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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第9回)

by staff on 2013/12/10, 火曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第9回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 顧客サービスはICT(情報通信技術)との融合に成熟度を深めています。 “顧客の声に忠実なだけでは真の顧客サービスにならないこと” “過去の経験や成功体験だけでは顧客の心に響くものを生み出せないこと” がはっきりする一方、顧客の方も “欲するものを自らの口を通じて的確に説明できない” ことが多くなりました。それはインターネットの商用利用を模索し始めた1990年代前半のシリコンバレーを彷彿とさせます。インターネット技術者は市場が分らず、市場も技術のことが理解できない状況にありました。それを仲介したのが “アプリケーション・コンセプト(用途イメージ)” です。顧客は技術活用イメージが想像できないため、潜在ニーズを具体的に説明できません。明確でないニーズを踏まえた技術による用途イメージをアプリケーション・コンセプトの形で定義し、技術と市場の間でキャッチボールを行うことで今日のインターネットビジネスの基盤が形成されたといわれます。梁塵秘抄では “はかなき此の世を過ぐすとて、海山かせぐとせし程に、萬の佛に疎まれて、後生我が身をいかんせん” とあります。魚や獣の殺生を重ねる罪を思うと後生が案じられるが、それでも目標と真摯に向き合い、一歩一歩知的創造力を深めよということになるでしょうか。 “創造性の量と質はアプリケーション・コンセプトの発想数に制約される” と指摘したのはシーモア・パパートです。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

構想段階は思い切りあるべき姿を追い、楽観的に考えていく
計画段階は慎重かつ悲観的に 実行段階は自信を持ち大胆に
アニメをやるならアニメばかり観てはダメ どの世界も同じ
勝利 無限では打倒だが有限では苦悩、とシモーヌ・ベーユ

 一万年前の縄文時代に比べて、時間のスピードは四十倍を超えるといわれます。構想・計画・実行の学習サイクルを速める必要度が増しているようです。一方で、それに対応するにはブレーキの役割の重要性が一段と大きくなります。時間に追われてひた走るだけでなく、限界・制約を踏まえて生きることの大切さを示唆しているようです。それが独自の世界を創る機会につながる可能性があり、限界・制約を自由や創造の突破口にする手も考えられそうです。シモーヌ・ベーユは20世紀前半に活躍したフランスの女性哲学者・政治活動家です。戦争の悲惨さ・残酷さに抗議してハンストも行い、34歳でその生涯を閉じました。 “勝つということは無限に関していうならば打ち負かすことに他ならないが、有限に関していうならば苦しむことに帰着する” ことを痛感し、 “偉才とは暗い夜々を乗り切る力量に他ならない” と心に刻みつけたといわれます。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

働かされている感覚では 潜在能力が顕在化しようがない
能力を磨くプロセスが少ないことを実感 生き辛さがカベ
ローマ帝国崩壊の一因 中間層が減少して貧富の差が拡大
ロシア帝国も相似形 働く喜びを創意工夫、生き方は無限

 “世の中で変わらぬものは唯一つ<変化>のみ” という言葉があります。21世紀は変化の幅が極大化する時代といわれます。ポジションありきではなく、何より潜在能力を高め、ポジションはその後でついてくる時代になりました。理論から無理に現実を把握しようとせず、理論からこぼれ落ちる現実を重視することの大切さ。文字文化をもたないアポリジニは伝えるべき全てを絵に埋め込んで生き続けたといわれます。”生き方の方法論は無限”であることを教えてくれます。ローマ帝国は、多くの民族・人種・宗教を内包しつつ成長を続けましたが、時代性に対する適切な手を打てなくなったことが崩壊につながりました。 “成長への過度な執着と戦略的決断の欠如” 。トレードオフを受け入れて何かを捨てるという決断ができなかったということでしょうか。一部の富める者と多くの貧民に分かれるという貧困対策の失敗による混乱・弱体化。ロシア帝国や江戸幕府もすべて国家崩壊の遠因は貧困対策の失敗。現在でも幾つかの国にみられる兆候です。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

変革期は歴史から学べる好機 いつ誰が何を捨てたのか
真似だけは御法度、仕事が小さくなる 自分の道を行く
人と人・モノとモノの間の、インタフェースを強化する
スカトール 最高級の香水にはウンコの匂いを利用する

 資本主義はもともと不安定といわれます。 “大きな波はお化けと同じ” で、姿を変えながら繰り返し現れます。そこは平均値や多数決が常に正しいとは限らない世界。何を選ぶかより何を捨てるかが命運を決する世界。日本の有り様を貫徹することがグローバル化につながり、安易に総意や調和の誘惑にのらないことが肝要のようです。それには何よりセンス・オブ・ワンダー(神秘や不思議さに目を見張る感性)が大切だと強調したのは米国の環境生物学者レイチェル・カーソンです。異質な分野を読んだり学んだりすることが創造性に結びつき、時間的にも空間的にも想像を超える関係性をつくり出すということでしょうか。彼女の著書 “沈黙の春” は、世界の目を環境問題に向けさせるきっかけになりました。スカトールは “ピンとキリを押さえる” ことの重要さを示唆するもの。ピンとキリさえ押さえておけば、その中間のことはどうとでもなるということですかね。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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http://www.syplus.jp/ooura/

(第9回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

 

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