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しあわせの「コツ」(第20回) 夏こそ、着物を。「まなざしの美学」とともに

by staff on 2018/8/10, 金曜日

第20回 夏こそ、着物を。「まなざしの美学」とともに

涼しい顔で街歩きする舞妓さん

暑い日が続きます。こんなに暑いとTシャツと短パンで出勤したくなりますね。
着物好きの人でも、「夏は暑くて」と着ない方がいますが、反対に「夏の着物が大好き」と言う方もいます。そういう方はお洒落の上級者なのでしょう。

夏の着物を敬遠する理由の一つは「汗」。背中は言うに及ばず、額や鼻の頭から汗がダラダラでは、せっかくのお洒落が台無しですし、見る方も暑苦しくなってしまいます。でも、舞妓さん達は、暑い京都の夏にあの重装備で涼しい顔をして街を歩いています。
なぜでしょう? もちろん、訓練もあるかもしれません。でも、それだけではないのです。

これには「半側発汗」という科学的な根拠があります。

「半側発汗」とは、皮膚圧反射を利用した、上半身の汗を抑える最も効果的な方法のひとつです。体の片側に圧を加えると、反対の片側だけが発汗するという原理を利用したものです。方法は簡単。両脇の下、第六肋骨あたりから胸周辺を強めに圧迫すれば、上半身の汗がかきにくくなるのです。

芸妓さんや舞妓さんが胸高に帯を締めて夏でも涼しい顔をしているのは、この原理を応用しているのです。上半身を締め上げ、顔の汗を抑えることで化粧崩れも防げるという訳です。この原理を意識するかしないかで、汗のかき方に大きな差が出るのは言うまでもありません。

着物は日本の民族衣装ですが、単に身にまとう「衣装」であるにとどまらず、色々な「美学」が詰まっています。今回はそこに少しだけ触れてみることにしましょう。

夏の着物と言えば、絽と紗が浮かびますね。

絽は縦糸数本おきに横糸を捩じって隙間を作りながら織り上げていきます。
紗は二本の縦糸で横糸一本ずつをからめて織り上げていくので、絽よりも透け感がありますが、着物の格としては絽の方が上だそうです。

 
絽の生地   紗の生地

この透ける着物は、炎天下で出会うと眼福ともいえる格調高い涼感を感じさせます。しかし、いくら「半側発汗」を活用しているとはいえ、浴衣と違い長襦袢の上に重ねて着ているのですから、暑いことには変わりがありません。もっと涼しく着る工夫もあるのではないかと思ってしまいますが、そこには自分の着心地より、見る人の目をもてなす「まなざしの美学」が感じられないでしょうか?

 
桜の季節にほんの少しだけ先駆けて桜をあしらった着物を着る。秋の気配が感じ始めると紅葉模様の帯を締めてみる。-こうした着物のお洒落にも、「まなざしの美学」が現れています。
桜模様の着物生地   紅葉柄の帯地

「まなざしの美学」では、「装い」とは相手に見られることによって、相手の視線上で完成します。相手の脳内に自分が思った通りのイメージが届けられたとき、その装いは成功したといえるのです。

日本人がキンキラのいわゆる成金趣味を嫌うのは、そこに他者のまなざしへの配慮がないからです。自分が着たいもの、見せびらかしたいものだけをまとっても、そこには「着る者」と「見る者」の感性でのコミュニケーションがありません。ましてや、「まなざしをもてなす」などというセンスは皆目感じられず、単なる「自己主張」にしか映りません。

前回のコラムで触れたように、あらゆる関係は「対生成」であると意識の深いところで了解している日本人にとって、ファッションの領域でも相手がどう思うか、相手にどういう印象を与えるかが、とても重要なことなのです。これは「主体性がない」ということではなく、日本的な認識構造では相手がいて初めて物事が成り立つので、相手のまなざしを意識することは当然のことなのです。

ですから、たとえ高価な着物をまとっても、あまりに場違いだったり、これみよがしだったりすると、それは「みっともない」格好といわれるのです。「みっともない」とは「見とうもない」からきています。相手のまなざしに不快感を与えるものは、相手が「見たくもない」のです。それが装いをはじめ、行動を評価するときの判断基準の一つになっているのが面白いですね。

最近、花火大会など夏のイベントで若い人たちが着物を着て参加する姿をよく見かけるようになりました。浴衣姿のカップルが肩を並べている様は微笑ましいものですが、浴衣が単なるイベント用のコスチュームに終わることなく、着物に秘められた美学とともに再び生活に根付いて欲しいと思うこの頃です。

なぜなら、日本では「まなざしの美学」こそが、究極のドレスコードなのですから。

筆者紹介

 
本 名 田尻 成美 (たじり しげみ)
略 歴 著述家・株式会社エランビタール代表取締役
著書 「しあわせのコツ」(幻冬舎)
主な訳書「都市革命」(H・ルフェーブル著 晶文社)、
「空間と政治」(H・ルフェーブル著 晶文社)、
「文体論序説」(M・リファテール著 朝日出版社)
比較文化的視点から、日常の出来事をユーモアを交えて考察していきます。
著 書 「しあわせのコツ」(幻冬舎)



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