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ちぎりおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり

by staff on 2017/9/10, 日曜日

♪ ちぎりおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり ♪


絵・千絵崇石
 

読み人:藤原 基俊(ふじわら の もととし)

現代語訳・・・私を頼っていいですよ、任せてください。と言って下さったので、そのお言葉の甘さを命として待っていましたがかなわぬまま 今年の秋も空しく過ぎて行きます。

この歌は 後朝の歌のように男女の恋歌スタイルをとっていますが。内情は全く違います。

和歌うたをうたっていて もどかしく思うことがあります。それは現代人にもダイレクトに意味が伝わる歌もあれば その当時の事がわからなければ全く意味がつかめない歌もあって、この歌もこの歌が作られた背景がわからないと ただの恋の歌となります。

まず させもが露 とはどういう意味なのか、調べてみると。
新古今集の中に清水観音様のご信託として歌が残されています。
♪ なほたのめ しめぢ河原のさせも草 わが世の中に あらんかぎりは ♪
現代語訳・どんなに辛いことがあろうとも 私が世にある限りは ひたすら信ずればよい。

この観音様の信託の歌を引用して 藤原基俊がお願いをした相手の男性が 「私を頼っていいですよ」と約束してくれた事柄がありましたが それが果たされなかった。

約束とは、作者基俊の息子の光覚が奈良の興福寺で行われる法会の中でも一番の大法会。
「維摩会」で講師を務める。事でした。その役どころを推薦してほしいと基俊はその頃 藤原氏の頂点にいた藤原忠通にお願いをしていたのです。そして忠道さんは調子よく、自分を頼っていいですよ、という意味でこの清水観音の歌の しめぢ河原のさせも草・・・と言って請け負ったわけです。ところが、今年の秋が来ても一向に息子の光覚に興福寺の方からお呼びがかからない。結局今年も彼の願いは聞き届けられなかったわけです。そこで・・まるで男女の後朝の歌のように彼は女性の歌としてこの歌を書いて藤原忠道さんに送ったそうです。恨みがましい歌でもあります。だから恋歌仕立てで送ったのでしょう。

この藤原基俊さん、プライドが高く学識を鼻にかけて 自分の歌のスタイル以外は批判が多かったので あまり周りの方々には好かれていませんでした。特に同時期に和歌の新しい風を吹かせていた源俊頼をライバル視して彼を批判していましたが、源俊頼が穏やかな人柄で人気があったため、ますます周りから敬遠されるようになってしまったとのこと。
ほかにも仲間からすごい意地悪をされているみたいで、ちょっとかわいそうな気もします。

和歌うたを通して古の歌人の人生なども良く知るようになりましたが、なぜこんなに出世とか栄枯盛衰などが具体的に昔の文献に残されているのか非常に興味深いところです。

日本人は崇高な倫理観や理想よりももっと世俗的な世界観を持っていたのかもしれません。もののあはれ という日本独自の世界観も、人間として悪と正義とか よい人間と悪い人、敵味方等 そのどちらも もののあはれに満ちているという観点であって、どちらが幸せでどちらが不幸せ、というような捉え方や人間としてはこうあるべき。という善悪の価値観とは全く異なる思考経路を感じます。最近巷で問題になっている事柄の中にも 権力への忖度によって自分の地位を上げてもらった人々を見て、その役処につい 可哀そう!とつぶやいてしまう自分がいて。もののあはれ という言葉の意味を実感する今日この頃です。

(早苗ネネ♪)

 

三十六歌仙CDアルバムによせて

 

10代の頃、じゅん&ネネのネネとして歌っていた時、多くの方から「北の政所のねね様と同じ名前ですね」と言われ、歴史上に残る方と同じ名前を頂いた事で直ぐに覚えて頂き、良い事が沢山ありました。時が経ち、50歳を過ぎた頃にやっと自分のライフワークを見つけ、「和歌うた」を歌い続けて13年程に成りますが2014年の京都高台寺音楽祭に出演させて頂いた折に、三十六歌仙が高台寺様に遺されているのを知りました。その時にぜひ三十六歌仙にメロディーを付けて同じ名前のねね様に奉納したいとの思いを抱き、2015年9月6日、ねね様のご命日に発表させて頂く事に成りました。

和歌のアルバムとしては10年ぶりでやっと二枚目アルバムです。一枚目のアルバム「花のいろは」は蟠龍寺スタジオの仲間に助けられて生まれました。そして今回のアルバムも製作費は今まで私の和歌うたを聞いて応援して下さった方々のご支援で賄われています。暗中模索と無我夢中で今までよろよろと歩いてきましたが、そんな私を支えてくれる大きな愛情に気が付いて、なんて幸せ者なのかしらと思います。有難うございます。これからも自分の道を信じて歩いてゆきます。

早苗ネネ/京都・高台寺 北の政所・ねねさまに捧げる三十六歌仙 『和歌うた』CDアルバムは、 ヨコハマNOWオンラインショップ で販売しております。

 

早苗ネネさん 和歌うたLIVE

 

早苗ネネさん プロフィール

木々や鳥や魚や精霊…人間以外の存在達との交流が当り前に語れるくらい、いのちのひろがりに気づくと、共に生きている喜びや、苦しみや悲しみにもナイーブになる。

心と野生がひとつながりになると……こんな風に人は年を重ねられる。ひとりひとり、ユニークにもっと自分になれる。

早苗 Nene さんは、そういう人生の先駆者です。 感性を解放しながら、40代で高校生に仲間入り卒業後、マウイのカレッジに留学中、突然半生記が受賞しました。

そんな新たなシーズンを迎えて、今エッセンスを分かち合いたい。

<天性の歌い手>というだけでなく、その存在感、溢れる活性のバイブレーションは、光のシャワーのよう。彼女と語り歌い、魂の成長を旅している現在の、自分の位置を確かめてみませんか?

早苗ネネさんHP

 

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