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第6回 魔女狩りと今昔

by staff on 2016/3/10, 木曜日

  寒暖の差が激しい日々が続いているようです。二月の後半は、ずいぶんと冷え込む日もありました。立春を過ぎれば暦の上では春と言いますが、暑さ寒さは彼岸、春分や秋分までという言葉もあります。日本らしい四季の移ろいを感じながらも、体調には気をつけたいものです。

 先日、原宿で行われている『魔女の秘密展』に行ってきました。
 展示会では、人々が悪いまじないを使う「魔女」という存在を悪魔と同じく恐れていた時代のことや、隣人を「魔女」として告発した魔女裁判の時代のこと、そして「魔女」をモチーフにした芸術作品、現代日本のサブカルチャーに登場する「魔女」のことなどが解説されていました。
 実在した魔女の歴史は西洋のものですから、展示品は海外から取り寄せたものばかりです。そういった意味では随分と力の入った企画であると見えました。
 展示品が充実している一方で、解説は予備知識のない人でも流れを理解できるような、あっさりとしたものでした。魔女の実在について調べたことがある人や世界史に詳しい人からすれば解説自体は物足りない部分もありそうですが、誰からもとっつきやすく、また貴重な品々を日本で見られるという点は魅力です。展示会としては、広く受け入れられる形で纏まっているのではないかと思いました。

 さて、「魔女狩り」の正体は、集団心理や、不安や恐怖に対するスケープゴートだと考えられます。まだ豊かでなかった時代、不作や家畜の異常は命を左右するような恐ろしいことでした。そうした不安を「魔女」のせいにすることで、人々はなんとか心の平穏を保とうとしたのでしょう。
 何か都合の悪いことがあると、多くの場合は立場の弱い人、例えば物乞いや老人、人付き合いが薄く孤立している人のせいにして、攻撃するのです。そして、そういう不安がある時に自分たちの常識と違う事があれば――聖職者が祈っても治らなかった病気を、薬草でたちどころに治してしまうとか――それもまた、よくない方法を使ったに違いないとして攻撃の材料になるのでしょう。
 宗教や言い伝えによる大義名分こそあるものの、本質的には真実などどうでもよく、ただ自分たちの不安を解消するための対象を探していたのではないでしょうか。適当な誰かのせいにして、飢えや病による死の恐怖を誤魔化そうという心理です。
 この、もっともらしい理由は後付けにして、もっと根深い心理の為に誰かを攻撃しようという向きは、現代の様々な問題、いじめやパワハラなどにも通じるものがあるように思います。こうした問題の加害者たちもまた、何か解消し難い不安を抱えているのでしょうか?
 老いも若きも、コミュニティが一丸となって無実の人を吊し上げていた時代に比べ、そういった行為が比較的限られた場所で行われるようになったことは、人間の進歩なのでしょうか。それとも、集団で誰かを攻撃したくなる心理を克服できないという、停滞なのでしょうか。
 私には、どちらとも判断が付きません。
 白崎文子でした。

(文:白崎文子/)

 

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