ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第20回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第20回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
京セラを創業した稲盛和夫さんは “何か事を起こす時はまず思い込まなければならない。そのためには自分の仕事を好きになることだ” と語っています。心からその実現を信じることが、困難な状況を打開するとの信念が “稲盛経営12カ条” から伝わります。12カ条の中でも “強烈な願望を心に抱く” “値決めは経営” “常に創造的な仕事をする” が強く印象に残ります。一つのことを長い間続けることで平凡は非凡に化けるが、それを続けるには辛抱が欠かせないこと。最後の瞽女(ごぜ)といわれた小林ハルさんは “いい人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修業” と肝に銘じ、想像を絶する苦難を見事な知恵で乗り切ったといいます。この世もイノベーションも、突き詰めれば “修業” と “祭り” の抱き合わせ。世界的建築家コルビジェも若い頃は企画提案で連戦連敗が続きましたが、 “夢” があり “夢中” だったから、何度うまくいかなくても挑戦できたとのこと。繰り返し考え続けることが “知” の蓄積になるとの確信があったからですかね。梁塵秘抄では “仏は常にいませども、現(うつつ)ならぬぞあわれなる、人の音せぬ暁にほのかに夢に見え給ふ” とあります。仏は阿弥陀如来、西方浄土への憧れ。現実から離れて遥かな未来へ憧れるのはどの時代の人間も変わりません。今日よりは明日、明日より明後日と、 “伝統と革新の両方を背負う重圧” を遊び楽しむしかなさそうですね。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
自分の時間を偽りなく正直に生きているか
侍・武士の魂 米国流ではマーヴェリック
お金を持ちつつ貧しく生きたい、とピカソ
“大金を持ったうえで貧しく生きたい” とはいかにもピカソ。生涯に油絵・素描をはじめ版画・彫刻・陶器に至るまで数万点の創作をものにし、巨万の富を手にしました。しかし、創作活動の原点はパリの洗濯船というぼろアパート。富を得ても極貧の中での修業の充実感と手応えが忘れられなかったのかもしれません。ピカソは作風がめまぐるしく変化したことでも有名。 “青の時代” “ばら色の時代” “アフリカ彫刻の時代” 、更に “キュビスムの時代” “新古典主義の時代”&bnbsp;“シュルレアリスムの時代” へと展開しました。以前、NYメトロポリタン美術館で一日中、ピカソとレンブラント・フェルメールがある部屋を行ったり来たりしたことを思い出します。 “何でも吸収・何でもトライ・いつでも前向き・安住を拒み先端・創造には変化のみ” と挑戦し続けたマイルス・デイビスの音色と共鳴するものがありますね。 “稽古は強かれ” とは世阿弥のつぶやき。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
空中ブランコの1メートル下に安全ネットがある開発環境の緩み
いいモノを創る 日々鍛錬しながら裸になる 満足感は脇に置く
遠慮なんかせずにくたばるまで何でもやれ、とロマン・ローラン
“悪い戦術は良い戦略があれば救えるが、悪い戦略は良い戦術では救えない” と喝破したのは戦争論を書いたクラウゼヴィッツ。MOT(技術経営)の本質は、技術が戦略を生むだけでなく、戦略が技術を生むことでもあります。ロマン・ローランはフランスの理想主義的ヒューマニズムを代表する作家。戦争反対を世界に叫び続け、多くの支持者を得ました。ノーベル文学賞を受賞した “ジャン・クリストフ” はベートーベンをモデルにした長編小説。ベートーベンは “シンプルさ - 単純な音の組合せによる深遠なる表現” が本質との見立て。学生時代に夏休みの大半をこの本と格闘したことを懐かしく思い出します。 “世間の鐘の音色は学問の音色とは多分に異なる” という言葉が今でも記憶に鮮明です。 “ジャズではミスが素晴らしい効果を生むこともある。直感が大事であり、心に感ずるままに従え” とのクリント・イーストウッドの言葉がピッタリ合いますね。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
未来へ向けて鼓舞しながら生きること 一通りできてやっと下手
善意や道徳観に頼る仕組みは限界 いい人生だったと思えば勝ち
自分がどこへゆくのかわからない時が一番向上する、とニーチェ
グローバリズムの主要要素は “民主主義・市場主義・科学技術・リベラルアーツ“ だといわれます。そのど真ん中で面白おかしく生きること。善意や道徳だけを振り回さず、ひたすら夢中になれる者が勝つ世界。創造性の量と質は用途イメージの発想数に比例する空間。ドイツの哲学者ニーチェは “デカダンス” “ルサンチマン” “超人” “永劫回帰” などの独自概念を生み出しました。絵でいうと “形而上絵画” 。現に生きている人間自身の探求、自己と社会・世界との関係について考察、人間は理性的生物でなく恨みという負の感情(ルサンチマン)によって突き動かされていること、そのルサンチマンこそが苦悩の原因であり、それを超越した人間が強者であるとしました。 “人間の文化・思想・論理などはマングローブの根のようにぐにゃぐにゃつながっている。また、3000年前と今も、やはりマングローブのように強くからみあっている” と洞察したのは小田実です。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(九)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第20回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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