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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第54回)

by staff on 2017/9/10, 日曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第54回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

藤井聡太四段は将棋界だけでなく世間で話題の15歳。子供の頃に遊んだ木のブロック玩具は注文が殺到しているとか。天才を育んだオモチャということでしょうか。これも素晴らしいことですが、一番興味深いのは “全国紙” を毎日20分~30分読んでいるとの報道に接した時。中でも、コラム “天声人語” が愛読欄だと知った時。新聞読みを強要されたとは考えられず、 “馬を水飲み場には連れていけるが、水まで飲ませられない” との箴言からすると、取り巻く環境が知的好奇心を育んだということですかね。米NYタイムズなどの有力紙は有料電子版の発行部数が紙媒体を超えるまでになっているとか。要因は分析・予測・コラムの記事の充実。米国の中核人材はしっかり新聞を読んでるんですね。藤井四段の自由自在ともいえる判断力の土台を支える風土・環境によるメンタリングの効力。AI時代のメンタリングのヒントが内包されているようです。梁塵秘抄では “清太が造りし御園生に苦瓜甘瓜の生れるかな 紅南瓜千々に枝させ生瓢 物な宣びそえぐ茄子” とあります。苦い瓜・甘い瓜など世の中何でもあり。 “人間を含むどんな動物も、子供時代の長さが脳の大きさや賢さと関係がある” と心理学者・ゴプニック。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

定年後八〇歳まで生きたら 自由時間は、定年まで働いた時間にほぼ匹敵する
貢献は誰もが望むはず 自分に限界を設けない 前頭前野は死ぬまで衰えない
五感に加え第六感、第七感まで動員 直観や感性も磨き続け、七五歳まで働く
スポーツの世界 アートだと考えて戦うのが世界へ繋がる道、と清水宏保選手

スケートの金メダリスト清水宏保選手は、練習を通じて “常識” の壁に次々と挑戦し、それを打破しながら成長を続けました。非常識と言われていたことでも結果を出せば常識に変わるとの信念。まさにアートとしてのスケートを創造したということができそうです。ビジネスもアートとしてとらえる必要性を示唆しているのかも。ドラッカーだけでなくピカソも尊重する視点。自分をぎりぎりまで追い込むことが必要で、そこまでいかないと人間の潜在能力は目覚めないということですか。ドラッカーが語り続けた “貢献” はビジネスだけでなくアート・スポーツでも焦点が合致。 “常識がなければプロになれず、常識外の一手が指せなければ一流にはなれない” と将棋永世名人・谷川浩司。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

どの分野でも 広義の設計能力が不十分であれば、淘汰は避けられない
変革の芽は、非主流や傍流の中にある 周辺事業こそが本業を強くする
組織は宇宙船地球号 乗客ではなく、全員がクルー 固定観念を捨てる
国や地域の枠組みに拘らない 陸・海・空を超えた共感のネットワーク

環境変化が激しい中、広義の設計能力が問われ始めています。従来の造形だけでなく、デザインの対象はあらゆるものに。革新・変革で大切なのは、適切に設定されたキーイシュー(核になる論点)による問題解決。日本を代表するプロダクトデザイナー深澤直人はこのような “デザイン思考” をけん引する米IDEO社の出身。シリコンバレーでは日々イノベーティブな挑戦が行われていますが、肝は論理を超越した直感的発想とユーザーの深層心理との新結合。それを促進するラピッド・プロトタイピング。核心は “絶対矛盾的自己同一” で、相反する二つの対立物をそのままにした状態で同一化すること。 “二つの行き過ぎ。理性を排除することと理性しか認めないこと” と哲学者・パスカル。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

内面では生存・関係性・成長の欲求をバランス 特に成長が一番肝腎
成長を実感すれば、更に次の成長につながる いいものに密に接する
もの事は簡素、新結合こそが革新 現在だけでなく過去・未来も観る
古典に親しむ 大地に張る根から養分を吸収する様、と画家東山魁夷

下総中山の法華経寺近くには画家・東山魁夷の記念館(住居跡)があります。真っ直ぐに伸びる道だけを描いた “道” は代表作。多層な “東山ブルー” は平明ながら深い精神性を備えています。戦争と家族の死に直面し、芸大の友人達が脚光を浴びる中、作品は評価されず失意の時期が続きました。転機は、手探りが続く中で “残照” が特選を受賞したこと。国立近代美術館で展示されるこの絵は、後の東山ブルーとは異なり、思いを抑制した土色を基調にしたもの。 “不遇の時代が長いほど、自分の中に蓄積されるものは大きい” との言は痛切。約10年をかけた奈良・唐招提寺御影堂障壁画 “黄山暁雲” は “充実した無の世界” を描いて圧巻。 “驕者不久・不驕者又不久” と武将・太田道灌。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(五)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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http://www.syplus.jp/ooura/

(第54回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(五)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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