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思ひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり

by staff on 2018/2/10, 土曜日

♪ 思ひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり ♪


絵・千絵崇石
 

読み人:藤原 敦頼(ふじわら の あつより)

現代語訳・・・恋に思いなやんで苦しいが、それでも私は死ぬこともなく生きている。でもこの苦しさに耐えられずに涙だけは流れ続けているなあ。

誰もが一度くらいは、失恋の痛手で涙が止まらなかったり、相手につれなくされて夜も眠れなかったり、恋煩いで激やせしたり、そんな体験があるとおもいます。

恋の病で死ぬことはありませんが、心の中は毎日苦しくて なんで突然こんなになってしまったのかしらと、生きているような実感があまりありません。特に相手の心が自分から離れて行ってしまう時の苦しさは本当に死んで

しまいそうな毎日を送ります。でも死なないんですよね。心は絶望で生きていられないくらい苦しいのに、日々は何ともなく過ぎてゆく。自分はこんなに苦しんでいるのに周りはいつもと変わらずに過ぎてゆく日常世界。

この苦しさは愛する人と死別した時にはもっと深刻です。自分の子供や夫だったらその嘆きはもっともっと深いと思うと言葉も出てきません。道因法師のこの歌も まるで血のような涙が傷ついた心から流れている状況なのでしょう。

私は男性が泣くのを、あまり見たことがありません。昨年帰天された私の恩師でもある平尾昌晃先生の作品の中に「瀬戸の花嫁」と言う歌があります。歌詞の中に 幼い弟が泣いているのを、男だったら泣いたりせずに、というくだりがあり、男はつらい時にも涙を見せない! と言うのが私にとっても、子供のころからの日本男子の定番でした。それが和歌を歌うようになり男性歌人の歌を沢山知れば知るほど 昔の男性は泣くことを恥ずかしいことだとか、いけない事とは全然思っていないのだと認識するようになりました。いったいいつごろから男は泣かなくなったのでしょうか? やはり武士の時代からかしら。

4人姉妹の末っ子として育った私は家庭の中で男性は父だけ。日常の中で男の人が泣くという場面を見たことがない私には、男性が涙を流すのはよっぽどの特別な状況で、まさか恋の痛手で女性と同じように涙を流すなんて、和歌の世界だけであって現代ではありえないと思っていました。それが昨年暮れに パソコンでだいぶ前にヒットして韓国映画ブームの火付け役となった「冬のソナタ」という映画を見ていて主役の男性が涙を流すシーンが沢山あり。カルチャーショックを受けました。あんなに男の人が劇中で涙を流すのを見たのは生まれて初めて。でもさすがです。とても自然に流れてくる涙で 男性だって泣いてもいいんだって思えました。 憂きにたへぬは 涙なりけり。とはこういうことだなと。

さて作者の道因法師は90歳以上の長生きをされた方です。エピソードを探してみるととても歌読みへの思いが強くて80歳くらいの時まで毎月 和歌の神様と信仰が篤い住吉大社に参拝し良い歌を詠ませて下さいと、お祈りしていたという事です。

彼の死後の話ですが、藤原定家のお父さんの藤原俊成が編纂した千載集には道因法師の歌が18首入っていました。ある晩 選者の藤原俊成の枕元に彼が現れて、涙ながらにお礼を伝えたので、藤原俊成はもう2首加えて20首にしたという話が残されています。

(早苗ネネ♪)

 

三十六歌仙CDアルバムによせて

 

10代の頃、じゅん&ネネのネネとして歌っていた時、多くの方から「北の政所のねね様と同じ名前ですね」と言われ、歴史上に残る方と同じ名前を頂いた事で直ぐに覚えて頂き、良い事が沢山ありました。時が経ち、50歳を過ぎた頃にやっと自分のライフワークを見つけ、「和歌うた」を歌い続けて13年程に成りますが2014年の京都高台寺音楽祭に出演させて頂いた折に、三十六歌仙が高台寺様に遺されているのを知りました。その時にぜひ三十六歌仙にメロディーを付けて同じ名前のねね様に奉納したいとの思いを抱き、2015年9月6日、ねね様のご命日に発表させて頂く事に成りました。

和歌のアルバムとしては10年ぶりでやっと二枚目アルバムです。一枚目のアルバム「花のいろは」は蟠龍寺スタジオの仲間に助けられて生まれました。そして今回のアルバムも製作費は今まで私の和歌うたを聞いて応援して下さった方々のご支援で賄われています。暗中模索と無我夢中で今までよろよろと歩いてきましたが、そんな私を支えてくれる大きな愛情に気が付いて、なんて幸せ者なのかしらと思います。有難うございます。これからも自分の道を信じて歩いてゆきます。

早苗ネネ/京都・高台寺 北の政所・ねねさまに捧げる三十六歌仙 『和歌うた』CDアルバムは、 ヨコハマNOWオンラインショップ で販売しております。

 

早苗ネネさん 和歌うたLIVE

 

早苗ネネさん プロフィール

木々や鳥や魚や精霊…人間以外の存在達との交流が当り前に語れるくらい、いのちのひろがりに気づくと、共に生きている喜びや、苦しみや悲しみにもナイーブになる。

心と野生がひとつながりになると……こんな風に人は年を重ねられる。ひとりひとり、ユニークにもっと自分になれる。

早苗 Nene さんは、そういう人生の先駆者です。 感性を解放しながら、40代で高校生に仲間入り卒業後、マウイのカレッジに留学中、突然半生記が受賞しました。

そんな新たなシーズンを迎えて、今エッセンスを分かち合いたい。

<天性の歌い手>というだけでなく、その存在感、溢れる活性のバイブレーションは、光のシャワーのよう。彼女と語り歌い、魂の成長を旅している現在の、自分の位置を確かめてみませんか?

早苗ネネさんHP

 

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ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
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横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。
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