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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第61回)

by staff on 2018/4/10, 火曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第61回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

イノベーションは “先天的な素質や能力を有する人間” だけのものではないはず。生物では、環境や訓練・学習によって獲得した形質は子孫には遺伝しないというのがこれまでの主流。 “獲得形質遺伝” に関する議論は今でも激しく行われています。ビジネスの世界では、環境への適応を乗り越えてたゆみなく能力を伸ばし、発展的な思考パターンを育み、協働して学び続ける性質は “後生遺伝” として組織の中で伝承していきたいもの。これが企業アーカイブの重要な論点。決め手は知識ベースの編集スキル。過去を学習し、新しい発想に結びつけ、環境変化に対応するための “言葉による仲介力” を鍛えること。AI時代は、逆説的に “言葉の達人” になることが求められそうですね。組織の後生遺伝として、人間とAIを融合する形での人間の再定義。未開の世界に挑む野生思考の道を持続的に探すこと。梁塵秘抄では “彼処に立てるは何人ぞ 稲荷の下の宮の大夫御息子か 真実の太郎なや 俄にあか月の兵士に付い差されて 残りの衆生達を平安に護れとて” とあります。従来のルールからは起こりえないことが起きる時代。 “自分の失敗を自分から語れる人は失敗から立ち直っている” と作詞家&放送作家・秋元康。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

批判ばかりする人が増えて困るとの意見が多くなっている
むしろ批判(議論)の質が低くなっていることこそが問題
質の高い批判を期待 コミュニティ・非物質的価値を重視
美意識も試行錯誤で生まれる多種多様なもの、と森村泰昌

森村泰昌は現代芸術家。ゴッホの肖像画に扮するセルフポートレイトで大きな話題を呼びました。それ以降、世に広く知られた西洋の名画(マネ・レンブラント・フェルメールなど)になりきることで “自画像的作品” を作り続けています。発想の爆発は終点ではなく出発点。吃驚するような夢を見る勇気こそ闘う力。絵の構成や背景への厳密な調査。美術作品との出会いは、見ること・創ることだけでなく、自分自身が美術作品に “なりきること” で更に深い世界へ。 “なりきること” で様々な発見につながり、それらを反映させることで作品を仕上げること。原画と似ているかより、どうオリジナリティを埋め込むか。 “私は文字の代わりに絵の形式で詩を書く” と画家&詩人・竹久夢二。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

ベストプラクティスからの教訓 業務改革は事業戦略とリンク
プロセスの評価基準を明確・オープン 知識が行動を誘発する
コミュニティの中でのコラボレーション プロセスに織り込む
実感がわくと本気になり逃げ場を断てば強靭、と松平康隆監督

松平康隆監督によるミュンヘン・オリンピックでの日本男子バレーボールの大逆転の金メダルは奇跡。東京オリンピックでは銅メダル、メキシコでは銀を獲得、次のミュンヘンでは何が何でも金メダルとの期待。強豪ソ連へのコーチ留学では、ソ連バレーを通じて日本のバレーをどう創りあげるかという課題。身体能力で上回る相手に向かうスポーツでのリベラル・アーツを開拓。 “時間差攻撃” “フライングレシーブ” が代表例。大きな方向性ときめ細かな実践。時代を反映する競技特性を徹底的に分析し、必要なことは何かを絞り込み妥協なくやる段取りを磨くこと。 “練習は100~120の力でやる。本番の試合では80で対応。練習で70~80は許されない” と一本足打法・王貞治。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

どの組織においても人財育成は焦眉の急 しかし、短期間ではダメで時間がかかる
キャリアを今の延長線におかないための楕円発想 統合技術/スキルへの重心移動
二一世紀の教養であるリベラル・アーツ重視 仕事を基盤にした高度専門性の研磨
大きな流れの読みと検証による洞察を鍛錬し続ける 余力を残せ、とは三原脩監督

三原脩監督といえば1958年の巨人との日本シリーズ。西鉄は3連敗後、第4戦以降は稲尾が連投し、4連勝して日本一に。選手の “調子” “ツキ” を見逃さず、周囲の予想を超える選手起用・戦術で1点差ゲームの多くを勝利へ。その後、大洋(現・横浜)の監督に。当時の大洋は万年最下位。そこでも選手起用が冴え、投の権藤正利・鈴木隆、打では近藤昭仁・鈴木武を起用。これらの選手を “超二流選手” と呼んで、巧みに組み合わせる采配。球団史上初のリーグ優勝へ導き、日本シリーズも完勝。一流を目指すのは大変でも超二流は手が届くかも。 “まだ首の皮一枚でつながっている” が口癖の勝負師。 “相手にとどめを刺してはいけません。もてあそぶことです” と社会学者・上野千鶴子。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(六)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第61回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(六)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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