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しあわせの「コツ」(第16回) 宇宙にひそむ「比率」と「かたち」

by staff on 2018/4/10, 火曜日

第16回 宇宙にひそむ「比率」と「かたち」

ミロのヴィーナスやモナ・リザを見て、人はなぜ美しいと感じるのでしょう?
また、何千年経っても崩れることのない堅牢なピラミッドの構造は、何に由来しているのでしょうか?

これらに共通していること、それは「黄金比」が用いられている、ということです。

黄金比とは、1:1.618の比率のことで、古代ギリシャのエウドクソス(紀元前408年頃~紀元前355年頃)が発見し、その後古代ギリシアの彫刻家であるペイディアス が初めてパルテノン神殿建設時に使ったと言われています。
1800年代に入ると人類が最も美しいと感じる比率として広く知れ渡り、「黄金比」と呼ばれるようになりました。ピラミッド、サグラダ・ファミリア、パルテノン神殿、ミロのヴィーナス、モナ・リザ、またレンブラントや、セザンヌ、ピカソ、ダリ等、有名な建築や芸術家の作品は、ほとんど黄金比で作られているといっても過言ではありません。

黄金比で描かれたモナ・リザの顔。
生え際から顎先までの寸法と顔の横幅の寸法が見事に黄金比を形成しています。

皆さんご存知のアップルのロゴにも、黄金比が用いられています。
アップル製品が世界中に広がっているのは、製品自体の性能やデザインだけでなく、誰もが美しいと感ずる黄金比でデザインされたロゴも一役買っているのかもしれませんね。

自然界にも、松ぼっくりや花びらの数、葉の生え方にも黄金比を見ることができます。はがきや名刺のサイズも黄金比が使われています。

黄金比をなす美しい自然の造形

では、黄金比が自然界に存在する唯一の美しい比率なのか、というと、そうでもありません。日本では昔から別の比率が使われていました。
法隆寺や延暦寺、金閣寺をはじめとする寺社建築は、白銀比と言われる比率1:1.414(1:√2)が使われているのです。

法隆寺もスカイツリーも、白銀比で建造されている
画像引用:http://www.bs-j.co.jp/off/backnumber/…

昔の大工さんが使っていた曲尺(かねじゃく)は、まさにその白銀比のための物差しで、「差し金」とも言います。表と裏に目盛があり、表は1:1の比率で刻まれており、裏は1:√2の比率で刻んであります。白銀比が当たり前に使われていたことが分かります。

曲尺。現在は特定の職人や日本建築専門の大工以外は使わないが、
昔の日本家屋はすべてこの物差しによって寸法が定められていた。

建築だけではありません。風呂敷、日の丸の国旗、折り紙、現代では紙のサイズのA4、B5も白銀比です。面白いことにドラえもん、ミッフィー、キティちゃん、サザエさん、くまのプーさん、アンパンマン、ちびまる子ちゃんなど人気キャラクターも、ほとんどが白銀比です。



キティちゃんの顔の横幅と縦幅の比率が1:1.414、
ドラえもんの身体の幅と身長の比率もやはり1:1.414の白銀比

デザイン的には黄金比が長方形なのに対し、白銀比はやや正方形に近く、人の顔で言えば、黄金比が面長なのに対して、白銀比は丸顔で「かわいい感じ」になります。だから人気キャラクターのデザインに使われているのでしょうね。
ちなみに、グーグルのロゴは白銀比でデザインされています。

Gからeまでの文字幅が、「検索」の枠の幅に収まるようにデザインされている。
文字幅を横線とし、文字の頭から「検索」の枠の下までの長さを縦線として長方形を作ると、
その比率は1:1.414(=√2になる。

幾何学図形研究家の秋山清氏は、日本古来からあるこの比率を、「大和比」と命名しました。氏はまた、黄金比、白銀比(大和比)は単に2次元上の比率ではなく、正多面体すなわち3次元の比率でもある、と述べています。その視点を入れると、驚くべきことが分かってきました。

秋山氏によると、「宇宙には究極の幾何学構造が7つあり、それらは必ず黄金比か大和比のどちらかだ」というのです。

1. 正4面体 大和比(白銀比)
2. 正6面体 大和比(白銀比)
3. 正8面体 大和比(白銀比)
4. 正12面体 黄金比
5. 正20面体 黄金比
6. ひし形12面体 大和比(白銀比)
7. ひし形30面体 黄金比

古代の人々は物事を平面だけで見ずに、常に立体的にとらえ、幾何学、数学、哲学、天文学などを発達させてきました。ですから、建物を作る時に、最も安定して、かつ最も美しい比率を探し求めていたのは当然のことです。

3次元の立体に黄金比や大和比(白銀比)があるということは、そもそも3次元である自然界にもその比率がある、という事にほかなりません。

その一例が、蜂の巣。断面で見ると蜂の巣は6角形の穴がびっしり並んでいるように見えますが、その一つ一つは6角柱になっており、蜂の住む小部屋になっています。驚くことに、この小部屋がすべて白銀比(大和比)を基準にした「ひし形12面体」構造になっているのです。蜂たちは何と法隆寺や金閣寺と同じ比率でできた「日本建築」に住んでいるのですね(笑)。

大和比で出来ている蜂の巣

蜂の巣だけではありません。

実はDNAにも白銀比(大和比)があります。ノーベル賞を受賞したワトソン・クリック両博士の研究により、二重らせん構造の中の一部の分子構造は不斉炭素原子を中心とした正四面体、つまり、まぎれもなく1:√2の白銀比(大和比)で形成されていることが分かっています。

さらに、大脳研究の第一人者、養老孟司氏は著書『唯脳論』のなかで、次のような指摘をされています。

「(大脳)皮質を蜂の巣状と見ることも可能である。蜂の子を入れる個々の単位は大脳皮質ではコラム構造と呼ばれる。(中略)機能的には、これを情報処理の素子とみなすことができる」

大脳皮質も蜂の巣と同じ「ひし形12面構造」を形成している、というのですから驚きですね。さらに、小腸の絨毛、血液、血管、肝臓の細胞を拡大してみると、「ひし形12面体」の特徴である6角柱の連続体が見られることが明らかになっています。研究が進めば、人体の他の組織細胞にも白銀比(大和比)が見出せるのではないでしょうか。

小腸の絨毛とその栄養細胞の拡大図
秋山清著「神の図形」p.66

面白いことに、人体の細胞は白銀比(大和比)なのですが、インフルエンザウイルス、エイズウイルスなどのウイルス群の多くは正20面体の黄金比を形成しているそうです。同じ多面体でも、ひし形12面体の人体の細胞より、正20面体のウイルスの方が何となく強そうな気がしますね。ウイルスの強靭な生命力と感染力の秘密はこの辺にあるかもしれません。

さて、このように人体に限らず、森羅万象に多面体構造と黄金比・白銀比が潜んでいるということは、一体何を意味するのでしょうか? 19世紀の教育家フレーベルは次のように言っています。「我々の生命活動にかかわる宇宙や自然界のもろもろの事象を細密に分析してみると、その構造の中心には必ずと言っていいほど正多面体と言う形が介在し、見え隠れしている。」

フリードリッヒ・フレーベル、ドイツの教育家。
世界で初めて幼稚園を作った。

正多面体と黄金比、そして白銀比(大和比)。これらは宇宙の基本的な構造なのでしょうか?古代では幾何学が重んじられていましたが、それは多面体構造であるこの宇宙を解明するためだったかもしれませんね。正多面体と二つの特権的な比率の存在は、まだまだ解明の途上です。

でも、考えてみませんか。人体の細胞に正多面体があるならば、病気の細胞は多面体構造が歪んでいるでしょうから、そのゆがみを正すだけで病気が治るかもしれないのです。また、マーケティングでも、黄金比や白銀比を積極的に使った商品は好感度が高く、ヒットの可能性が高まるに違いありません。

私たちはこれを発見した偉大な先人たちに感謝すると同時に、どうやら宇宙にあまねく存在するこの多面体と黄金比・白銀比(大和比)を使いこなすことから始めるしかないようですね。

左:黄金比で作られたパルテノン神殿 / 右:白銀比で作られた法隆寺

筆者紹介

 
本 名 田尻 成美 (たじり しげみ)
略 歴 著述家・株式会社エランビタール代表取締役
著書 「しあわせのコツ」(幻冬舎)
主な訳書「都市革命」(H・ルフェーブル著 晶文社)、
「空間と政治」(H・ルフェーブル著 晶文社)、
「文体論序説」(M・リファテール著 朝日出版社)
比較文化的視点から、日常の出来事をユーモアを交えて考察していきます。
著 書 「しあわせのコツ」(幻冬舎)



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