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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第48回)

by staff on 2017/3/10, 金曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第48回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

美術館・博物館を訪問すると、時々画家の写生帖に出会うことがあります。葛飾北斎には有名な “北斎漫画” がありますし、尾形光琳の写生帖に遭遇したこともあります。これだけでも一幅の絵。この基盤があるからこその北斎の “富嶽三十六景” であり、光琳の “燕子花図屏風”。AI(人工知能)活用の核は “技術” と “知識ベース”。北斎・光琳の写生帖はAIにおける知識ベースに当たるもの。知識ベースの厚みが価値創造の決め手であり、パーソナル・ナレッジマネジメントの重要性を示唆しています。AI専門家の見立てでは、現段階は生物でいうと “眼” を獲得した段階とか。生物のその後の進化に当てはめると、AIは爆発的に進化し、これからが大化け期。 “豊潤なユーザー体験” “異常性・想定外の検知” “多様な高付加価値組織”。AI適用の確実な成果には、通常のデータ収集/分析から始めるのでなく、アウトカム(目的)をまず設定することこそ大切。その達成には何が必要かを考えた上でデータ結合させること。異なる観点と多様性を持ち込み、常に関係性をとらえ直すこと。ほんとうの発見とは常に新しい目で見るということ。梁塵秘抄では“王子のお前の笹草は 駒は食めども猶繁し 主は来ねども夜殿には 床の間ぞ無き若ければ”とあります。王子は若く溌剌でも思うようにならないことも。 “美が我々の目を背くのでなく、我々の目が美を認め損なうのだ” とロダン。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

問題点 周囲が望んでいることがわからない 社会や周囲のことは他人の仕事
情報収集プロセスが確立できてない 組織外とのネットワークが構築できない
社会や周囲の情報分析を面倒がる 他グループを徹底的に分析・評価をしない
生きる 無限の繰り返しを自覚 時間が空間を変質させる、と建築家・隈研吾

“負ける建築” とは建築家・隈研吾が貫く建築観。屹立する巨大な高層ビル群を “勝つ建築” と位置づけ、それとは異質で受動的な建築のあり方を目指すもの。画一的なデザインは、ライフスタイルを硬直させ周囲を圧迫してしまいがち。阪神淡路大震災や東日本大震災により、ありえないことも起こることを実感。今後はさまざまな外力を受け入れる柔軟な建築を目指すべきと提唱。美意識より社会との対話やコンセンサスを重視する持続可能な建築。新しく創るものの中にさりげなく古いものが覗く隠し味。新歌舞伎座の設計をして気付いたのは、昔の人が築いたものをうまく使うと、自分一人ではできないことができるようになることを教えられたとか。創造性だけに固執するのでなく、過去の遺産との連携・融和をはかること。無限の繰り返しの中で、時間が空間を変質させることの自覚。 “初めの少しのゆがみが、あとには大きくゆがむ” と剣豪・宮本武蔵。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

業務プロセスに潜むリスク 業務の戦略的重要度と定型度のマトリクスから切り込む
業務の重要度や定型/非定型度合い、要員の量・質に潜むリスク 戦略的思考こそ鍵
アイデア創出・価値創造志向のプロセス コスト削減・効率化志向のプロセスの解析
辛い時のことは絶対に忘れない 楽しい時のことは忘れる、と津軽三味線・高橋竹山

先日亡くなった作曲家・船村徹の代表作の一つで、サブちゃん(北島三郎)が唄う “風雪ながれ旅” は哀愁の極み。そのモデルが津軽三味線の名人・高橋竹山。17歳から東北・北海道を門付け。 “下駄の鼻緒は針金、血が出ても鼻緒が切れるよりまし” という生き様。小学校もまともに通えず、もう少し学校で音楽を学べれば、もっとうまく演奏できたとの無念。しかし、学校の些末な知識より、風雪で磨き鍛えられた切れ味・迫力こそが竹山ならではの “自分の学校”。この凄みは知識のもつ限界を痛感させます。渋谷のジァン・ジァンでは、22年間のライブで多くの人々の心を捉え、津軽三味線ブームの魁に。アメリカ公演では、ニューヨークタイムズが “魂の探知器” と最高の賛辞を贈りました。三味線弾きの命である三味線を何より大切にしたこと。イチローが野球道具を大事にするのと共通します。“かわいがってくれた記憶は肉体化される”と社会学者・上野千鶴子。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

イノベーション環境 アイデアの創出・育成・市場化に向けた環境整備と障害排除
イノベーション創出プロセス 市場/顧客との接点密度向上とフィードバック重視
イノベーション技術/スキル開発 創出・育成・市場化に向けた技術/スキル強化
ミスをチームが受け止めていく ミスによりチームは更に強くなる、とマラドーナ

1986年FIFAワールドカップ準々決勝のアルゼンチン対イングランド戦は歴史的一戦。両チーム無得点の後半、ドリブルでゴール正面に切り込んだマラドーナは、GKと空中でボールを競り、GKのパンチングより先にマラドーナがボールに触り、ゴールに流し込みました。ビデオにはマラドーナがジャンプしながら振り上げた左手でボールをはたいた瞬間が映っています。これが伝説の “5人抜き&神の手”。ワールドカップには4大会連続で出場し、1986年はチームを牽引して優勝。 “ミスをチームが受け止める、ミスによりチームは更に強くなる” との勝負魂。本当のプレッシャーはゴール前やピッチではなく、いつ貧困に陥るのかという不安。 “5人抜きは相手選手がフェアだったからできた” との言はお見事。“サッカーのマラドーナ・詩のランボー・音楽のモーツァルト”とのフレーズも。“飽きない・余韻を楽しまない・更に次へ進む”と本塁打王・王貞治。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(四)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第48回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(四)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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