横浜宝石物語（第15回）　三代目の私（オリジナルジュエリーの製作開始）

横濱宝石美術館エメラ
代表　大島貴子

横濱宝石美術館エメラ 代表　大島貴子

PROLOGUE　連載に寄せて

私は横浜でおそらく一番古い宝石商の三代目です。

創業者の祖父、二代目の父、三代目の私とそれぞれの時代で宝石商としての形態は違っていますが、良い宝石を選び、作りの良いジュエリーを製作して、ご提供するということについては、３人とも拘ってやってきたと思います。

祖父が宝石の製造メーカーとして地位を築き、父が小売店として皆様に愛されたからこそ、今、私が宝石商としてやっていられますので、いつか祖父のこと、父のことを書いてみたいと思っていました。

宝石商の三代目

私は現在、横浜の馬車道で「横濱宝石美術館エメラ」という宝石店をしております。

横浜の景色や思い出をジュエリーにした「横浜ジュエリー」などオリジナルジュエリーの製作と販売、デザイナーやアーティストの作品の展示販売、お客様のご要望をかたちにするリフォームやオーダージュエリーのご注文を承っています。

私の宝石商のルーツである創業者の祖父のことからお話しさせて頂きたいと思います。

三代目の私
（オリジナルジュエリーの製作開始）

バーゼルフェアから帰ってきてから、エメラのオリジナルジュエリーを作りたい気持ちが大きくなっていました。
ただ、当時はバブルの全盛期で、石を輸入して、キャストと言われるメーカーの既成枠に入れて作れば、どんどん売れた時期でしたし、メーカーも面白いデザインの商品を作っていました。
エメラとして、職人を抱えていたので、キャストでなく地金から作る手作りのオリジナル商品を作りたいと思いました。
しかし、当時は職人も販売した商品のサイズ直しや修理に追われていて、徹夜するような状況でしたので、尚更、父のＯＫが出ませんでした。

そんな中、バブルも翳りが見え始めた１９９０年頃、アメリカ宝石学会（ＧＩＡ）で宝石学と彫金を学んだ石井恵理子さんがジュエリーデザインの勉強をしている最中に、エメラ地下街店に入社してきました。
石井恵理子さんは今、馬車道のエメラで作品を常設して頂いているジュエリーデザイナーです。

当時、石井さんも熱心に父にオリジナルジュエリーを作らせて欲しいと訴えた為、まずは石井さんのデザインでお客様のリフォームやオーダーを職人が手作りすることになりました。
次に店にあった石で、メーカーのキャスト枠で作るには小さすぎる石や形が不揃いの石を使って、オリジナルジュエリーを作り始めました。
そして、デザイナーも増やして、私とデザイナー、職人の５、６名で週に１度、企画会議をして、オリジナルジュエリー作りが本格化していきました。

その後、石井さんは独立して、ジェエリーデザインコンテストなどにも多数入賞をされて、素晴らしいジュエリーデザイナーになりました。
石井さんは４年前に私がエメラを馬車道にオープンする時に作品の常設とリフォームやオーダーのデザインを引き受けて下さり、大変有難く思っています。

バブルの終わり頃はデザイナーだけでなく、大学で彫金を勉強した女性が職人になりたいというので、父が職人のところに預けて、面倒をみたこともありました。
今はティアラの修復などの職人として活躍されているそうですが、その女性が職人のところで修業していた時にお客様のオーダーでスワンの小物入れを作ってもらったことがありました。
真ん中に大きなスターサファイアがあり、その周りにパールをあしらい、１８金とルビーやサファイア、エメラルドで花籠のようにしたプラチナのスワンの小物入れは写真で見ても綺麗ですが、実物は本当に素晴らしかったです。

（クリックで拡大画像）

エメラ店舗

ロゴマーク

リフォームのオパールリングとデザイン画

エメラオリジナルジュエリー

スワンの小物入れ

エメラの年賀状

（写真提供：大島貴子）