Skip to content

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第40回)

by staff on 2016/7/10, 日曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第40回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 モハメド・アリが亡くなりました。真っ先に思い出すのはキンシャサの奇跡。何十年も前のことですが、私は当日仕事をさぼり喫茶店の生中継テレビに噛り付いていました。1Rから5Rまでは終始ロープを背にして殴られ放題のサンドバッグ状態。殴り続けたフォアマンも6Rあたりからはさすがに殴り疲れ。しっかりガードしてダメージを最小限に抑えたアリはロープを背に徐々にジャブを繰り出すようになり、フォアマンの顔面を捉えはじめました。8Rに入るとそのジャブがフォアマンの顔面に命中、大男の身体が一瞬グラッときた瞬間を見逃さずあとは一気呵成。象をも倒すといわれた大男が文字通り宙に舞いました。勝因は、圧倒的に不利な下馬評の中で、考えに考えた勝つための戦略。フォアマンにとってボクシングは “リング上の殴り合い” 。一方のアリは “観客の応援もパワーにする総力戦” 。一か月前にザイールに入り、地元民と積極的に交流して仲良しに。梁塵秘抄では “山の調は桜人、海の調は波の音 また島廻るよな、巫女が集いは中の宮 厳粧遣戸は此処ぞかし” とあります。平清盛による厳島神社への平家納経(国宝)は書・絵画・染織・金工からなる極上。ただ、奢る平家と違い、アリは56勝5敗と決して負け知らずにあらず。10代のアリは誰よりも早くジムに入り、誰よりも遅くまで鍛えた練習の鬼。 “あまりにも順調に勝ち続けたボクサーは弱みを持つ” とアリ。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

地唄舞でも静かな動きの方が体の負担は大きい 動きが少ない分、思いを深くする
常識の重要さを実感 想像力を働かせることで矛盾地獄を突破し、価値につなげる
弱気な組織の多数意見が一番危険、大抵は失敗する 肚に落ちるかが最後の決め手
生きる目的がはっきりしていたら 餓鬼・畜生と言われようと、生き延びれるはず

 日本舞踊は、歌舞伎舞踊の踊りと座敷舞の舞に大別。地唄舞は、上方の流行歌の地唄に振り付けしたものとのこと。心の有り様を重視する日本舞踊は、静かな動きを身体全体で支え、それが思いをより深くするのかも。人気の “デザイン思考” は、利用者の心の有り様を豊かにすることが眼目。モノの機能向上に拘泥するのとは対極の発想。繰り返し “目的” に戻って考えることの大切さ。これはモノづくりだけでなく金融の世界でも同じ。投資の世界も最近は“ゴールベース資産管理”が重視され、ゴールを明確にすることで、感情的な行動を回避し、心の深奥に則った判断につなげるのが狙い。投資の世界は流行と破綻の繰り返し。生半可な知識と経験だけでは時の勢いに流されるばかり。目的・目標がいかに大切かの再確認。そのための精神風土は考え方・行動様式の積み重ねで醸成されるもの。 “映画は顔を撮るのではなく人間を撮る” と映画監督・大林宣彦。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

理解と実感は必ずしも同じとは限らない 自分の流儀をつくる
挑戦 目標を低く置かず、徐々に高くする 限界を意識しない
必要なのは戦略と切り札商品 過去でなく明日のことで苦しむ
鮫が精巧でないから海や怯える人間を撮った、とスピルバーグ

 スピルバーグ監督といえば、 “ジョーズ” “E.T.” “未知との遭遇” などの名作がすぐ脳裡に浮かびます。17歳でユニバーサル・スタジオのツアーに参加、途中でトイレに隠れてスタジオ内を動き回り、スタッフと仲良くなって顔パスで出入りする行動力と好奇心。1975年に公開された “ジョーズ” はそれまでの “ゴッドファーザー” の記録を破り世界歴代興行収入1位を記録する大ヒット。 “ジョーズ” では、サメが精巧でないために海や怯える人間を中心に撮り、逆にそれがサメの恐怖を呼んで大評判。1982年の “E.T.” ではスピルバーグの東洋への思想・美術・医学への関心の高さが随所に発揮されました。満月を背にした自転車上の少年たちの影絵は歌川広重の浮世絵の月にかかる雁からのヒント。E.T.が指で少年のケガを治すのも東洋医学でいわれる “手当て” の応用。 “好きな時に・好きなところで・好きな仕事をする。それが柔軟性” とシリコンバレー精神。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

三〇代までは、リーグ戦、多少の星の取りこぼしは許される
四〇代以降はトーナメント 一発勝負、取りこぼしは致命傷
愛嬌は英語や数学とは異なり 学校では教えてくれないもの
土壇場では 学校で学ばないものこそ、宝刀としての斬れ味

 土壇場では、学校で学ばないものこそが宝刀の斬れ味。ドラッカーは “プロフェッショナルの行動原理” として、何をしなければならないかを自問自答する・アクションプランを作成する・チャンスに焦点を当てる・私ではなく我々の立場で考える、ことの大切さを強調しています。そのためには “クリエーティブ・ルーチン” が不可欠。ルーチンは大リーグ・イチローやラグビー・五郎丸選手で有名になりましたが、血肉化したルーチンは、いい仕事をする人たちには共通のもの。モーツアルトは仕事が一日8時間・睡眠が5時間、ダーウィンは仕事が8時間・睡眠が8時間、バルザックは仕事が13.5時間・睡眠が7時間。習慣こそ第二の天性。自動車王フォードも成功までに5度の無一文を経験し、リーグ戦とトーナメントの両方を戦い抜きました。それでも、運は不可欠。 “人生には棚からぼた餅が必要。そうしないとキャリアが加速しない” と写真家・立木義浩。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(三)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

「ビジネス梁塵秘抄」購入ご希望の方はこちらからどうぞ!
http://www.syplus.jp/ooura/

(第40回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(三)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

Comments are closed.

ヨコハマNOW 動画

新横浜公園ランニングパークの紹介動画

 

ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
(動画をみる)

横浜中華街 市場通りの夕景

 

横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。
(動画をみる)

Page Top