ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第26回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第26回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
“Data is the New Oil” が真実味を増してきました。今後は、データ蓄積からデータ活用への重心移動が明白になりそうです。米GEもインダストリアル・インターネットによるイノベーションに大きく舵を切っており、“環境を始め社会のさまざまな問題に対して、それを技術によって解決できれば、その技術は利益を生む” とCEOのイメルト。イノベーションは、21世紀では特別な事業活動というよりは日常的で継続的な活動。イノベーションを戦略&業務プロセスに織り込んでいく必要があるといわれる所以であり、フィードバックと概念化・抽象化を重ねながら様々な分野への波及効果を生み出すもの。“学校は大嫌いだけど勉強は大好き” と語った博物学者・南方熊楠の知的好奇心こそ大切なのかもしれません。それには、うまくいくのか・いかないのか見当がつかないテーマに挑戦するしかなく “完成形” はなさそうです。イノベーション・カンパニーの要件は “組織IQを高めて知を拡大する” “今までと異なる視点から新たな発見につなげる” “過去を遮断する覚悟を持つ” の3つ。梁塵秘抄では“釈迦の月は隠れにき、慈氏の朝日は未だ遥かなり その程 長夜の闇きをば、法華経のみこそ照らい給え “とあります。慈氏とは弥勒菩薩のことで五十六億年後に下生する未来仏。“灰色は黒と白を単に混ぜたものではなく、その他さまざまな色を含む豊かな色” と画家・コロー。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
完璧にやろうという気持ちを捨てる 策を弄さない
名人 うまい・ヘタではなく、志が高いか・低いか
芸は教えると腕が落ちるから注意、と六代目菊五郎
六代目菊五郎は、立役も女形もこなす一方で “京鹿子娘道成寺” の白拍子花子などの舞踊も得意としたとのこと。身体が比較的大柄だったハンディは、通常より大きな大道具を舞台上に組むことで克服。目標は菊五郎家伝来の当たり役にはこだわらず、あくまで新境地を切り開いた諸先輩から学ぶこと。まさに “今までの定石がすべてだと信じない。信じるとアイデアが出てこない” と語る羽生善治名人の心意気と柔軟性に通じるものがあります。大抵のことはネットで調べれば簡単に正解が手に入る時代。しかし本物には志の高さが含まれるもの。安易に近道を手にするのでなく、あえて遠回りする意志が何より必要ということでしょうか。世界が従来の “閾” を越えて次の新たな秩序を模索する “カオス” の領域に入り、これまでのスゴイがダサイに変わり、ダサイが逆にスゴイに変わる時代。“馴染み客には同じ料理を二度と出さない” と吉兆の創業者・湯木貞一。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
顧客に負けないよう顧客の中へ飛び込む 環境を変えつつ発想を変える
転がるのに備えて転がる練習 売上げの伸びより利益の伸びを高くする
デザインこそ材料の命 生活をデザインで観る癖を、と漆聖・松田権六
近代美術館工芸館は、東京国立近代美術館(北の丸公園)の分館として美術の中でも工芸・デザインの作品を展示しています。建物は旧近衛師団司令部庁舎を活用したもので、戦後のものを中心に約3000点の作品が収蔵され国宝・重要文化財の宝庫。その中心の一人が漆聖といわれた蒔絵の人間国宝・松田権六です。東京美術学校(東京芸術大学)時代、作品の満点評価に納得せず、これでは今後の成長がないと評価を返上したほどの快男児。デザインこそ材料の命であり、生活をデザインで観る癖を身体に叩き込みました。一日一図案を自らに課し “デザインこそ命” なりと、日々の生活の中のすべてをデザインの対象として考える癖をつけたといいます。まさに “平凡の盆を重ねて非凡となす” で、時間をかけた成熟がもたらす技と底力。今後の日本は “モノづくり+知恵・デザインづくり” へ。考えを一度自分の中に沈め、時を経て溢れ出る知を掬い取る時代へ。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
一〇〇回以上修練して無意識で一挙に
一文は無文の師、他流勝つべきに非ず
昨日の我に今日は勝つ、と柳生新陰流
柳生新陰流(しんかげりゅう)は、戦国の世に創始され、柳生石舟斎宗厳が “無刀取り” の極意を工夫して免許皆伝を受けたもの。子の宗矩は二代将軍秀忠・三代家光の兵法指南となり1万2500石の大名になりました。宗矩の “兵法家伝書” は江戸武士の精神生活に大きな影響を与えたといわれます。柳生新陰流は柔術の体さばきを取り入れ、素手で相手の刀を取る無刀取り。力で相手を圧倒して倒す “殺人剣” に対して、心の位を以って相手を制して戦わせない “活人剣” を掲げ、心の修行として禅を行い、技よりも心を重視し、“剣禅一致” を唱えました。特に将軍に対しては、王者の心得としてこれを説いたといいます。グローバル・ビジネスの心構えとしても十分役立ちそうです。どんな世界でも “修行とは矛盾に耐えぬき、その上で余力を残す” ということでしょうか。“楽に出る音はつまらない。抵抗感がないと良い音は生れない” とジャズ演奏家・渡辺貞夫。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第26回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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