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<2015年新春特別企画> 横浜らしい「豊かさ」とは・・・
『33年後のなんとなく、クリスタル』を出版された田中康夫さん

by staff on 2015/1/10, 土曜日

田中康夫氏
田中康夫氏

 

1981年1月に出版された田中康夫著『なんとなく、クリスタル』は、あっという間にミリオンセラーになりました。当時の若者の生き様が斬新に描かれていたこと、ファッションやレストランなどたくさんのブランドが【註】で解説されていたことなどが話題になりました。

田中さんとは、当時の駿台高等予備校・一橋大学を通じて同期でしたが、秋田から出てきて、吉祥寺などで遊んでいた私には、青山・六本木などの有名店は遠い存在で、小説を拝読して「なんでこんなに色々なことを知っているのだろう。」という感想を持ったことを覚えています。

長野県知事や国会議員、政党党首などを歴任された、田中さんのご活躍については皆様、ご存知のところだと思います。

その田中さんが、2014年11月末に『33年後のなんとなく、クリスタル』を上梓されました。

東京都出身で長野県育ちの田中さんですが、実は横浜とは「浅からぬ縁」をお持ちの方です。2015年新春特別企画として田中さんの考える横浜らしい「豊かさ」について伺いました。

『33年後のなんとなく、クリスタル』(通称 いまクリ)は、『なんとなく、クリスタル』(通称 もとクリ)に登場していた女性たちが登場して、自分たちが抱える様々な問題、恋愛、育児、介護、ボランティアから政治まで語り合っていましたね。

「○」か「×」かをつけたいのが男性の二元論的思考だとすると、女性はもっと皮膚感覚で物事を考えるのです。自分にとって安心できるのかどうか心地いいのかどうかで判断するのです。

「いまクリ」の中では、女子会でパスタを食べながら、グルメやファッションだけでなく、少子高齢化社会や行政の姿勢から日本の行く末まで語り合っていますがこれからの日本には、このようなゆったりとした幅の広さやしなやかさが大切なのではないでしょうか。

「こぶし」を挙げて「日本をかえよう」としている男性たちに、数字だけでは測れない「豊かさ」を求めている「普通の女性たち」の声にもっと耳を傾けて欲しいという想いがあります。

 

33年後のなんとなく、クリスタル
(クリックで拡大画像)

33年経って「もとクリ」の巻末に掲載されていた人口推移データが注目されていますが、その頃から少子高齢化社会になることを危惧されていたそうですね。

田中康夫氏
33年前の田中康夫氏

 

「なんとなく、クリスタル」を執筆した1980年のは、一人の女性が一生に産む子供の平均数を表す合計特殊出生率は1.75でした。このときからすでに少子高齢化社会への道は始まっていたのです。量を追い求めることが破たんすることをずっと危惧していたのですが、「もとクリ」はファッション小説のイメージが強くて、この註のことはあまり注目されませんでしたね。
「いまクリ」の巻末にも掲載しましたが、2013年の合計特殊出生率は、1.41になっています。それにも関わらず昨年の閣議決定では、50年後にも1億人程度の人口を保持していける・・とまだ量を維持することに躍起になっている方々がいるのです。
もうそんな時代は終わっているのに、質の充実を考えていかなければならないのにという想いを強く持っています。

「いまクリ」の中で、主人公の由利が語る「微力だけど無力じゃない」というフレーズが何回かでてきます。由利は南アフリカでボランティア活動を行おうしています。田中さんは阪神・淡路大震災のときのボランティア活動でご活躍されたことも広く知られていますが、「ボランティア」ということをどのよう
に考えていらっしゃいますか。

ボランティアは「できる人ができるときに、できることをできる限り行う」ことだと考えています。ボランティアを通して「社会との接点」を作ることができます。お金を出すことでも体を動かすことでも、そして知恵を出すことでも何でもいいんです。ボランティアは、相手の立場に立って考えられないとできません。その意味ではビジネスにも通じるものだと思います。

「いまクリ」の最後に由利が「黄昏時って案外好きよ」と語る場面が印象的です。「黄昏」は日が沈んでいく風景ですが、これはまさにこれからの日本の行方を象徴している言葉ではないかと思います。「黄昏」でもいいんだよ。と田中さんは示唆しているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

「黄昏」という言葉は、元来、日が沈んでいくので「誰そ彼(たそかれ)」時というくらい暗くなっていく様を表しているものです。世界に類を見ない少子高齢化社会になっている日本で、「黄昏」だからこそ見えるモノがある。実は夕暮れの赤みは、夜明け前の空にも似ている。大昔は日没も日出も同じ「彼は誰(かわたれ)」時と呼んでいたのですから。今こそ世界に先駆けていろいろなことができるチャンスだと捉えていくべきだと思うのです。
例えば、「ものづくり」にしても経験がある方々だからできることがあるはずなのです。数字だけでは表せない「豊かさ」を享受していきたいですね。

田中さんは、「横浜」とは浅からぬご縁があるそうですね。

港が見える丘公園などは、私のデートコースの定番でした。33年前の元町には「ハマトラ」で一世を風靡していました。お気に入りのブランドがいくつかありました。

「横浜」で働いていたこともあるのです。
大学卒業後入社した石油会社のガソリンスタンドの実施研修は、元町に隣接するガソリンスタンドでした。毎日、菜っ葉服を着て給油、洗車にワックスがけ、オイル交換などをやっていました。「もとクリ」が発表されてあっという間に話題になったので、実地研修が終わった5月には石油会社を退社したのですが、その分、より深い思い出がありますね。

「横浜」ってどのような場所だと思いますか。

「横浜」と「東京」の違いは、一言でいうと「愛」があるかないかだと思います。「横浜」には、横浜で生まれ育った方だけでなく、「横浜都民」と言われる田園都市線沿線に住んでいる方にも、「横浜愛」があるのです。
「横浜」に住んでいることに心地よさを感じて、ここでコミュニティを作っていきたいと考えている大勢の市民がいます。

行政的にも「横浜」は恵まれています。
私は長野県知事も経験しましたが、県と市町村が協力しないと実行できない教育や福祉の施策が多いのです。でも横浜市は政令指定都市ですから、教育や福祉について強大な権限があります。「横浜愛」に溢れている市民が願っていることを実現することができるはずです。

「黄昏」を迎える日本で、「横浜市」が様々な施策を実践すれば、お手本として、日本全国に広がっていくと思います。壮大な社会実験の場ですね。

「横浜」は待機児童をゼロにしたということで有名ですが、保育所を作るというハードの政策だけでなく、もっと地域の力を活用するというソフトな政策も検討してほしいですね。
私が知事時代に長野県内350か所に作った「宅幼老所」は地域共生型サービスとして注目されています。お年寄りのデイサービスと就学前の乳幼児の保育を、一つ屋根の下で行うのが宅幼老所。しかも、商店街の空いた店舗や住宅地の空き家を改修して行う、地域分散型であって世代分断型ではない温もりのある福祉のあり方です。

小規模で家庭的な雰囲気の中、高齢者、障害者や子どもに対して、一人一人の生活のリズムに合わせてサービスを提供する「宅幼老所」の仕組みは、「横浜」でも是非実現させていただきたいですね。
「宅幼老所は、ハード政策の10%程度の費用で実現可能です。「地域の拠り所」を創り出すこの仕組みで、老若男女がそれぞれの「黄昏時」を楽しむことができると思うのです。

横浜らしい「豊かさ」とは何でしょうか。

「横浜」は、日本一の人口を誇る政令指定都市です。人が多いからこそ、世代や地域で分断されるコミュニティではなく、地域や世代が交じり合った生活スタイルを確立することができるのです。

「横浜人」たちには、数字で測る「豊かさ」ではなく、質の充実を求める「生活」を目指してほしいですね。イタリアやスペインの国民のように、食事をゆっくりとりながら、恋愛から政治や経済まで幅広い議論を楽しむそんな生活を送ってほしいです。評判のファッションやグルメに興じながら政治経済を語るなんて、横浜女子の為せる技ですね。
東京から30分で、晴れた日には海を見ながらピクニック・・なんて横浜でないとできませんよ・・。

<取材後記>
33年前、田中さんは、ミーハーの元祖のように思われていました。
そのときから少子高齢化社会を心配していたなんて・・・。
日本の行く末を憂いているからこそ、「33年後のなんなく、クリスタル」を書かれたのです。未曾有の少子高齢化社会に突入している今、どのような心持ちで生きていけばいいのか、私たちにエールを送ってくれています。

文:渡邊桃伯子

『33年後のなんとなく、クリスタル』書評等はこちらで御覧になれます。
http://www.nippon-dream.com/?page_id=13200
http://www.nippon-dream.com/?page_id=13031

たなかやすお 1956年(昭和31年)、東京都生まれ。東京オリンピック開催の1964年から高校卒業の1975年まで、信州で過ごす。1980年、「なんとなく、クリスタル」で「文藝賞」受賞。1981年、一橋大学法学部卒業。1995年、阪神・淡路大震災後、ヴォランティア活動に従事。2000年~2006年、信州・長野県知事。2007年~2012年、参議院議員、衆議院議員。小説「ブリリアントな午後」「オン・ハッピネス」「昔みたい」「サースティ」等。評論「ファディッシュ考現学」「たまらなく、アーベイン」「神戸震災日記」「憂国呆談」等。

 

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