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しあわせの「コツ」(第4回) 桜の「さ」の字はどんな意味?

by staff on 2017/4/10, 月曜日

第4回 桜の「さ」の字はどんな意味?

春の気配を感じると、「桜前線」の行方が気になり始めます。やれ、今は九州、本州まであと一週間、じゃあ週末はお花見だ! など、日本中が開花情報に振り回され、気もそぞろ。このコラムが皆さんのお目に留まる頃、きっと日本のどこかで桜が咲き誇っていることでしょうね。

ヨーロッパでも「ホワイトアスパラガス前線」があり、温暖なスペインから始まりフランス、ベルギー、オランダ、ドイツと北上していきます。ヨーロッパの人達はホワイトアスパラガスが市場に出回る頃になると、春の訪れを感じるのですね。

欧州の春を告げるホワイトアスパラガス

しかし、日本人の桜への思いには何か特別のものがあるような気がしませんか。満開の花を楽しむだけでなく、三分咲き、七分咲き、また散りゆく姿にもうっとりしてしまう日本人。なぜ、私たちはそれほどまでに桜を恋焦がれてしまうのでしょうか? そこに、縄文以来、私たちのDNAに刻み込まれた「思い」と「行動」が見えてきます。

ずっと昔、私たちのご先祖はこんな風に考えていました。先月号でお話ししたように、一音一語の古代日本では、「さ」は「神様」という意味だったのです。
それも「〇〇〇〇命」といった「古事記」に登場するような人格神ではなく、万物を生かし、育む自然の力を素朴な畏敬の念を込めてそう呼んだのでした。

春になると、山から「さ」という名前の神様が里に降りてきます。「さくら」が咲くとは、「さ」の神様が降臨したしるしなのです。そこで農民たちは桜の根元に酒(さ・け=神の餉)や食べ物を供えて、里に降り立ってくださった感謝を捧げ、豊作を祈りました。素朴でささやかな神行事のあと、みんなでお供えした酒や食物で宴会をしたのです。これが「お花見」の始まりです。

最近のようなどんちゃん騒ぐお花見は江戸時代からと言われています。神様に感謝したり、豊作を祈るという本来の部分はすっかり抜け落ちて、「直会=なおらい」だけになっていますね(笑)。 「さ」の神様も苦笑していることでしょう。

よくあるお花見光景。紅白幕をめぐらすのは「神行事」の名残でしょうか?

山から下りてきた「さ」の神様が座してお鎮まりになる場所を「くら=座」と言います。 さ・くら。 そう、桜とは「さ」の神様がおいでになる所(=くら)、という意味なのです。

白馬村。日本人の心の原風景 里山の桜

桜は神様なので、散る時も「神様がお帰りになった」と言ってお見送りします。散る桜にも風情を感じてしまう私たちの感性は、この辺から来ているのでしょうね。

やがて桜の花が散り終わると、「さ」の神様は田んぼに降り立ち、「皐月」(さ・つき=神様の月)が始まります。「田の神様」 「田母神様」というのは、 「田んぼにやってきた『さ』の神様」と言う意味です。五月晴れのもとで、「早乙女」(さ・おとめ=神様の乙女)たちが「早苗」(さ・なえ=神様の苗)を植え、稲作が本格的に始まります。このように「さ」の神様は日本人の生活と切り離すことのできない存在でした。

田植えをする早乙女たち。今は観光イベントになってしまいました。

ちなみに「さ」がつく言葉のほとんどは、「さ」神様からきています。
地名では、
さ・がみ(相模)
さ・つま(薩摩)
と・さ(土佐)
さ・ぬき(讃岐) など。

一般の品詞では
さ・け(神様の食べ物)
さ・かい(神様と人間のいる所との境界)
さ・とる(神様の気持ちが分かる)
さ・ばく(神様が定める) など。

興味深いことに、日本にいらっしゃる言語学に詳しいあるカナダ人の司祭によると、 “s” の音は、世界中のすべての言語に存在する普遍的な音だというのです。にもかかわらず、幼児にとっては非常に発音しづらい「大人の音」でもあります。そういえば、わが家の子供たちも小さい頃「さむい」を「たむい」、「おさかな」を「おたかな」と言っていましたっけ。

この普遍的な “s” を含むもっとも基本的な音である「sa=さ」を、私たちのご先祖は自然をつかさどる神様を表す言葉に選んだのでした。

今年のお花見は、飲んだり食べたりしながらでもいいですから、桜の語源に思いを馳せて、少しでも「さ」の神様に感謝の気持ちを差し上げてください。きっと運が開けますよ。何せ花見の元は「神行事」、神様も祝福してくださるに違いありません。古代日本語で、「神様が祝う」ことを「さ・いわい」と言うくらいですから。

あとがき
「桜」というと必ず思い出す原風景があります。
それは山形県酒田市から望んだ鳥海山の麓の桜。
父の実家に初めて行った小学三年生の時、いとこたちに連れられ、田んぼの脇の堰(せき)に遊びに行きました。
しばらく田舎道を歩き、「こっちが田んぼだ」と言って案内された場所に立つと、いきなりバーンと鳥海山が目に飛び込んできました。

五月初めの青空に薄紫色に浮かび上がる鳥海山は、頂上付近にはまだ白い雪が残り、威風堂々とそびえています。
何キロ先かは分かりませんが、ずーっと麓まで見渡す限り水田が続いていました。そのはるか彼方、水田と山麓とがぶつかる境に、東北の遅い春を待ち焦がれていたかのような満開の桜並木がえんえんと続いているのです。目を凝らすと、桜の根元に菜の花でしょうか、黄色い花が群れています。

玲瓏と澄み切った青空、雪を戴く鳥海山、ピンクの桜、黄色い菜の花、そして点在する木々の緑、田植えの予感をはらみつつ、鏡のように静かな水田・・・。

「わ~!!」
見たこともない絶景に、思わず叫んでしまいました。

そこへ、右手から蒸気機関車の黒い車体が長い客車を引き連れ、煙を吐きながら桜並木の前を通り過ぎていったのです。

絵のような光景でした。
今も忘れることができません。

鳥海山と桜。私が見た桜と水田はこんなものではありませんでした(笑)。
水を湛えた田が幾何学的に区切られていて、壮大なスケール感があり、
とても美しかったのを子供心に覚えています。

筆者紹介

 
本 名 田尻 成美 (たじり しげみ)
略 歴 著述家・株式会社エランビタール代表取締役
著書 「しあわせのコツ」(幻冬舎)
主な訳書「都市革命」(H・ルフェーブル著 晶文社)、
「空間と政治」(H・ルフェーブル著 晶文社)、
「文体論序説」(M・リファテール著 朝日出版社)
比較文化的視点から、日常の出来事をユーモアを交えて考察していきます。
著 書 「しあわせのコツ」(幻冬舎)



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