Skip to content

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第55回)

by staff on 2017/10/10, 火曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第55回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

古代インドでは、一生を “学生期・家住期・林住期・遊行期” の四住期に分ける考え方がありました。AI時代は “学生期・家住期” を2度繰り返してから、短くても密度の高い “林住期・遊行期” をめざすことになるのかもしれません。米MITメディアラボは “Anti-disciplinary(アンチ専門分野主義)” を標榜し、世の中はあらゆるものが複雑・相互に繋がり、専門分野の中にいては、その分野の常識だけで誤判断する恐れがあり、イノベーションの機会を逃してしまうとみています。オックスフォード大学は、入口のところで多くの文献を読ませるかわりに、出口のところの論文や議論は主体性・独自性を求めるやり方。これからの “ものを考える基盤” 。日本の教育では入口をすっ飛ばして論文・議論に進むため、独自性までは無理なのかも。ならば従来型の “学生期・家住期” を繰り返すのではなく、中身を大胆に軌道修正する必要がありそう。 “何を学ぶのか・誰から学ぶのか・どのように学ぶのか” がキー。梁塵秘抄では、 “常に恋するは 空には織女流星 野辺には山鳥秋は鹿 流れの君達冬は鴛鴦” とあります。一度限りの生、思い切り生き抜く。 “忘栓(ぼうせん):目的と手段を取り違えぬように” と荘子。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

天才はすばらしいが、それでも力に限りはある しかし努力は無限
何を知るかでなく実現した価値で評価 大成は欠けるが如しという
感情に振り回され非難されてやっと一人前 振り子を思い切り振る
初心を貫くか、最初から下手な考えを起さないか、とスタンダール

スタンダールは “赤と黒” で有名なフランスの小説家で、ナポレオンの熱烈な崇拝者。 “赤と黒” の赤は軍服で黒は僧服。貴族社会の中で平民が世に出るチャンスは軍人か神父になるしかない時代。野心家の主人公ジュリアン・ソレルは、ナポレオン没落後の世界で神父の道での出世をめざし、最後は挫折してしまいました。スタンダールは “恋愛論” でも有名で “広く好かれれば好かれるほど深く好かれない” とご託宣。墓碑銘の “生きた 書いた 愛した” は有名ですね。 “初心を貫くか、最初から下手な考えを起さないか” のメッセージはベンチャーに挑戦する若者への贈り物。 “過去をより遠くまで振り返ることができれば、未来もそれだけ遠くまで見渡せる” と元英首相・ チャーチル。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

担当分野ごとに徹底した個別学習、その後で担当者が全員集合して統合化
コンクールは減点方式、規則に習熟して優勝 真剣勝負では数年後消える
戦争、徹底的に相手の嫌がることをする 日本は陸海軍が先で国を忘れた
仕事の信義に賭ける 賭博に熱中する厭世主義者はいない、と芥川龍之介

映画 “羅生門” は監督が黒澤明で三船敏郎・京マチ子などが出演した日本を代表する名画の一つ。殺人事件の関係者がそれぞれ食い違った証言をする姿を描き、人間のエゴイズムを追及しました。この原作は芥川龍之介の “藪の中” 。短編が得意で “鼻・杜子春・蜘蛛の糸” などは懐かしいですね。お墓は都立染井霊園に隣接する慈眼寺。芥川龍之介のお墓は他では見かけないサイコロ型の墓石で、本人が愛用した座布団を模したものだとか。数年前の桜の季節、霊園と慈眼寺におまいりしたことを思い出します。文芸春秋社主の親友・菊池寛が設けた芥川賞は、日本で代表的な文学賞に。 “すぐわかってもらえる実用的な言葉だけでは、複雑な日本社会は分析できない” と芥川賞作家・多和田葉子。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

一つの戦略に固執し、実現に突き進めば進むほど 戦略は硬直化していく
プロ将棋棋士 一つの局面で八〇通りの高い可能性から直感で三つに絞る
フィンランドは教育先進国 教える教育から学びの教育へ大きく舵をきる
高齢者でなく高齢社会のための情報センター そこで学ぶことがブランド

フィンランドは、国際学力テスト(PISA)で世界トップにもなった教育先進国。最近の調査では、 “英語・ICT教育・思考の整理法(マインドマップ)” の浸透度は相当なものだとか。コンセプトは “教える教育から学びの教育へ” 。柱の一つが読書。フィンランドの生徒の読書量は世界一。比較的休みが多いため読書時間を確保することが容易で、図書館も充実。読書は読解力を鍛え、読解力がないと問題をしっかり把握することが出来ず、適切な答えを導き出せないとの考え方。プログラミング教育をはじめとするICTスキルと読書の組合せはAI時代では強靭な新結合。 “その場で一流よりいい音が出せてもまだ二流。大事なのは、その音を出し続けることができること” と作曲家・久石譲。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(五)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

「ビジネス梁塵秘抄」購入ご希望の方はこちらからどうぞ!
http://www.syplus.jp/ooura/

(第55回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(五)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

Comments are closed.

ヨコハマNOW 動画

新横浜公園ランニングパークの紹介動画

 

ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
(動画をみる)

横浜中華街 市場通りの夕景

 

横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。
(動画をみる)

Page Top