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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第10回)

by staff on 2014/1/10, 金曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第10回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 16世紀にはイタリアを中心に古代(ギリシア・ローマ)の学問・知識を復興しようとするルネサンスが起こりました。 “100年に一度” とよく言われますが、歴史から見える景色は16世紀以来の “500年に一度” というパラダイムシフト。当時は大きな価格革命が起こり、穀物は6-8倍、衣類も2-3倍に跳ね上がったとのこと。イタリアでは土地バブル、オランダでは有名なチューリップ・バブルも起こりました。歴史の教訓からいくと、20世紀は “秩序” を前提とした社会といわれますが、21世紀は “混沌” が定常化しそうな雲行きです。 “秩序” が前提の場合にはアルゴリズム志向(論理を重視した型通りの手順による仕事)が強みになりましたが、 “混沌” の世界ではヒューリスティクス志向(柔軟性や創意工夫が求められる仕事)が当たり前になりそうです。すべてを再定義し、独自のロジックを創り出すしかありません。16世紀に比べて情報量が1万倍といわれる21世紀型のルネサンス人材には、サーチング(検索・蓄積)よりセンシング(感度・感性)、モノのデザイン力より精神のデザイン力が必要になりそうです。梁塵秘抄では “我等は何して老いぬらん、思へばいとこそあわれなれ、今は西方極楽の弥陀の誓を念ずべし” とあります。生老病死は避けられないが、ただ阿弥陀如来に祈るのでなく、日常空間が重層的になり日々変貌していく覚悟をもてということでしょうか。 “いつも非日常” であるのが日常ということですかね。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

私の望むのは少数とともに闘うの意地である、との強い思いは思想家の内村鑑三
意地という言葉は近ごろ聞かない 数十年後の評価を大事にする風土と関連する
意地を張るだけの志・夢は少なくなったが 人間社会は、意地をなくしたら砂漠
自分の中の本能・野生・才能を目いっぱい開放していく 孤立をやたら怖れない

 内村鑑三は、クラーク博士が指導に当たった札幌農学校の二期生でした。そこでキリスト教徒になりましたが、枠に囚われず、生身の人間としての本質を非常に大切にしたようです。 “少数とともに闘うの意地” という言葉は、著書の “後世への最大遺物” にあるものです。最近は企業でリベラルアーツ研修が盛んですが、この本を参考書に使うケースもあると聞きます。キリスト教徒であると同時に、 “お金・事業・学問” の価値や重要性を説き、その上で、富もない・事業手腕もない・学問もない人間にとっても、銘々が持つ主義に則った生涯を送ることができれば、それが最大の遺物・価値創造であると説きました。 “僕を悩ますのは人々の各々の中にある虐殺されたモーツアルトだ” と書いたのは “星の王子さま” の著者サン・テグジュペリです。自分の中の本能・野生・才能を目いっぱい開放していくことこそ命。一日生きることは、一歩でも自力で前へ進むことでありたいですね。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

鬱は暗いイメージがあるが、うっそうと繁るパワー
明るさは滅びるが暗さは滅びない、と作家の太宰治
目立たないことをしっかりやる 太陽の輝きは不要
マニュアルは明るさ それに頼らず裏の暗さを深耕

 3.11のあと、思想家・評論家で、作家・吉本ばななのお父さんである吉本隆明は、新聞紙上で太宰治が書いた “右大臣実朝” にある “明るさは滅びの姿であろうか。人も家も、暗いうちはまだ滅亡せぬ” を引用して、暗闇の中でうめき声をあげている被災地及び日本全体を鼓舞しました。暗いうちはまだ大丈夫、明るくなってくる時こそ危ないというわけです。特に、上っ面の明るさや空元気だけでは、高度で複雑化したこの社会を生き抜くことは困難です。沈金・沈黒という言葉があるように、暗く深く沈むことは今こそ大切なのかもしれません。真黒というより赤または黄を含む黒色である “玄” 。玄は空間・時間を超越し、天地万象の根源となるものを意味するとのこと。人生の各年代(ライフ サイクル)である青春・朱夏・白秋・玄冬の玄でもあります。玄冬の玄は寂しく幽(かす)かなもの、幽かに明るい黒。多くの宗教や哲学が寒冷の時期に生まれるとの説からすれば、もう一段深いところへ進む第一歩にしたいものです。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

魚ではなく、魚の釣り方 お腹は膨れるが、食べるとそれまで
講義、教科書の単なる解説ではなく 脱線する裏表の話に妙味
どんな時に失敗、成功 教科書にない発想、裏ワザ、けもの道
多様な切り口の蓄積こそ人間の厚み 方法論や型を乗り越える

 目に見える身近な結果ばかりを求めがちですが、それは一回限りの満腹感。永続的な成果を得るためには、継続的に手にできる術を “習慣化” する必要がありそうです。教科書は基本動作の学習。現実への応用動作の修得には生産的な無駄や創造的な失敗が不可欠。最後には自然なものが残り、不自然なものは消えるということでしょうか。知識社会では、人間とコンピュータによる課題の発見・設定・解決・展開が肝。限られた人間世界だけで考えていると、だんだん狭い領域に煮詰まっていきかねません。それをブレイクするには、第三者やコンピュータが示唆する異質な視点や切り口を取り込む度量も求められそうです。けもの道とは、やみくもに森林内を行き来するのでなく生死のぎりぎりを生き抜く独自の生命線。そこを利用してけものに種子を付着させたり、果実を食べさせて種子を運ばせる植物の戦略的したたかさ。表面の写実だけがすべてではないこの世界。 “写実に対する暗示” の深淵を指摘したのは岡倉天心です。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第10回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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