ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第57回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第57回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
中学・高校は野球三昧でいつも腹ペコ。今も大食いで食べる話は大好き。最近は洋食と和食のコラボが進み、フレンチでは昆布・鰹のダシに柚子を添えて奥行きを演出するとか。柚子の泥臭さが肝で、レモンでは爽やかすぎるとの見立て。先日、知人と食事の折、店に掲げられていたのが “見蛇首 知長短” の額。蛇の首の高さで、蛇の長短を推し量るという意でしょうか。では “蛇の首” をどう特定するか。ビッグデータから抽出するにはどうするのか。例えば、顧客のビッグデータを単に分析するだけで可能なのか。顧客にはそれぞれ “背景・事情・意図” があるはず。それには顧客のストーリーを創出した上で “蛇の首” を抉り出すしかなさそう。能楽の世界の名人は “達者・上手” を超えるレベル。名人への到達には、日常の “知的好奇心” と “技術・スキル” の持続的練磨あるのみ。イチローや羽生棋士の生命線は “継続的学習” 。梁塵秘抄では “これより北には越の国 夏冬とも無き雪ぞ降る 駿河の国なる富士の高嶺にこそ 夜昼とも無く煙立て” とあります。越の国には白山、駿河の国には富士山。神とはケンカせず。 “人間が人間の基準で人間世界を考える時代は終わった” とメディアアーティスト・落合陽一。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
武者なら表情は理知的に 苦渋の君主は労わるように、が描く極意らしい
まずは精神力、次に身体 代表の選抜基準は技術が五〇%、残りは判断力
正確に蹴る シュート練習でなく正確な蹴りの繰り返し、と釜本邦茂選手
釜本邦茂選手は、日本を代表するサッカー選手の一人でJリーグができる前の日本サッカーのエース。1968年のメキシコオリンピックでは7得点を挙げて得点王に輝き、日本に銅メダルをもたらしました。自らのシュートについて “5割は右足。左足が3割で、頭が2割” と語っています。若い頃、プレースタイルに魅せられた名ストライカーのフィルム映像を繰返し見て分析。その分析から、シュートに至るまでの一連の動作が自身の動きより1つ少ない事に気づき、そこからシュートフォームを体得。そのスキル修得には “正確に蹴ること。シュート練習でなく正確な蹴りの繰り返し” との強固な基盤が前提。 “人としての優しさは大人の狡さと一緒にしか成長しない” と作家・三島由紀夫。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
好きな本を一冊抱えて人生を終える 丁度プラスマイナスゼロ
モノづくり 構想・企画からと用途・サービスからの両側目線
誰かの言葉で不快に感じるなら聞くに値する、とオルドリッジ
NBAは米国で大変な人気スポーツ。バスケットのファン人口は世界で5億人に近く、テニス・ゴルフ・野球ファンを大きく超えるといいます。バスケの殿堂・NYマジソンスクエアガーデンで見たNBAの試合は米国出張の貴重な宝物。オルドリッジはダラス出身のNBAスター選手で、身長211cm、体重111kgの巨漢。 “誰かの言葉で不快に感じるなら聞くに値する” とはスターとして見事な心構え。試合で戦う時間は短くて、自分と戦う時間はそれより更に長く、それが勝負を分けるとの透徹した判断。日本人初のNBA選手・田臥勇太も “他人に自分の限界を決めさせたくない” と不退転の覚悟。 “ある程度、人は楽観的になろうという姿勢を持たなくてはいけない” と作家・村上春樹。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
完璧な成功が不可能だからこそ 永遠の誓いが欠かせなくなる
素晴しいものは死とは隣り合わせ セリフも細部・語尾に宿る
激動・艱難に挑む 俺の誇りの前に立ち尽くせ、と詩人シラー
フランクフルトに出張の折、たまたま公園でシラーの銅像を見つけて感激。その昔、岩波文庫でシラーの “群盗” を読み、興奮のあまり深夜の道を歩き回ったことを思い出します。シラーはドイツの詩人・劇作家でゲーテと並ぶ存在。理想主義と自由を求める不屈の精神。代表作の ”群盗“ の執筆開始は18歳の時。疾風怒濤時代の理想に燃えた自由への希求と正義心。権力に反抗する崇高な犯罪者を主人公とした作品の上演は、観客に強烈な衝撃を与え、若者たちに熱烈に支持されました。詩人としてはベートーヴェンの交響曲第九番 “合唱” の原詞でも知られます。 “人生とはその時々に自然に変化し、移りゆくものです。変化に抵抗してはなりません。それは悲しみを招くだけです” と老子。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(五)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第57回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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