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横浜スケッチ(第8回) 横浜海岸教会

by staff on 2015/12/10, 木曜日

ペンネーム 成見 淳

今月のテーマは大桟橋の手前、開港広場に隣接する海岸教会。
横浜スケッチも今月で8回目。初めのころは過去の古い絵ばかりで新しい絵が少なく、『これでは横浜NOWとは言えないなあ。』と恐縮する一方で、文章の方は過去の蓄積を活用し、当月号の締め切り前に次号原稿を提出して編集者が取り違えないかと心配したが、作曲を始めた頃から原稿の締め切りと現実とのタイミングが短くなり臨場感は上がったものの、月末が近くなるとハラハラするようになって来た。締め切りのない作業は仕事とは言えない。単なる道楽、自己満足。仕事は他人に(もちろん自分にも)責任を持つこと。
やっと趣味の延長から仕事へと意識が変わって来たのだろうか。
もう一つの変化は、エッセイはネットなどの二次情報でなく出来るだけ自分の目と耳と足で得ることとし、「取材」を意識し出したことだろうか。
人の話を聴くこと、お話の背景にある時代や情景を想像することはとにかく楽しい。

海岸教会を取り上げたきっかけは、8月に行われた高校の50周年の同期会。50年振りに会ったクラスメートの女性との会話からだった。
「今ヨコハマNOWというインターネット情報誌でスケッチとエッセイを担当しているのだけど、横浜市内でどこか思い出に残る所ある? 下手な絵だけど折角ならその人の心に残る場所を描いて、その思いも一緒にエッセイにしたいから。是非読者と共有させて。」
彼女は横浜以外で登米市の昔ながらの街や学校を挙げてくれた。万葉集を読む会の知り合いの方のお父様が亡くなり、お香典返しに登米市(市は「とめし」、登米町は「とよままち」と呼ぶ。)の油麩(あぶらふ)を送っていただき、自分もそこを訪れたことを話してくれた。宮城の明治村と呼ばれ歴史的建造物がそのまま残っており絵になるとのこと。
「そうですか。行って見たい所のひとつになりますね。で、横浜ではどこだろう?」、「そうねえ。一般公開の時に牧師さんが、戦時中(鉄などの資源が無くなり)教会の鐘を供出するよう迫られ、当時の牧師(渡邊連平氏)が『アメリカからの愛の贈り物を鉄砲の弾にして返すことは出来ない。』と断り、加賀町警察に入牢させられたお話がとても印象に残っているの。」と言って海岸教会を推薦してくれた。

海岸教会は私が絵を描き始めた頃に一度だけ描いた切りだった。
1990年代の初めで、描いている途中に偶然、私の2社目の会社で一緒だった方と出会ったのを思い出した。彼女を含めて当時の方達と今年の4月再会した。
この年になるとやたら昔の方を思い出すことが多く、思い出した人には必ず会うように心掛けている。「そのうち。いつか。」は「軽く一杯どう?」と同じでまったく意味のない言葉。前者は実現しないうちに忘れてしまう。後者は軽くで終わったためしがない。意味のない言葉を意味のあるものにするために、思い出したら手帳を片手にすぐ電話する。「懐かしいわ。そのうちお会いしたわ。」と言われたら「いつにしますか?」と決めてしまう。会えば必ず人生の幅が広がる。会って後悔したなら忘れれば良い。今、会わなければ一生後悔する。

同級生にもう少し海岸教会のことを聞きたくて電話すると、自分の話は聞き覚えだから第三金曜日に一般公開と礼拝があるから直接牧師さんに伺った方が良い、という的確なアドバイス。早速メールで取材申し込みをすると日にち指定でOKの返事。(知らずに「神父さん」と書いたら「ちなみにカトリックでは神父、プロテスタントでは牧師と呼びます。海岸教会はプロテスタントです。」と言われてしまった。『しまった。』そんなことも知らずに取材申し込みなど、と恥ずかしかったが、このおかげで二度と間違えないだろう。

先月半ば、このヨコハマNOWの発行人で今は私のボス的存在(彼女はそう思ってないだろうが私の方が勝手に飲み込まれている。)の方と一緒に教会を訪れた。教会のドアはかぎが掛かっており、どこから入るのかと教会の周りをうろうろと二回り。教会の裏に牧師さんの・・・社宅ではないし、官舎でもないし。と考えながらチャイムを鳴らすと、「夫は風邪をひいて寝込んでいますので私でよろしければ。」と奥様が取材に応じて下さった。
帰り際に金曜礼拝のご案内をいただき、「もちろん是非伺わせていただきます。」とお答えし教会を後にした。

 

11月20日、第三金曜日。ちょうど開催中の私の先生が会員の日本ペン彩画会展が開催中の関内のギャラリー彩光に寄って、11時半から教会を見学した。
カトリックと違って絵や偶像はなく、とてもシンプルですっきりしている。
2002年にボリビアに入国する前にペルーのクスコ(インカ帝国の首都、ケチュア語で「へそ」の意味。中心地。マチュピチュへの玄関口で列車の終着駅。)へ行った時にカソリックの教会を見学したが、飾ってある大きな絵には天使の羽の代わりに黒いコンドルの羽がついていたのを思い出した。どうやら絵は布教の有効なツールだったようだ。
一方宣教師による布教活動は異なる文化をもたらした。1859年に横浜に来たジェームス・カーティス・ヘボンと言えばヘボン式ローマ字がまず頭に浮かぶが医師であり、聖書を日本語に訳したり、初めて和英辞書を編纂したりと縦横無尽の活躍をしている。ただ、ヘボンの語源がHepburnとは知らなかった。女優のキャサリン・ヘップバーンはヘボン博士の孫にあたると書かれた文献もあったが定かではないらしい。
黒いコンドルの羽の天使を思い出したところで、自分のホームページに行ったまましばし休筆、タイム・スリップ・タイム。

さて、12時10分から30分間上山修平牧師による礼拝式。
黙祷、讃美歌(156)、祈り、聖書、説教、讃美歌(544)と続く…。この讃美歌を歌っている時に突然胸が詰まった。『あっ! この感覚はボリビアのコチャバンバの村祭りの時のものだ!』と思ったら急に・・・涙が出た。声をあげて泣く場面ではないので必死にこらえた。こらえればこらえるほど涙になって・・・。思えばこの1年色々な偶然や出来事が重なって、その原点がボリビアの村祭だったのか、もっともっと前、ひょっとしたら自分が生まれる前だったのか、何が何だかわからなくなって。今でもなぜかわからないのだが、教会からの帰り道。銀杏並木がまだ緑色の日本大通りを通り、横浜公園の横を歩いている時には、とても心が落ち着いて穏やかな気持ちになっていた。

取材に応じていただいた上山修平牧師・奥様、同行していただいた渡邊さん、そして海岸教会を推薦してくれた同級生のKさん。ありがとうございました。

海岸教会の歴史やエピソードにはほとんど触れませんでしたが、参考にさせていただいたホームページなどを最後に紹介します。
その中で私が特に印象に残ったのは二つあります。
一つは「はまれぽ」の、坂本龍馬を斬ったとされる今井信郎がクリスチャンになるきっかけにもなったのが横浜海岸教会だったと伝えられているという話です。キリスト教嫌いであった今井信郎が静岡から横浜に来た際、冷やかしで入った横浜海岸教会の礼拝に感銘を受け、静岡に戻って洗礼を受けたことが日記に書かれているそうです。
もう一つは上山牧師の奥様が語ってくれた「戦時中空襲に会い、当時の渡辺連平牧師が屋根に上って降り注ぐ焼夷弾を拾い集め、取り除いたおかげで焼けずに済んだ。」というお話です。アメリカ人が伝え、日本人と一緒に作った海岸教会を、アメリカ人が落とした焼夷弾から日本人牧師が守ったという歴史の巡り合わせを何と表現したら良いのでしょうか。信仰に日本人もアメリカ人もないのでしょうね。また、その普遍性ゆえに時の権力から弾圧されることにもなったのかもしれません。
時流を考えずに貫いてはいけない信念、時流に逆らってでも貫かなければならない信念。難しいところですが、「どちらが得か」という基準よりも「どちらに普遍性があるか」を優先させるべきなのではないかという気がします。


反対側の歩道からは車が駐車して見えないので、すぐ前の歩道から。
真夏の暑い盛りでした。
なぜかどこで描いていても15:40になると蚊が出て来るので早々に切り上げました。


上山牧師の奥様の取材後に、邸内からはスケッチできないので自分のアイ・シャッター&マイ・メモリーと写真を頼りに。
植木は短くなり、枯葉も落ちて、さっぱりとしてクリスマスを迎えるのでしょうか。


開港資料館の中庭から。ここはちょっとした陽だまりで、風よけにもなり、黄葉時や冬時は画家の人気スポット。
朝早くいかないと場所が確保できない。


開港広場から。大勢の画家に囲まれて。
この翌週には囲いがされて3月末まで工事中。一番良いシーズンなのになぜ?
大銀杏が主役で教会は背景なので恐縮。

海岸教会の公式ホームページ: http://www.kaiganchurch.or.jp/

読者の方で、横浜のどこかで特別な思いをお持ちの方の情報をお待ちしています。情報提供のささやかなお礼として私のスケッチを受け取っていただければ大変光栄です。

*12月21日より、私のホームページのURLが変わります。

筆者紹介

Jun Ohsawa 大澤 淳さん  
お名前 Jun Ohsawa 大澤 淳
E-mail j-narumi@ug.netyou.jp
URL http://home.netyou.jp/kk/ohsawa/
成年月日 1967年1月15日成人式。おひつじ座。いわゆる団塊の世代。誕生日はもっと前。
年齢 その年の西暦 - 1947(3月25日以降)
生息地 横浜市鶴見区に60年以上在住。いわゆる浜ッ子。
血液型 いわゆる典型的なAB型
性格 内気、控えめ(だが信念は曲げない)、人前に出るのを極度に嫌う・・・だったが、 最近は少しずつ変わって来た。これもネット化のおかげかな。
割りと簡単に物事をはじめてしまう。(衝動的、意思決定が速い、好奇心が強い) 。忘れやすい。(最近特に)
趣味 絵画(スケッチ、油彩、水彩)ヨコハマNOWのお陰で、2015年より主に水彩画を中心に絵画を再開した。
文章を書くこと(エッセイ、旅行記など)。
フォルクローレ(アンデス音楽、ケーナ、サンポーニャ演奏・・・だったが、今はたまに聴くだけ。
年1回(と決めているわけではないが)の海外放浪の旅。
(心の洗濯:すぐ心が汚れやすいので。)
ゴルフ(1979年にホールインワンをしたことも。神奈川県津久井湖ゴルフコース、最近は月2~3回、ハンディキャップは全盛期13だったが、この頃は何とか10代後半。)
退職後は散歩や庭を眺めたり芝生の雑草を取ったり。
2015年作曲を始める。

 

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