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船上のピアニスト 佐野仁哉さん

by staff on 2018/2/10, 土曜日

「『にっぽん丸』でピアノを弾いています。」と自己紹介されて、私はてっきりみなとみらいに係留されている帆船の「日本丸」だと思ってしまいました。 「ひらがなで “にっぽん” って書きます。みなとみらいのメモリアルパークに展示されている “日本丸” ではありません」と言われて、商船三井客船が運航する、22,472トン、全長166.6m、現役の外洋クルーズ船『にっぽん丸』だと分かり、興味深々、本物の「海の上のピアニスト」にお会いできたので少しテンションが上っています。

船上のピアニスト 佐野仁哉さん
佐野仁哉さん
(撮影、中村風詩人)
 
お名前 佐野 仁哉 (さの じんや)
お生まれ 昭和62年 水瓶座 横浜鶴見
お住まい 横浜市保土ヶ谷区
ご家族 両親
ご職業 ピアニスト
趣味 旅行 町歩き 神社巡り

 

ゴミ収集車が流すメロディをピアノで弾きたかったから

ピアノを習い始めたのは小学校3年生の頃です。最初からプロのピアニストを目指していた訳ではありませんでした。きっかけが面白いのです。家の近くにゴミ集積所があり、ゴミの収集車が来て作業中に流すあのメロディをピアノで弾きたくて「ピアノを習いたい」と言い出したのが始まりです。

初めてピアノを教えていただいた先生は、ピアノを嫌いにならないようにと、とにかく『ピアノを大好き』にさせてくれました。最初に演奏する事の楽しさを教えていただけたので、今日までピアノを続けることができたと思います。

恩師の金井信先生との出会いは中学生の頃です。 母がママさんコーラスに入っていてピアノ伴奏をされたのがご縁で、中学生のときから師事する機会をいただけました。人生の一番多感な頃に金井先生のピアノに出合い、非常に大きな衝撃をうけ今の私のピアノのスタイルが生まれたのだと思います。「尊敬する師匠のように弾きたい」という願望が強かったです。

自然から学んだこと

小さい頃は友達と一緒に遊ぶのは好きではなく、自然と親しむことが好きでした。祖父の家が長野の山にあり、冬休みにはスキーをしたり、夏休みに遊びに行くと畑仕事をしたり山を歩いたり、川で魚釣りをしたり、特に近くの牧場で馬の世話をする事が好きで、馬小屋を掃除したり、馬を洗ったりしながら馬に接していました。

高校の頃には馬術大会で障害物競技に出場した経験もあります。春休み、夏休み、連休にしか練習できない私は毎日乗る事ができないので、毎日練習ができる地元のライバルには勝つことができませんでした。それでも乗る馬が毎回違うことで、走る・曲がる・止まるといった単純な動作も、馬によって手綱や鐙の力具合が違うことを知り、動物にも個性があるのだという発見は驚きそのものでした。こうして馬とコミュニケーションを取る勉強はしたのですが、人との付き合い方は苦手でした。(笑)

ターニングポイントは東京湾納涼船

大学は工学院大学 工学部電気工学科に入学しました。 実はもともと家庭科が好きで、数学・物理・化学は好きな分野ではなく、なんとなく進学したのですが、大学での先輩との出会いが私を船の世界へと誘うきっかけになりました。

2年生の時に大学の先輩から「東京湾納涼船のキャンパスDJをしないか?」と紹介されました。東京湾納涼船は毎年夏に東海汽船が運航しています。東京湾の夜景を見ながら航行し、お酒や食べ物やイベントが楽しめるビアホールのような船で毎日1,000人以上のお客様が乗船されていました。その船内で大学生が『キャンパスDJ』としてラジオのパーソナリティのように話をしたり、船内各所でテレビ中継をしたりするというものです。とても困りました。とにかく『自然派』で『人と話しをすることが苦手』だった私が人前で、それも笑顔を絶やさずプロのアナウンサーのように話しをしなければならないわけです。せっかく紹介されたのだからとやってはみたものの、人の多さとイベントの大きさに圧倒され初回は表情はカチコチ、頭の中は真っ白。読んだはずの台本はすっかり忘れ、話はカミカミで何をどう話したかすら覚えておらず大失敗でした。

案の定、終了後にプロデューサーに呼ばれて「ダメ出し」をされ、細かい指導を受けました。(クビかなぁ?)と思いましたが、「予定は変えないから、また宜しくね」と言われて、注意や指導を受けることは改善する機会を与えられたことに気が付きました。
「途中で投げ出すことはしない」 「責任を持って絶対に満足いくように終わらせる」と心に誓いました。
厳しい方でしたが、人との繋がり方や仕事に対する姿勢をその方に学ぶことができました。と同時に、船の世界で仕事をする事、イベントの仕事でお客様を楽しませる事へ憧れを持つようになりました。今思えば、その方との出会いが私の人生のターニングポイントとなりました。

音楽家への道

これまでピアノをずっと続けてはいましたが、プロになる事は考えていませんでした。ところが大学4年の時に弱視になり、パソコンなど明るい物が見えづらく、休学する事になりました。ただ休んでいるのも時間がもったいないと思い、ずっと続けてきたピアノにもう一度真剣に取り組もうと考えました。そんなある時、とある音楽事務所がオーディションを開くことを知りました。及川音楽事務所といって、クラッシクの音楽家が所属する事務所でした。クラッシック音楽は楽譜から作曲家の意図を解釈し表現する再現芸術だと思いますが、私といえば映画音楽・歌謡曲・ポップスや合唱の伴奏が主体の、全く別のジャンルのピアノです。場違いだな・・・と思いつつ、せっかくの機会なのでオーディションを受けてみました。

結果は不合格でしたが、その後、何度か事務所主催のコンサートに出演する機会をいただき演奏経験を経て及川音楽事務所所属のピアニストにしていただきました。クラッシック演奏家が集まる中、ジャンルの違う私は現在でも異質ですね(笑)。
ちなみに、オーディションで演奏したのは平原綾香さんの歌でも有名になったホルストの『ジュピター』、今でも演奏する時はピアノに取り組もうと思った時の初心を思い出させてくれる、私にとって大事な曲です。

所属してから演奏する場所を求めていくうちに、船でピアノが弾きたいという思いが自然と込み上げてきました。船の世界で仕事をする事に憧れていた私は、客船ならイベントの仕事もできるしピアノも弾けると考えました。ただ、日本で『船の上のピアニスト』という募集はありませんでした。それならばと、ピアノの事は船に乗れた後に考えよう、どんな職でも良いからまず船の仕事を探そうと決意しました。

『客船』をキーワードに仕事を探していく中で、にっぽん丸のクルーズスタッフを募集していることを知りました。仕事内容には『カジノディーラー』とありましたが、未経験者歓迎とあったので受けてみることしました。そして『採用』となり「にっぽん丸」のクルーズスタッフとして働くことになりました。憧れていた船の世界の第一歩が始まりましたが、最初は『カジノディーラー』からスタートしたのです。

船の上のピアニスト

にっぽん丸は、海に浮かべたホテルのような客船です。クルーズスタッフの仕事はいくつもの仕事を兼務します。私の仕事はカジノディーラーはじめ、お客様の乗船受付やお見送り、船内イベントのMC(司会・進行)、時には寄港地でオプショナルツアーの添乗員など多岐にわたります。

念願の『船の上のピアニスト』としての最初の仕事は初乗船から間もなく、新しい船内イベントを考えている時に、私が伴奏してお客様が歌う『歌いましょう』というイベントを企画する事から始まりました。幸いにもそのイベントは好評で、今でも行っています。その後も演奏する機会をいただき、夜のバータイムやラウンジでの憩いの時間などで行いながら現在に至ります。

(撮影、中村風詩人)

にっぽん丸の仕事を始めてからというもの、1年の殆どを海の上で過ごします。日本一周クルーズや、外国へのクルーズ、ダンスやオペラ、コンサートなどイベントを目的とした1泊~2泊の短いクルーズ。クルーズとクルーズの間を利用した船上イベント、、、等。お客様をお迎えする準備、スタッフとしての様々な仕事、お帰りなるお客様を送り出し、また新しいお客様をお迎えする準備と、お客様は下船してもスタッフは様々な船の仕事があります。反省会や重要事項の申し伝えなど時間は忙しく過ぎていきます。

それでも休憩時間が取れた時は、寄港した所から近いローカルな場所に出掛けます。特に寄港地の街並みや神社を巡ることが好きで、お祭りや神社のお囃子や神楽はいいですね。

ところで陸酔いって経験ありますか? 船の上に長くいると上陸したときにフラフラして、まるで船酔いのようになってしまいます。しけの時に船の上でピアノを弾いたのですが、ピアノは固定してありましたが、椅子が動くので大変でした。そんなしけの時でも私は船酔いしませんでしたが、海から陸に上がると感覚がいつもおかしくなります。(笑)

クルーズスタッフ兼ピアニストとしての仕事は今年で8年目、スケジュールに穴を開けることなく続けました。ずっと続けていると「君のピアノが聴きたくて乗ってきたよ」と言ってくださるファンも出来ました。とても幸せなことです。お客様の中には結婚記念日や退職記念で乗船される方など様々です。 その中でどういった曲が好まれるのか、心の琴線に触れるのか等、お客様からいつも学ばせていただいてます。

ある映画音楽を演奏した後にお客様から「初めてのデートで見に行った映画だ、懐かしかったよ。」といった声をいただく事もあります。お客様との何気ない会話も、とても大事な事です。寄港地にちなんだ童謡を事前にチェックしたり、『瀬戸の花嫁』、『津軽海峡冬景色』、『ブルーライト・ヨコハマ』など航行する場所にあわせた曲を演奏する事も心がけています。

旅の思い出は、美しい景色と美味しい料理だけではありません。そこに音楽が流れていると気分が高揚します。そして何時か違った場所でその音楽(曲)を聴かれた時に、思い出という『旅』を楽しむことができると思います。

そして再び海へ

実は一度、海外の客船でピアノの演奏がしたいと思い2016年の4月に『にっぽん丸』を離れました。(今思えばそれは充電期間でした) 海外客船の求人情報を見ながら日々の練習はもちろん、サロンやコンサートホールで演奏会に出演したり、積極的に時間を作りバレエやミュージカル、クラッシク音楽を聴きに行きました。好きな町歩きもしました。

ところが2016年の年末に突然、スタッフが緊急下船するから来てくれないかと連絡が入り再びにっぽん丸に乗船しました。船の上で再会した顔馴染みのお客様は、私が戻ってきた事をご存知ありません。顔を見て「お化け」を見たかのように驚かれ、「またあなたのピアノが聴けるのね」と喜ばれてもいただきました。そんなお客様からのお声掛けもあって「船の上のピアニスト」としてにっぽん丸で再び働くことになりました。

※にっぽん丸のブログ:「かもめの課長」(http://www.nipponmaru.jp/blog/)では船旅の面白さと写真を掲載しています。是非ご覧になってください。

佐野さんにとって横浜はどんなところですか・・・

私にとっての横浜は、開港時いろいろな人がいろいろな文化を海から持ち込んだ港町というイメージです。そして、現在に至っては日本の文化を海外に向けて発信している日本の玄関のイメージです。海が世界を繋いでいます。その海で仕事が出来ることを誇りに思っています。

海が世界を繋いでいます

(文:高野慈子

 

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