住の江の　岸に寄る波　よるさへや　夢の通ひ路　人目よくらむ

♪ 住の江の　岸に寄る波　よるさへや　夢の通ひ路　人目よくらむ ♪

絵・千絵崇石

読み人：藤原敏行朝臣（ふじわらのとしゆきあそん） 現代語訳・・・住の江の岸に寄る波・・そのよるの様に、せめて夜だけでも貴方に会いたい私。でも夢の中にさえ現れてくれない貴方。人目を避けるのは　もう私への愛が冷めてしまったからなのでしょうか・・・ これは男性が女性の立場で歌を詠んだものとされています。作者の藤原敏行は歌人として有名で３６歌仙の一人ですが、もっともすぐれていたと思われるのは書家としての才能でしょう。空海とならぶ能書家と評され国宝級だったそうです。「今昔物語」や「宇冶拾遺集」にも書家としての彼をテーマにした物語が残されています。

物語中の彼は、人に頼まれてお経をよく写したらしいのですが、その写経の間にも魚肉は食べるし、女性と夜をすごすし、行いは全く普段と変わらずで、とうとう閻魔さまが怒ってしまったと言うストーリー。何となく気のいい　ちょっと女性好きな男性のイメージが伝わってきます。

子供の頃、原稿用紙と言うものがありました。いまでも使われているとは思いますが、私は字が下手で原稿も、個人的な手紙もついパソコンでの作業になってしまいます。特に縦書きは小学生の様な字になってしまって。恥ずかしすぎて人になんか見せられません。
そんな私ですので能書家と言われる方々にはひたすら尊敬のまなざしを向けてしまいます。
彼の書いた物は　京都市右京区にある高野山のお寺　神護寺が所蔵している、日本３名鐘と言われている　｢さん絶の鐘｣に刻まれた銘文として残っているそうです。

来月、９月６日の高台寺でのコンサートのために最近　書きあげた３６歌仙のうたは９曲にまとめ上げられました。コンサートの同日に　アルバムもリリースいたします。
その第一章が「初秋」と言うタイトルで、歌い出しが、彼の秀歌と言われている
　　♪ 秋きぬと　目にはさやかに　見えねども　風の音にぞ　驚かれぬる ♪
で始まります。
真夏の暑い盛りに、そよいできた風の中に秋を感じてキュンと胸が詰まる。そんなヴィジョンが浮かびます。この歌が新しいアルバムで最初の歌になったのには理由があります。それは北の政所の寧々様が夏の終わりに具合を崩されて　秋の初めに　旅立たれたから。

和歌には、千年も前の言葉なのに　時代を超えてすぐ理解出来るうたから、その時の状況を知らなければまったく意味がつかめないうたなど、色々ですが、古文の文法に疎い私は、まずは音読みしてその作者の言わんとしている事を感じとることからはじまります。
そして文献を調べて　その時の時代背景に思いを寄せて、歌から醸し出されるドラマを視覚化したり、共感したりして　吸収して行きます。４４歳で入学した定時制高校を卒業して、その後マウイ島カレッジでの留学生活を通して、学ぶ事の喜びを知りました。
それがいまだに続いているのは本当にラッキー。「和歌うた」　に出会えてよかった。
明日からまた京都へ,　コンサートにぴったりの平安時代の衣装を探しに行ってきます。
まだまだ暑い日が続きそうです。読者の皆様も　お身体ご自愛くださいね。

（早苗ネネ♪）

早苗ネネ　和歌うたコンサート at 高台寺（京都）

早苗ネネさん　プロフィール

木々や鳥や魚や精霊…人間以外の存在達との交流が当り前に語れるくらい、いのちのひろがりに気づくと、共に生きている喜びや、苦しみや悲しみにもナイーブになる。

心と野生がひとつながりになると……こんな風に人は年を重ねられる。ひとりひとり、ユニークにもっと自分になれる。

早苗 Nene さんは、そういう人生の先駆者です。　感性を解放しながら、４０代で高校生に仲間入り卒業後、マウイのカレッジに留学中、突然半生記が受賞しました。

そんな新たなシーズンを迎えて、今エッセンスを分かち合いたい。

＜天性の歌い手＞というだけでなく、その存在感、溢れる活性のバイブレーションは、光のシャワーのよう。彼女と語り歌い、魂の成長を旅している現在の、自分の位置を確かめてみませんか？

早苗ネネさんHP