横浜宝石物語（第16回）　三代目の私（オリジナルジュエリーの役割）

横濱宝石美術館エメラ
代表　大島貴子

横濱宝石美術館エメラ 代表　大島貴子

PROLOGUE　連載に寄せて

私は横浜でおそらく一番古い宝石商の三代目です。

創業者の祖父、二代目の父、三代目の私とそれぞれの時代で宝石商としての形態は違っていますが、良い宝石を選び、作りの良いジュエリーを製作して、ご提供するということについては、３人とも拘ってやってきたと思います。

祖父が宝石の製造メーカーとして地位を築き、父が小売店として皆様に愛されたからこそ、今、私が宝石商としてやっていられますので、いつか祖父のこと、父のことを書いてみたいと思っていました。

宝石商の三代目

私は現在、横浜の馬車道で「横濱宝石美術館エメラ」という宝石店をしております。

横浜の景色や思い出をジュエリーにした「横浜ジュエリー」などオリジナルジュエリーの製作と販売、デザイナーやアーティストの作品の展示販売、お客様のご要望をかたちにするリフォームやオーダージュエリーのご注文を承っています。

私の宝石商のルーツである創業者の祖父のことからお話しさせて頂きたいと思います。

三代目の私
（オリジナルジュエリーの役割）

１９９１年にバブルが崩壊し、景気が後退した上、父の会社も母の会社もバブル期に不動産投資をしていた為、銀行の貸し剥がしにもあいました。
宝石や宝飾品は銀行の担保になりませんでしたので、バブル期に銀行の薦めで多額の不動産投資をしてしまいました。

エメラは多店舗化していて、バブル期には９店舗ありましたが、そんな状況になった為、次々と店を閉めていき、最終的には横浜西口のダイヤモンド地下街店１店舗になりました。
当時はほとんど自社で在庫商品を抱えていた為、店舗も少なくなり、売上も減り、不良在庫が沢山できました。

不良在庫でも石は綺麗ですが、ダイヤモンドが豪華に取巻いている古いデザインの商品が多かったのです。
そこで、もっとシンプルでお客様のご希望に合うようなデザインをして、手作りで作り直すことにしました。
古い枠から外したダイヤモンドも使いました。

既にオリジナルジュエリーを作り始めていましたし、リフォームも手掛けていましたので、それが作り替えにとても役立ちました。
また、タイやバンコク、コロンビア、ブラジルなど原産地から輸入した石（ルース）も沢山ありましたので、シンプルな売れ筋商品から面白いデザインの商品まで、色々とデザインをして、手作りのオリジナルジュエリーを増やしていきました。
不良在庫だった商品も生まれ変わり、オリジナルジュエリーはお客様から評判が良く、次々と売れていったので、とても嬉しかったです。

バブル崩壊で大変な中、頑張っていましたが、１９９５年に阪神・淡路大震災がありました。
景気はますます後退した上、すぐに地下鉄サリン事件が起きて、その後、横浜でも異臭事件騒ぎがあった為、地下街は怖いからと、お客様が来店されなくなり、売上がとても落ちました。
そんな時でもリフォームやオーダー、オリジナルジュエリーは好調でしたので、諦めずに作り続けていました。

１９９０年代末には不良在庫も残っていた石（ルース）もほとんどなくなりました。
売れ筋の定番商品の仕入れが優先で、オリジナルジュエリー用の石の仕入れをほとんどさせてもらえず、このままだとオリジナルジュエリーが作れなくなるという危惧がありました。
定番の商品を買って下さるお客様も、オリジナルジュエリーをショーウィンドーでご覧になるのをとても楽しみにして下さっていました。
ですので、オリジナルジュエリーを何とか作り続けることはできないだろうか？ と思い、２００２年に父の会社から独立して、ジュエリー加工会社を立ち上げました。

このジュエリー加工会社が今、馬車道の店を運営している有限会社アレクスです。
どのように会社を立ち上げ、オリジナルジュエリーを作ったかは次号に続きます。

（クリックで拡大画像）

エメラ店舗

ロゴマーク

古いデザインの在庫商品のリング

作り替えたオリジナルジュエリーのリング

デザインの面白いオリジナルジュエリー

【今月のエメラのジュエリー】
デザイナー石井恵理子さんの
アメジストのブローチ

デザイナー石井恵理子さんのアメジストのブローチ

（写真提供：大島貴子）