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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第31回)

by staff on 2015/10/10, 土曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第31回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 日経新聞夕刊には、米国株式市場(主要銘柄)の前日終値が掲載されます。2000年頃のアップル株価は10ドル周辺でウロウロ(現在は7分割前換算で800ドル前後)。放逐された創業者スティーブ・ジョブズが復帰する前の社長の最大業務はアップルをいかに高く売却するか。ソニーやキャノンなど数社の名前が売却先として噂になりました。iPodの開発はスカンクワーク(本来やるべき業務以外の自主的活動)でスタート、他部門とも自由に相談、対話の中からアイデアを創出、それを許容する組織風土の醸成。25年間君臨したソニーのウォークマン開発と瓜二つ。キーワードは “異縁連想-明らかに無関係なアイデアの統合”。現在のアップルのデザインストーリーは “製品の形” だけでなく “実用性・使い勝手・部品・製造工程” までを想定。デザインチームの特徴は “全員による頻繁なブレーンストーミング” “デザインプロセスの全てを記録” “製品ストーリーを考え、日常でどう使われるかを具体的にイメージ” “エンジニアでなくデザイナー主導で開発”。梁塵秘抄では “仏は様ざまに在せども、実は一仏なりとかや。薬師も弥陀も釈迦弥勒も、さながら大日とこそ聞け”とあります。大日如来は宇宙の根源の法身で、さまざまな如来・菩薩も大日から生まれるとの一神教的発想。ICTの世界も壮大なビジョンの勝負。機能やインテリジェンスは “フィジカル” から “バーチャル” へ。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

日本語は論理性がないというがそうともいえない
日本語は日本的に論理的なのであるとの見立ても
国文学と英語の両方をやることで初めて判る視点
背広・ネクタイ姿が紳士だという発想を破棄する

 日本語の特徴は “カタカナ・ひらがな(表音)を発明した上で、漢字(表意)も併用する” という点にあるとのこと。日本語は情緒的な構造を持つために論理を極めるには不向きといわれ、契約・ケンカには英語の方が向いているとの見方もあります。しかし、言語は文化風土の産物。日本という風土の中(ジャパンウェイ)での論理的役割・特徴こそが生命線。その突破口は、世界の複雑さを実感するためにも外国語との関わり・交わりを増やすこと。もう一つは “グループからチーム” の発想への重心移動。強いリーダーの下でメンバーを率いるのがグループ。メンバーがチームの価値観を共有し、個々の力を発揮していくのがチーム。日本語の論理性はチームの中での思考の深耕や価値創造には比較的向いているかも。 “英語に違和感が残るからこそ強調したい時には英語を多用する。シェークスピアが強調したい時にラテン語を使う如く” と作家・池澤夏樹。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

一〇〇年・二〇〇年 この世の花が内包する小さな力を結集する営為
人間が見ていても見ていなくとも 咲いては消えていくのが栄枯盛衰
能や歌舞伎の型は武術と共通 能面は剣術の稽古での手の働きの制限
最も力が入る個所を抑制することで潜在力を呼び覚ます、と多田容子

 “武術” は巨人・桑田投手の復活に大きく貢献、当時注目を浴びました。その師匠が武術家・甲野善紀さん。世界陸上200mで銅メダルを獲得した末續選手の “ナンバ走り” も有名に。武術の本質は “不安定な状態が最も身軽な状態” であること。安定している重心 (バランス) をわざと不安定にすることで軽い力加減で相手を動かす(重いドラム缶は斜めにして転がす)こと。武術に精通する多田容子さんは新進の時代小説家で、柳生十兵衛が主人公の “双眼” でデビュー。柳生新陰流は自在な変転を旨とし、勝たず・負けざる剣といわれます。力任せの攻撃や勝ちへの執着こそ危険。自然のままに、力が入る個所を抑制しながら潜在力を呼び覚ますのが極意。対立していることを相手が意識しないようにコトを進めること。“心と体の対立” “勝つか負けるか” の二元論を排除。自分探しでなく、尊敬できて魅力的な他人探し。遊びと仕事の融合は二対八が最適だとか。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

抽象という言葉 ビジネスの世界ではずっと否定的に使われてきた
本来、論理的整合性や矛盾を明確にするうえでは不可欠なプロセス
複雑系の時代とは抽象化の時代 想像力こそが威力を発揮する時代
最初は誰でも無我夢中で興奮 熱気が冷めた時にも自分を持つ必要

 円空は江戸時代前期の仏師・歌人。全国に “円空仏” と呼ばれる独特の木彫り仏像を残しました。生涯に彫った仏像は約12万体。ピカソより300年も前の見事な抽象芸術。ビジネス世界で “抽象的” という表現は、比較的ネガティブに位置付けられてきました。ピカソの前に円空という先達がいたことが起爆剤。世界は先の読めない時代に入り、過去に学ぶだけでは解は見いだせず、想像力を駆使して課題を “発見・設定・解決・展開” する力量が求められます。複雑系の時代とは “抽象化の時代” であり、想像力こそが突破力をもつはず。価値観・イデオロギーを超えるには、オープンな対話と抽象化が何より大切。抽象的思考とは、大きな視点をもって対象の本質を抉りながら “唯一線” を追求すること。論理的整合性や矛盾を明確にする上でも不可欠なプロセス。“純粋抽象でなく、自らの内部のイメージを象徴的に表現した抽象風傾向の心象風景” と画家・杉山寧。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第31回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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