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月みれば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど

by staff on 2017/10/10, 火曜日

♪ 月みれば ちぢにものこそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど ♪


絵・千絵崇石
 

読み人:大江 千里(おおえ の ちさと)

現代語訳・・・秋の月を見ていると 様々な思いが心をよぎり 私だけのところに来た秋でもないのに 特別に悲しく思えてしまうほどです。

作者の大江千里さんがこの歌を詠まれたのは秋だとは思うのですが、古今和歌集に「是貞のみこの家の歌合せに読める」と書かれていて、文献によるとその歌合せは9月以前にあったともいわれています。したがって彼がイメージした秋がいつ頃の秋なのかはっきりしませんが、私は10月の夜空が好きなので今月の月として取り上げてみました。

朝晩がめっきり涼しくなって秋の到来をひしひしと感じるこの頃。さえわたった秋空に浮かぶ満月や新月、私の好きな三日月等 ゆっくりと見上げる余裕が生まれて、お月さまの鑑賞にはぴったりの季節になりました。

この歌は 現代語訳がいらないと、はじめは思っていましたが、後から付け加えました。いつも「和歌うた」をうたっていて 不思議に思うことがあります。私のように古文の文法などがわからなくてもダイレクトに伝わる歌があり、その反対に本当に古語となってしまってまったく理解できない歌もあり、その違いは何だろうと つい探してみたくなります。今でも使われている言葉と すでに死語となって意味不明の言葉と、時代の中でどうやって振り分けられてゆくのか。非常に興味深いところです。

詠み手の大江千里さんは漢学者でもあり「句題和歌」で歌集を(大江千里歌集)作りました。漢詩を翻訳してその上に自分の感覚を織り交ぜるのが句題和歌。特に中国の白楽天の詩は当時の貴族達がこぞって読んでいたそうです。それらを翻案にした和歌集を宇多天皇に献上しました。この10月の和歌もその「句題和歌」の方法で作られているそうです。

「大江千里歌集」の中で特に有名なのが 源氏物語でも取り上げられた おぼろ月夜をテーマにした和歌です。源氏物語の「花宴」の中で 美少女で不良少女が口ずさむうた。
♪ 照りもせず 曇りもはてぬ 春の夜の 朧月夜にしくものぞなき ♪
現代語訳・・・晴れるのでも曇るのでもなく 春のかすんだ朧月夜に敵う月夜などない。
オリジナル漢詩・・不明不暗隴隴月
意味・・明ならず暗ならず隴隴(ろうろう)たる月。

7文字の漢詩から踏み込んで、彼は自分独自の言葉を付け加えて めでたかりけると歌いました。(その後 似るものぞなき、しくものぞなき、と変わってゆきました。)

漢詩を読み解き、翻訳してそれを基に自分の言葉で新たに発展させて行く。
その才能たるや時代の寵児としか思えません。白楽天という偉大な詩人と、それを翻案として発展させた才能と言葉が、時空間を飛び越えて現代まで息づいているなんて素敵です。

彼の父親は大江音人。阿保親王と侍女との間に生まれた子供で大枝という所に養子に出されました。後に大江という名前を朝廷から賜り、代々優れた学者を沢山送り出しています。
また、阿保親王の3男と5男として生まれた在原行平や在原業平は大江千里の叔父さんに当たります。11月の次回はやはり紅葉の季節。大江千里の叔父さんで。昔も今も古典協議の中心に存在する 「伊勢物語」の作者と言われている在原業平の歌を紹介します。

(早苗ネネ♪)

 

三十六歌仙CDアルバムによせて

 

10代の頃、じゅん&ネネのネネとして歌っていた時、多くの方から「北の政所のねね様と同じ名前ですね」と言われ、歴史上に残る方と同じ名前を頂いた事で直ぐに覚えて頂き、良い事が沢山ありました。時が経ち、50歳を過ぎた頃にやっと自分のライフワークを見つけ、「和歌うた」を歌い続けて13年程に成りますが2014年の京都高台寺音楽祭に出演させて頂いた折に、三十六歌仙が高台寺様に遺されているのを知りました。その時にぜひ三十六歌仙にメロディーを付けて同じ名前のねね様に奉納したいとの思いを抱き、2015年9月6日、ねね様のご命日に発表させて頂く事に成りました。

和歌のアルバムとしては10年ぶりでやっと二枚目アルバムです。一枚目のアルバム「花のいろは」は蟠龍寺スタジオの仲間に助けられて生まれました。そして今回のアルバムも製作費は今まで私の和歌うたを聞いて応援して下さった方々のご支援で賄われています。暗中模索と無我夢中で今までよろよろと歩いてきましたが、そんな私を支えてくれる大きな愛情に気が付いて、なんて幸せ者なのかしらと思います。有難うございます。これからも自分の道を信じて歩いてゆきます。

早苗ネネ/京都・高台寺 北の政所・ねねさまに捧げる三十六歌仙 『和歌うた』CDアルバムは、 ヨコハマNOWオンラインショップ で販売しております。

 

早苗ネネさん 和歌うたLIVE

 

早苗ネネさん プロフィール

木々や鳥や魚や精霊…人間以外の存在達との交流が当り前に語れるくらい、いのちのひろがりに気づくと、共に生きている喜びや、苦しみや悲しみにもナイーブになる。

心と野生がひとつながりになると……こんな風に人は年を重ねられる。ひとりひとり、ユニークにもっと自分になれる。

早苗 Nene さんは、そういう人生の先駆者です。 感性を解放しながら、40代で高校生に仲間入り卒業後、マウイのカレッジに留学中、突然半生記が受賞しました。

そんな新たなシーズンを迎えて、今エッセンスを分かち合いたい。

<天性の歌い手>というだけでなく、その存在感、溢れる活性のバイブレーションは、光のシャワーのよう。彼女と語り歌い、魂の成長を旅している現在の、自分の位置を確かめてみませんか?

早苗ネネさんHP

 

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