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横浜スケッチ(第26回) 個展、二人の先生

by staff on 2017/6/10, 土曜日

ペンネーム 成見 淳

今月8日に私の初めての個展が始まりました。

6月13日までですからまだ間に合うかも知れません。会場は横浜の山手234番館です。と書いたものの、原稿締め切り時点ではどんな雰囲気の展示になるか、どれくらいの方が見に来ていただけるか、初めてのことでまったくわかりません。画用紙に色を置いた時点でも、完全に乾くまでは仕上がり状態が分からない透明水彩画のようです。

今年の初個展は当初25点の出品予定でした。
しかし『一体何点出品可能なのだろう?正確に把握しておかなければ。』と気になり、他の方の展示方法を参考にしたり、図面上で配置をシミュレーションしたりして行くと40点展示可能と結論が出ました。隣室の展示スペースが思ったよりも有効でした。イーゼルも何個か使えそうです。

額を少しずつ買い足して部屋に並べて見るとだんだん欲が出て点数を増やすことにしました。

初めは「本当に25点揃うだろうか?」と不安でしたが、どんどん作品が仕上がって最後は絞り込むのに苦労したほどです。もちろん技量的には未熟な作品ばかりですが、現在のありのままの姿です。

油彩画3点、水彩画34点、賛助出品として次兄の能面1点、Facebookで知り合った瀬戸靖彦さんの写真2点、計40点を展示します。(ひょっとしたら追加も?)

そんな折、まだ今年の個展が始まる前の5月16日、急遽来年の個展が決まりました。2018年6月20日から26日、横浜そごう9階のギャラリー・ダダのB室です。

さて、今月号は個展の事と、二人の先生のお事を取り上げました。締め切りの関係で触れられなかったオランダの事も少しだけ。

 

5月15日(月)、個展に向けて額を買い足しに吉田町に行った帰り、ギャラリー・ダダで展示作品を見てから、「今日は?」と隣接の事務スペースを覗くと田中社長が。

そのまま「さようなら。」だけで帰るのも変なので「もう来年のスケジュールはいっぱいですよね?」と言うと、「いや、日にちによっては・・・。」とパソコンで調べてくれた。

「6月13日からと、20日からの週ならが空いていますよ。」

『おっと!展開が早すぎる!そんなつもりでは。』と思いながらも。

「実は、毎年鶴見高校の同期会が20日前後にあって、今年は山手234番館で抽選の結果個展の開催日と合わなかったのですが、20日からならGood Timingですねえ。」と、いずれはここで個展をやりたいという心の奥底がちらりと顔を出す。

「あ! でも20日からのA室は赤坂先生ですよ。」

「えー! それはさすがに引きますね。プロ中のプロとど素人では差があり過ぎる。取りあえず考えさせてください。返事はいつまでに? 長くは掛かりませんが。」(事実長くは掛からなかった。)

「いやあ。まだまだ大丈夫ですよ。」

エスカレーターで1階に降り、バスの中であれこれ考えていると、『待てよ!』という言葉と指をパチンと鳴らしている自分の姿が浮かんだ。

困難そうなこと、まず実現無理と思われること、常識的にはNoと思われること、などの障害(たいていの場合最大の障害は自分自身の気持ちであったりすることが多いのだが)に出合うと心の中で発する言葉、イメージである。

さらに最近は「これも終活」」「今あるチャンスを逃したらもうないと思え。」という強力な後押し言葉、決め言葉がある。たとえチャンスが回って来ても、その時自分はいないかもしれないのだから。

『B室が空いていたのは、プロの方でも隣の出品者が誰かが気になるのではないか? 赤坂先生と知って敬遠したのではないか? 自分は素人中の素人だし、販売目的の展示ではないから売れるか売れないは問題外。技量の比較自体がナンセンス。それよりも一週間同じ会場となるとお話しする機会も多いに違いない。原画を目の前にしてご指導いただけるかもしれない。これは滅多にない神様がくれた絶好のチャンス。先生の集客力のおこぼれも期待できるし。これって小判サメ効果?』

ためらう気持ちより楽観的な希望が勝った。

ここで再び『待てよ?』とネガティブ要因に注目。ここを押さえておかないと後でとんでもないしっぺ返しを食う羽目になる。ただし、ネガティブ要因がいくら大きくても諦めるというのは最後の最後の選択肢。どうやってそれを解決するか、別の良い方法はないかを考える。そのプロセスそのものが楽しみに変わって行く。

あれこれネガティブ要因と超越方法を考えながら、バスの中で大枠の考えはまとまっていた。

結論は勿論GO。

家に着いて家内に話すと予想通り「ちょっとねえ。常識的に賛成しかねますけど。」と、まだ2年しか習っていないし、技量的にまだまだ、赤坂先生に失礼ではないか、今習っている桝谷先生はどう思われるか、(両方の)生徒さんはどう思うか、などなどの問題点を指摘する。

いつもの我が家の必須なプロセスで、その中から面白いアイデアが出ることもある。

家内の懸念を残したまま結論は出た。両方の先生に事情を全部お話しして、了解を得られたらという前提でギャラリーに仮予約。5月15日20時頃、この間4時間。

早速赤坂先生に旅先のスペインにメールでご相談する。すぐに返事が来て「全然問題ありません。やはり描いた絵は見てもらう人数が大切!一緒にやりましょう。」とのお返事。

単なるOKだけでなく背中を押された気持ちになった。一気に視界が広がった。16日のことだった。

5月18日、桝谷先生のスケッチ会。田園調布の旧駅舎を描きに行く。天候は晴れなれども予報は午後から不安定、所により雷雨。デッサンを終え半分位彩色が終わった所で予報通り急に空が暗くなり、温度も低下。しばらくして遠くで雷鳴。彩色段階で失敗していたこともあり、真っ先に道具をしまって旧駅舎下に避難。間もなく雨が降って来たので、そこで先生の解説&講義。

講義が終わって雨宿りがてらにカフェに移動。雨は激しくなって来た。そして解散となり他の生徒さん達が帰った後、先生に相談。

昨年5月の赤坂先生の個展で衝撃を受け「自分の描きたい絵はこれだった!」と気が付いた事、早速先生のカタログを買い求めて手本として練習した事、9月に名古屋でワークショップがあるので参加しようかと迷ったが、私が翌日から半月ほど旅に出るので断念した事、帰国後ワークショップに参加し絵が変わった事、ペン彩画への関心薄らいだ事、などを率直にお話しさせていただいた。

ペン彩画はペンや鉛筆の線を生かした透明水彩スケッチ画で、1年間やってみてどうも自分には合わないような気がしていた。それは自分のせいなのだが、どうしても形にこだわり過ぎて色彩が従になり、塗り絵のようになってしまう傾向があった。線でなく色彩や明度の変化で形や線を表したい。そんな思いを漠然と持っていた時に赤坂先生の絵に出合った。

桝谷先生はじっと聞いてくれて、規定上ペン彩画でなくても何の問題もないこと、色々学んで自分の個性を磨くのは大切な事、複数の先生に習うのも問題ない事などをお話しいただいた。

「ただし。」として水陽会の出品規定を守る事(F4、風景画、透明水彩など。)、全然出席せずに作品だけ出品するのは困る事、以上は水陽会の展示会に出品するに際しての事項で、個人で他に出品したり描いたりすることは何の制約もない事と伺った。なお、規定ではないが、3点出品する場合出来るだけ1点は参加した絵として欲しいとの希望も伺った。

全部当然の事であり、全て納得が行った。これですっかり懸念事項は解消した。(F4サイズは野外スケッチに行く場合も便利だし、作品として展示したり部屋に飾ったりするのにも適している。個展のためにF4額を30枚以上買い込んでしまったのでこれからもF4が主体になるのは間違いない。出席しないのであれば習っているとは言えない。先生に習うだけでなく生徒仲間の話の中でヒントを得たり、刺激し合ったり出来るのも大きな魅力の一つ。)

桝谷先生とは「ヨコハマNOW」に私の「横浜スケッチ」の連載が決まった直後に、外交官の家の前で生徒さん達の絵を批講されている所に遭遇し、その作品の出来栄えと理論的で分かりやすい先生の教え方に魅了され、その場で先生を追いかけてお仲間に入れていただいた。

「横浜スケッチ」を連載することがなければお会いすることもなかったはずである。

私はそれまで基本的なことを習ったことはなく、ただ自己流で油絵を描いていた。水彩は油絵を描く前のメモのようなものだとさえ思っていた。

ところがやってみると水彩画は実に厄介で塗り直しが効かない。あらためて難しさを知るとともに、遠近法の基本的なことや空気遠近法を一から教えていただいた。色彩に気を回すようになったのはつい最近の事で、冗談に「昔から色事が苦手で、いまだに苦労しています。」と言っている。

水彩画は奥が深く、際限がない。お二人の話を重ね合わせて咀嚼するとより理解が深まる。

お二人とも心の広い先生で本当に良かった。

これまでもギャラリーには極力足を運ぶようにしていて、『これは!』と思った時は極力作者と思しき方に聞くようにしている。また、同じ質問をしている人がいたらそばで耳を立てている。たいていの場合は誰が作者か雰囲気で分かるものだ。そしてほとんど丁寧に教えていただける。画家とはそういうものらしい。そうやって覚えたことは貴重な財産になる(はず)。

二人の先生に限らず、自分にとって絵の先生は沢山いる。最近では徳田美枝さんという方の絵が素晴らしかった。植物画が多かったが色遣いの繊細さに目を見張り、長い事お話を伺った。初個展だそうで、先生かと思ったら「生徒です。誰も教えていません。」との事だった。

平澤薫さんという同年代の男性の先生の絵も、油絵的な雰囲気のある水彩画で大変参考になった。

逆に植物画を日本画の様に(自宅で育てているそうで)油彩で描かれている方にもお話を伺った。

こうして、会場でいただいた個展案内はがきは貴重な手本となっている。

ギャラリー・ダダは地の利が良く集客力抜群、自宅からも近くで便利。素晴らしい先生方にお会いすることが出来る。

 

さて、4月25日から5月1日までデンマーク、オランダを旅行して来た。目的はオランダのチューリップと風車の取材。デンマークもオランダもとても寒くて最高気温が10度あるいはそれ以下で日本の真冬並み。さらに風が強いので体感温度はもっと低い。おまけに晴れていても急に雨が降ってきたリすぐにやんだりして、スコットランドの気候に似ている。デンマークよりオランダの方が南にある分若干暖かいが大差はない。『こんなに寒くてチューリップは咲くのかなあ?』と思っていたら、「寒さのお陰でお花が長持ちしました。今がちょうど真っ盛りです。」ということだった。旅の前半はずっとはっきりしない天気だったが、4月29日土曜日は朝から快晴で絶好のチューリップ見物日和。土曜日ということもあり大変な人手が予想され、予定より朝早く出て正解。チューリップで埋め尽くされたキューケンホフ公園をじっくり堪能した。一方、風車は途中2か所くらいと園内の観光用のものしかなく、その代わり風力発電の大きな風車が沢山沢山見られた。同じ風車でも目的が違う。どうもこちらは絵になりにくい。

オランダは昨年9月、運河を描きたくて乗継の間を利用してアムステルダムのアンネの家の近くに一泊した。今回のアムステルダム市内はその時の何倍かの大混雑。そこを自転車が高速で走り抜けるので大変危険。目の前で観光客と思しき歩行者と激しく衝突するのを目にした。何とここでは人より自転車優先。その代わりどこでも自転車専用レーンが整備されている。また、自転車もサドルが高く日本人ではまず足が届かない。トイレ休憩の時に女性の自転車軍団がいたので、お願いしてまたがらせていただいたが足が届かない。男の平均身長は183センチとかで女性も背が高いうえに足が長い。高速で走っていて転んだら大けがするのは目に見えているから自転車優先も納得できるなあ。

 

旅行が入ったこともあり、今月号のスケッチは数少ない3点だけ。

「極楽浄土」水彩F4
取材地:キューケンコフ公園、オランダ

ツアー客の一人が「まあ!極楽浄土みたいね。」と言ったので、「行ったことあります? とても良い所ですよ。」などと冗談を言いながら『本当にその通りだ。』と納得。

「ここで絵筆を持ったまま眠るように絶命し、小船で向こう岸に渡って、時々画用紙や絵具を補給しに帰って来たり、会いたいと思う人にいつでも会えるよう自由に行き来出来たりしたら良いなあ。」と独り言。

そう考えていたら本当にそんな事が出来るような気がして来た。

「キューケンコフ公園2」

タイトルをどうしようか迷ったが良いのが見つからず平凡なものに。特に「2」がいけない。

2月から梅、菜の花、桜、チューリップと続いて、次は薔薇かな。横浜のイギリス館はちょうど見ごろ。土曜日ということもあり、とてもスケッチが出来るような状況ではなかった。

「初夏 えの木亭」
取材地:横浜市中区山手本通り
今回の個展会場山手234番館のお隣。季節は若葉に強い日差しの、ちょうど今頃。

筆者紹介

Jun Ohsawa 大澤 淳さん  
お名前 Jun Ohsawa 大澤 淳
E-mail j-narumi@ug.netyou.jp
URL http://home.netyou.jp/kk/ohsawa/
成年月日 1967年1月15日成人式。おひつじ座。いわゆる団塊の世代。誕生日はもっと前。
年齢 その年の西暦 - 1947(3月25日以降)
生息地 横浜市鶴見区に70年弱在住。いわゆる浜っ子。
血液型 いわゆる典型的なAB型
性格 内気、控えめ(だが信念は曲げない)、人前に出るのを極度に嫌う・・・だったが、 最近は少しずつ変わって来た。これもネット化のおかげかな。
割りと簡単に物事をはじめてしまう。(衝動的、意思決定が速い、好奇心が強い)。
忘れやすい。(最近特に)
趣味 ◎絵画:(主に水彩画)初めは油彩だったが10年近く休止していた。ヨコハマNOWのお陰で、2015年より主に水彩画を中心に絵画を再開した。
◎文章を書くこと(エッセイ、旅行記など)。
◎放浪の旅:国外国内を問わず、スケッチポイントを求めて心の洗濯に。(すぐに汚れやすいので。)
〇ゴルフ:1979年にホールインワンをしたことも。42年間通った神奈川県津久井湖ゴルフ倶楽部を2016年12月に退会。ハンディキャップは全盛期13だったが。
〇2015年急に作曲を始めたが半年もたたずに現在休止状態。
●フォルクローレ(アンデス音楽):ケーナ、サンポーニャ等も演奏したが、今はたまに聴くだけ。フォルクローレ(アンデス音楽、ケーナ、サンポーニャ演奏・・・だったが、今は極たまに聴くだけ。

 

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