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第15回 子どもの遊びから思った、日常と異常

by staff on 2015/1/10, 土曜日

 

皆さん、あけましておめでとうございます。
今年も、オヤジ、オバチャン、オトメのO3マインドを持つ40代女性として、好き勝手?なコラムを記していきたいと思います。どうぞ、お付き合いくださいますよう、よろしくお願いいたします。

TV番組で久々に心が熱くなった

昨年暮れにNHKの「にっぽん紀行」という番組で、「少年達の“コマ広場” ~福岡県大宰府」と題された番組が放映された。年に一回大宰府天満宮で”けんかゴマ“の大会が行われており、その大会に向けて、子ども達が近所の公園で必至に練習し、成長していく様を取材した番組だ。ご覧になった方もおありだろうと思う。
私はこの番組の中の子どもらしい子どもの姿を見て、感動というか、安らぎというか、懐かしさというか、言葉では上手く言い表せられないような胸が熱くなる思いがした。
今回は、この番組のご紹介と、熱くなった後に冷静に思う異常さ?について、お話してみたいと思う。

ひそかなブーム “けんかゴマ”

天満宮で有名な福岡県太宰府市。ここでこの10年の間、小学生の男の子を中心に、けんかゴマが盛んに行われてきている。

けんかゴマのルールはいたって簡単だ。相手のコマより長く回した方が勝ち。しかし、戦いは簡単ではない。自分のコマを相手のコマに正確にぶつけ攻撃をしたり、回っているコマを縄でシバきながら、回転を強化したりしながら戦っていく。攻撃にも防御にも技術が必要だ。またコマの調整も欠かせない。自らの攻撃や防御に合わせ、鉄製の芯の長さをハンマーを使って調整する。小さな手に持つ大きなハンマーは、一見あぶなっかしそう映るが、子ども達は手慣れたもんだ。ハンマーは見事に芯の頭を捉える。調整する様はまるで職人のようだ。

このようなけんかゴマの奥の深さが、子ども達の心をとらえたのだろう。年に一回、大宰府天満宮で開かれる大会に向け、公園には毎日大勢の子ども達が練習に集まって来る。中にはまだ小学校に上がらない小さな子どももいる。コマの上手な大きな子に憧れて集まって来るのだ。まだ片手ではコマが持てないような小さな子にも、自然と大きな子が、手取り足取り教えていた。

厳しい実力の世界

コマの世界は厳しい、強い者が尊敬を集め、自然と発言権も増していく。TVでは取材対象の中心となっていた6年生の男の子がいる。家ではスマホゲームに夢中になる今どきの普通の男の子だ。しかし彼は誰よりも早く公園に行き、誰よりも遅くまで練習をする。はじめからそうだったわけではない。同じ公園で練習する4年生の男の子に、勝負で負けてからだ。4年生の男の子は強い。コマを力強く相手に当てるなげゴマの技も正確に決まる。この攻撃をくらうと、皆のコマはいとも簡単に止まってしまう。自然とリーダー的存在となり、公園での練習試合の順番を決める際にも、6年生よりも発言権があったりする。6年生の男の子は、自分の意見より4年生の男の子の意見が通る事態に、毎日直面する。
上級生というプライドが、彼の心に火をつけた。強くなるしかない。それしか方法が無いと彼は自ら答えを出し、誰よりも練習する事を決め、いつしか実行に移すようになっていたのだ。

そして、大会当日、6年生の子も4年生の子も予選を勝ち抜き、二人が対戦する事となる。
3本勝負で2勝した方が勝ちだ。
1戦目、6年生が雨の日も遅くまで練習してきたなげゴマをしかける。回っている相手のコマに縄をまいた最初の一投目を直接当てる大技だ。当たれば絶大な効果を発揮するが、はずすと自分のコマも大きくはね、ダメージをくらう。結果は失敗。相手のコマには当たらず、逆に自分のコマが止まってしまった。
2戦目は、回っているコマを手のひらに取り、相手のコマめがけて上から落とした。これはうまくいき勝利した。
3戦目、相手からの攻撃を受けた後、コマをシバいて粘れず敗退。結果1勝2敗で今回も4年生の男の子に敗れた。その直後のインタビューで、彼は言葉少なに試合を振り返り、反省を述べ、「もう、ええやろ」と言い捨てるようにカメラから離れていった。その顔は、悔しさと涙をぐっと押し殺しこらえる男の顔だった。

大会を終わって

大会後当日、公園にはまたいつもの子ども達の練習風景があった。そこには、あの4年生に負けた6年生の姿もあった。顔はきりりとしまっている。彼の気持ちを察してだろう、他の子達も皆、負けた事を口にはしない。いつもと変わりなく黙々と練習する6年生の姿は、むしろかっこよくさえあった。今日の勝負には負けはしたが、彼は今も戦い続け、自分には決して負けていない。きっと、その場にいた子ども達にも、そう映ったのではないだろうか。

番組ラストのインタビュー。あの6年生は、とつとつと、でも力強く語った。「オレはコマがやりたいから、負けたから大会で…。腕を磨く!」
大きな大会で皆の前で負けた姿をさらす結果になっても、それをつくろう事なく、弁解もせず、ただひたすらに、次に向けて練習する6年生の姿。そして、それを見守る周りの下級生達。
決して広くはない公園に集うたくさんの子ども達を映したラストの風景には、目には見えない、子ども達の間の様々な気持ちが映し出されていたように感じ、なぜか、目頭がじ~んと熱くなって仕方がなかった。

たかがコマ、されどコマ

この公園には、小さな休憩所のような施設も併設されていて、近所の大人達も度々練習を見にやって来る。いつも来ている近所のおばさんは、この公園に集う子ども達が、コマを通じて子ども達同士でもまれながら、驚くほど成長していく事を誇らしげに語っていた。

このけんかゴマには仕掛け人がいる。長年に渡り、昔の遊びを継承しようと活動を続けている藤田弘毅さんだ。工作教室や読み聞かせなど、30種類以上の遊びを試みてきたが、どれも続かなかった。しかし、このけんかゴマだけは違った。
これまで話してきたように、このコマには様々な要素があり奥が深い。技の難しさ、道具の調整技術に加え、厳しい勝負の世界がそこにはある。そしてそれに付随し、大きい子から小さい子への伝承、弱い子から強い子に対する憧れ、努力した者への敬意、狭い公園内で大勢の子どもが遊ぶためのルールや協調、それを統制するリーダーシップ。どれも最初からできるものではなく、たくさんの子ども達同士でもまれ、磨かれて輝きを放っていく。
人間が大人になっていく上で、こういう事が、子どもの段階で必須なのだなと、改めて気づかされた思いがした。

当たり前を失った異常な世界

とここまで、胸と目頭を熱くした、感動のドキュメンタリー番組のあらましを語ってきた。
久しぶりにいいものを観たと思ったのも事実だし、感動したのも事実だ。

しかし、冷静に思いなおしてみると、一昔前では当たり前すぎる、単に子どもが公園でコマをしている風景ではないか。少なくとも私の子どもの頃には、大会こそなかったが、コマをはじめ、ヨーヨーやゲイラカイト(タコ)など、子ども同士で競い合い継承し合う遊びは多々あった。

それを思うと、今のある種、異常さとも言える状況に改めて気づく。
まず、子ども達が大勢集まれる場所が極めて少ない。スペース的にも、防犯的にも、それを困難にしている。

余談だが、横浜の山下町駅近くに、鍵のかかった公園がある。「ご利用になられる場合は、どこどこへご連絡ください」という看板が入口にくくりつけられている。防犯上の問題なのか詳細はわからないが、何か過去に問題があり、そうなったのだろう。しかし、管理事務所に連絡して鍵を開けてもらって公園を利用するとは、もはや公園の意を失っている。公園の断末魔ともいうべき姿だ。こんな公園が存在する事自体、私に言わせれば異常な状況だ。

話をもとに戻す。
加えて、子どもの持つ時間的にも、子ども達が放課後に大勢集まれる環境を阻害している。
塾や習い事、今の子どもは忙しいし疲れている。たまに開いた時間ぐらい好きなスマホゲームやらせてよ、という気持ちになるのもわからないではない。

コマの話でも触れた通り、大宰府市の例では、大きな子に憧れ、小学校に上がる前の幼少期から、公園の仲間入りをしている。公園には世代を超え、様々な年齢の大きな子ども達がたくさんいて、各々コミュニケーションを取ってくる。小さな頃から、世代の違う大勢の子ども達がいる環境に慣れ親しむ事ができる。
加えて、このコマの世界には、どこかのスポーツチームの様に、大人のリーダーはいない。子ども達だけの世界だ。全て子ども達同士で調整し決めていく世界。大人のリーダーに導かれる世界とは、また異なる世界だ。

この様な環境は、昔は日常的に存在しながらも、現代社会には殆どなくなってしまった環境と言えるのではないだろうか。

昔は日常だった当たり前の風景が、今では特別な事としてNHKのTV番組になる時代。
この先20~30年後は、どんな日常が、スペシャル番組として取り上げられているのだろうか。
「ここ●●市では、放課後1時間、外に出よう運動をして、大きな成果を上げています」
そんな番組が作られるのも、遠い話ではないのかもしれない。
少し寒くなってきた。

人といる事にストレスを感じず、豊なコミュニケーションが行え、悔しさと敬意と努力と自らの決断力を磨く環境。それは子ども同士の遊びの中にこそあった。
そういう環境を子どもから奪ったのは、子どもではない。大人だ。
吸収力の高い生育期に、よりたくさんの子ども同士で遊べる環境をいかに提供できるか、これからの大人の課題であるような気がする。これからのより豊かな最終形(=大人)形成のために。

今月の1枚


(クリックで拡大画像)

 

<コメント>
ヨコハマには素敵なお店がたくさんありますよね。
お正月ですから、大人の雰囲気のお気に入りのお店で、今年初めの一枚を撮ってみてはいかがでしょう。ポイントはカメラのアングルを低めにする事。大抵それなりに撮れますよー。

プロフィール

ペンネーム: 津木 雫(つぎ しずく)
オヤジ・オバチャン・オトメのO3マインドを持つ、なんちゃってコラムニスト。
約20年間メーカー勤務。広報・マーケティングを経て、現在フリーランス。
典型的な仕事人間という生活を過ごし、はたと気がつけば人生の折り返し地点。「さぁどうする!」と我が道を振り返っている真最中。
学生時代に、約15カ国を貧乏旅行。
その経験から、今の若者が育つ環境には、問題を自らの力で乗り越える体験が不足していると、感じている。若者教育関連のNPOを立ち上げ、神奈川を中心に現在活動展開中。

 

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