ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第43回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第43回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
インバウンド消費が一服し、一部に焦りが生まれています。来日客は依然増えていますが、消費構造は日本と同じく “モノからコト” へシフト。 ”茶の湯” も外国人観光客には人気メニューの一つ。茶の湯といえば千利休。千与四郎(利休の幼名)が師・武野紹鴎(じょうおう)とのエピソードを描いた六曲一双の屏風絵(横山大観:野間記念館)は圧倒的。庭掃除を命じられたものの庭には塵一つなし。そこで木々を揺り動かして木の葉を落とし、秋の庭に風情を添えた場面を描いたもの。その利休から400年以上も続く千家の茶道。千家好みの茶道具をつくる十の職家は “千家十職” といわれます。 “茶碗・釜・柄杓・表具” などからなるその道のプロ集団。伝統を地道に革新していく “グループ・イノベーション” 。ただ、利休本人は豊臣秀吉の逆鱗に触れて切腹に。名刀・粟田口吉光(現在も裏千家の家宝)で切腹、その首は一条戻橋で晒しものに。死へ向かう舟を見送ったのは、秀吉の報復を恐れ、高弟の古田織部(織部焼の創始者)と大名の細川忠興(妻はガラシャ夫人)のわずか二人。梁塵秘抄では “熊野へ参らむと思えども 徒歩より参れば道遠し すぐれて山きびし 馬にて参れば苦行ならず 空より参らむ 羽たべ若王子” とあります。歩行は難儀・馬では修行にならず、空を飛ぶという大胆な発想。 “塩は土俵ではなく、相撲をとる人間の心を清めるためだ” と元横綱・大鵬。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
葛藤・洒脱の果て 心身ともに一番の充実期は九〇歳と老画家
効率良ければ納得 一方で、無駄と感じる時間も意外と得難い
辛くても5年はやる、3年の後の2年が大切、と女優清川虹子
よく “石の上にも三年” といわれますが、 “どんなにつらくても五年はやりなさい。三年で分かったつもりになっちゃだめ。その後の二年が大切なのよ” と、芸能界で悪戦苦闘する若い俳優や歌手を励まし続けたのが女優・清川虹子。この話を聞いて心から得心。私も外資系経営コンサルティング会社に六年在籍しましたが、三年ではまだ世界規模のコンサルティング・ネットワークを把握しきれず、五年でやっとグローバル・コンサルティングの全体像が肚におさまったというのが実感。 “心身ともに一番の充実期は九〇歳” と語るのは現在九五歳の画家・野見山暁治さん。鮮やかな色彩と大胆な筆遣いは瑞々しく軽やか。そういえば、葛飾北斎も九〇歳まで生き、 “あと十年あれば絵の何たるかがわかる” と豪語しました。 “知的好奇心の強い老人こそ最強” という話も。 “モデルが正しくとも、パラメータが誤っていれば結果は悲惨” と思想家ジャック・アタリ。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
コミュニケーションは 話せば話すほど、各々の違いが詳細に見えてくる
捨てることで本質が見える 将棋は泥臭い、地を這うように粘り強くやる
声と体が常に人様からお金をいただける状態にしておく、と女優草笛光子
最近は、G・クルーニーとともに “白髪・銀髪が格好いい” と評判なのが女優・草笛光子さん。白髪・銀髪を単なる老化現象ではなく、成熟・知性・ゆとりなどを象徴する大人の凄さとして前向きに受け止められています。かって、徹夜続きの撮影に若いスタッフが心配すると、 “私は戦争をくぐり抜けてきた女よ” が決まり文句だったとか。だからプロ根性は健在、 “声と体が常に人様からお金をいただける状態にしておく” とはおみごと。八〇歳を超える女優人生の中で、いろんなものを切り捨てながら、地道・着実に粘り強くやり続けることで、宝石を磨きあげてきたということでしょうか。 “いつも私で生きていく” とは見習うべき覚悟。舞台の本番がある時には、元気を出すため朝からステーキを食べるほどの気合。人生はわがままして好きなように生きるのが最善策。 “一日マネしたら一日のマネ。一生マネしておったら、マネがほんまもんになる” と宮崎禅師。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
形だけに拘ると空虚人間 出版業、インターネット時代は知的サービス産業
無限の幸福か無限の悲惨の択一 目・耳・心だけは開いて自分から飛び込む
百戦百勝は善の善にあらず 戦わずして人の兵を屈するのが善の善、と孫子
兵法書として孫子の名は著名。中国春秋時代(紀元前500年)の軍事思想家・孫武の作である兵法書。 “孫子” 以前は、戦争の勝敗は天運に左右されるという考え方が強かったそうですが、孫武は戦争の記録を分析・研究し、勝敗は運ではなく人為によることを悟り、勝利を得るための指針を理論化しました。孫子の戦略論の特色は “廟算(びょうさん)” の重視。廟算とは開戦の前に廟堂(祖先祭祀の霊廟)で行われる軍議で、内容は敵味方の実情分析と比較。廟算における敵味方の比較は、 “道・天・地・将・法” の五事からなり、具体的には、七計によって判断するものとか。 “人心把握” “将軍の力量” “天の利・地の利” “軍規の厳格度” “軍隊の強さ” “兵卒の訓練” “信賞必罰” 。以上を戦前に比較し、勝算が見込める時に兵を起こすべきとするもの。 “本質的なものを生かすにはハイレベルの要素技術であってもあえてそぎ落とす” とデザイン・コンサル会社IDEO。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(三)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第43回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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