ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第12回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第12回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
破竹の勢いのナポレオン軍60万によるロシア遠征は、ロシア軍によるモスクワ焦土作戦や冬の到来などもあり、飢餓・疾病・厳寒に直面して退却を余儀なくされました。崖っぷちの劣勢を凌いだロシアのクトゥーゾフ将軍は “戦いにおいて最も重要なことは最後の勝負に勝つことだ” と言い放ったとか。そういえば、伝説の西鉄ライオンズを率いた三原脩監督も、6回裏まで劣勢の試合での周囲の罵声に対して “野球は6回まででなく9回までの得点で争うゲーム” と選手を鼓舞して最後まで勝負をあきらめず、7回以降に逆転することがしばしばあったといいます。 “オマハの賢人” と崇められる米国の著名投資家ウォーレン・バフェットは長期投資を基本スタイルとし、 “私が一番投資したい先は<永遠>” と短期決戦ではなく長期・超長期での最終章の決着を大切にしているとのこと。梁塵秘抄では “萬劫年経る亀山の、下は泉の深ければ、苔生す岩屋に松生ひて、梢に鶴こそ遊ぶなれ” とあります。長寿のシンボルである枯れぬ泉・苔むす岩・青々たる松。人間は遊び・仕事・学びに時を費やす生き物。であれば面白おかしく少しずつシンプルにしていけということでしょうか。ただ、安定はあくまでも幻想。生きる環境は刻々と変わります。その変化こそ脅威ではなく機会。99%を捨てて1%に集中する “最後の勝負の舞台” をどこに置くかは、誰にとっても大仕事といえそうです。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
困難は次から次へとやってくる 重くとらえない、できるだけ簡素に受け止める
めざす位置から知の肩車に乗り今を振り返る 除去すべき悪さや障害がはっきり
感覚を言葉と論理でサポート 三石-しんぼう石・観察石・長寿石、と徳川家康
徳川家康のリーダーシップは、絶望の中での包容力にあるといわれます。困難も、めざす位置から肩車に乗って冷静に観察すれば違う景色が見えてきます。久能山の菩提寺に家康が自省のために置いたのが三つの石。徹底した観察と寛容、感得と熟考の重要性を教えてくれます。 “不自由を常と思えば不足なし。勝つことばかり知りて負くること知らざれば、害その身にいたる” ということでしょうか。日本画を代表する画家の一人で、日本の四季と生活する人間の姿を描くことに突出した川合玉堂も “画風、一日にしてならず” と日々苦悶し続けたといわれます。真のプロフェッショナルとは、技を超えて宇宙観・人間観・仕事観などの見識を辛抱強く磨き続ける人間ということですかね。天下を手中にして恐れることが何もなかったはずの太閤秀吉も “長谷川等伯の絵にはほっと一息つける空間がある” と漏らしたといいます。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
DVD ビデオデッキが前提であれば、もっと速く巻き戻しできればベターとなる
その延長線上に、自動車・DVDは存在しない 絶対という視点を極力相対化する
顧客には未来を想像する助けを求めない・期待しない 果報は練って待つしかない
社会・市場が激変し、顧客は自分が何を欲しいのかさえ的確に語れなくなっています。顧客に頼っていけないことは昔も今も同じようで、自らの手と足と頭でウォンツを掘り起こしていくしかなさそうです。自動車の育ての親といわれるヘンリー・フォードは、T型フォードを世界で累計1,500万台以上も生産し、社会と産業・交通に革命をもたらしました。安価な製品を大量生産しつつ、労働者の高賃金を維持する “フォーディズム” の創造者でもあります。他の企業の倍近い賃金を奮発、周囲の疑問に “回り回って社員が顧客として参加してくる” と語ったといいます。消費者優先主義が平和・繁栄の鍵だという動かぬ信念。 “お金を出させるのでなく出したくなる” 戦略。発想やアイデアをメモにして抽斗(ひきだし)に入れる習慣は知識ベースの源泉。ただ、一番のお値打ちは、その心掛けと行動が自然と脳の抽斗に収まるという点にあるのかもしれませんね。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
勝負 自分でしか出せない知恵、自分の答えを持つ 脳から絞り出す覚悟
独自性を持たない世界一はない 望むは栄光へ到達するための無限の努力
イランの天然真珠産業 御木本幸吉の人工真珠で壊滅し、石油へ舵をきる
模範解答を探すだけでは問題解決につながらず、かえって致命傷になりかねない時代になりました。イランはもともと天然真珠大国、最初から石油で食べていたわけではありません。御木本幸吉は明治維新の渦中で読み書きソロバンを身につけて飛躍の土台を固めました。海産物が有力な貿易商品になることを見抜き、アワビ・伊勢海老などと併せて天然真珠を扱います。世界の装飾品市場は高額な天然真珠に殺到してアコヤ貝は乱獲から絶滅の危機に直面。事態打開のため “アコヤ貝の養殖” に着手、更に発想を180度転換して “真珠の養殖” を最終ゴールと定めて成功しました。イノベーションを生み出すには時代や環境がイノベーティブであることが大前提。 “日本人だけ・男や女だけ・会社の人間だけ” で固まる世界では得られない世界を学ぶ機会と挑戦。 “肖像画を描く時は完璧に似せてはいけない。似せると命を損なう” といわれるところがミソですかね。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(八)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第12回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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