぇ!」
 
最近、先生は動物の絵をシリーズに描いています。リクエストもできます。ほらほら、またカバ君の声が・・・
 
「ペットを描いてもらいたい? いいですよ!だけど、まずはボクをいかがですか?」
 
(紹介文:髙野慈子)

※絵のご購入に関するお問合せは、ヨコハマNOW編集長 辰巳までご連絡ください。
TEL 045-264-4939 FAX 045-264-4940 Email kabuki@waratte.jp

 

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ヨコハマNOW 動画

新横浜公園ランニングパークの紹介動画

 

ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
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