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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第32回)

by staff on 2015/11/10, 火曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第32回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 米GEの前CEOジャック・ウェルチは20紀を代表する経営者の一人といわれます。 “シェア1位・2位以外の事業からは撤退する” という方針のもと、戦略重視を徹底しました。しかし、その “戦略” より上位に位置付けたのが “人材”。 “人材が第一、戦略は二の次。優れた人材がいなければ良い戦略も実現できず、学ぶ組織こそすべて” との信念を貫きました。以前、米ナレッジマネジメント・カンファレンスのイノベーション分野でグーグルとマッキンゼーのプレゼンがありました。グーグルはICTの潜在力をワクワクしながら発表。直後のマッキンゼーは理屈一辺倒に終始、参加者はグーグルに軍配をあげました。まさに時代の大転換。グーグルの採用基準は “広範な学習能力” “創発的リーダーシップ” “前向きの失敗経験”。どうでもいいのは “専門性(分野を問わない)” “学位(能力の証明にならない)” “学校の成績(評価の価値すらない)”。肝心なことは知能指数(IQ)でなく状況対応能力であり、自力で道を切り開く力量。梁塵秘抄では “生死の大海辺無し、仏性真如岸遠し。妙法蓮華は舟筏、来世の衆生渡すべし” とあります。広大無辺なる海を渡るためには、舟や筏にあたる大乗仏教は欠かせないとの教え。“農業” は未来の日本の切り札。製造業が成長できたのも農業人材という乗物があってこそ。今度は製造業の人材が農業雄飛の乗物として恩返しする番かも。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

これからの世の中はこれまで以上に何が起こるかわからない
それこそ、何でもかんでも想定外と逃げるわけにはいかない
今後どうなるかわからない中で決断の土台になるものは何か
専門領域に限定されない総合力 教養は教養として学べない

 グローバリズムの本質は “民主主義・市場主義・科学技術・リベラルアーツ” といわれます。凌ぐのでなくリスクをとることで、多くのことが深く理解できるという逆説。そのためには、好奇心をかり立てられるテーマに積極的に飛び込めるよう、組織の中で自由に動けるポジションを確保することが先決。“能動・自覚・自律”の姿勢がいよいよ一人ひとりに求められるということでしょうか。ただ、イノベーションでは、技術と並んで金融の役割は大きく、金融がリスクの最終の担い手であることに留意。資本主義は成功するがゆえに失敗もあるもの。“ルール” は遵守するだけでなく、変更したり新たに創ることが絶対に必要。しかも時に人工知能を “子分” として使いこなしていかなければならず、そのカギは教養・リベラルアーツとの遊びや戯れ。景気が良い時には慎重、周りが悪いとみている時にはそれをあえて疑う反骨。これこそ “無常の極意”なのかも。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

カルロス・ゴーン改革 9つのプロジェクトに分解 それをプログラムとして統括
プロジェクト間連携 リーダーは禁じ手の二人制 クロスファンクショナルチーム
従来のプロジェクト・マネジメントだけでは、複合プロジェクトには対処できない
価値創造プロセスに向け知を重視 ルール厳守に拘るのでなくルールの精神に則る

 カルロス・ゴーン改革の突破口はフランス・ブラジル・米国など、多国での成功体験。ゴーンはレバノン人でブラジル生まれ。幼少期をブラジルで過ごした後、中等教育は母国のレバノン、大学はフランスの国立パリ高等工業大学。レバノン・ブラジル・フランスの多重国籍を有し、アラビア語・フランス語・英語・スペイン語・ポルトガル語の5言語に精通。グローバルな複雑性を解きほぐす上で、言語のもつ役割は想像以上に大きいもの。キーワードは、話せる以上に “5か国語で思考できること”。まさに 多言語性” の強み。複数の言語の間で思考する多面性と深み。思考における “横断と越境” のピストン運動。不得意な言語を使うことで逆にリアルな本質を表現できるという不思議。言語をクロスさせる経験が知的潜在力を深めるという魔法。ルターの“宗教改革”もラテン語をドイツ語に翻訳したことが起爆剤。言語改革こそ組織改革・業務改革の原点かも。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

帝王ヘルベルト・フォン・カラヤンが語る指揮者の要件とは何か
何より、楽団メンバーとの関係性を重視 メンバーを招き入れる
指揮命令でなく 指揮棒のもとで一糸乱れず音楽を創りだす営み
指揮者が奏でる世界へ メンバー・聴衆を招待することに徹する

 やってみたい職業の一つがオーケストラ指揮者。しかし、帝王といわれたカラヤンは楽団員をコミュニティの中に招いて一緒に音楽を創りだそうという、指揮命令とは真逆の発想。今後、 “知的創造力” と併せて重要なのが “関係性構築力”。シーモア・パパート教授は、一心に石鹸を使った創作活動に取り組む子供たちの姿に感動。 “美術の授業と数学の授業はなぜこんなに違うのか?” との懐疑へ。数学では、問題の解き方や数式を教えられた後に課題を与えられ、解いていく作業。これは “コンストラクション(生徒と教師との関わりを通じて課題を達成)” ではなく “インストラクション(教師の一方的な授業)”。指導者にも教えられないことは山ほどあり、メンバー同士でしか学びあえないことも一杯あるというのが “教育の本質”。90年代の米IBM再建のキーワードは “スクラムを組め!前へ進め!”。危機を感じとれなくなった時が本当の危機の始まりかも。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第32回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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