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しあわせの「コツ」(第24回) 「何のために?」と自問してみる

by staff on 2018/12/10, 月曜日

第24回 「何のために?」と自問してみる

人はなぜ集団を作るのでしょうか?
かつて縄文の人たちは、当たり前のようにこう考えていました。 個々人では対応できない共通の課題にともに取り組み、解決していくためだ、と。 ですから、縄文人から見れば、目的もなくただ群れているだけの集まりは「集団」とはいえないのです。

大多数の学校で「いじめ」が横行しているのも、現代の私たちが作る集団が、「縄文的な意味での集団」とはかけ離れているせいもあるのではないでしょうか?

資格があれば便利だから、あるいは親が言うから、という程度の目的ともいえない目的を持った人々の群れには、「共通の課題に取り組み、解決するためにともに戦う仲間」という「集団」の姿はありません。 それは「共通のターゲットである個人を攻撃するために、ともに群れる仲間」といういびつな集まりとなり、具体的には「いじめ」として現れるようになります。

どういうこと? と思われるかもしれませんね。
では、ちょっと考えてみてください。 日本を良くしようという使命感に燃えた青年たちが集まった松下村塾で、はたして「いじめ」はあったのでしょうか?

調べてみたわけではありませんが、現代のような陰湿かつ深刻な「いじめ」はなかったと思います。 その訳は、松下村塾が優れた指導者の下、自分たちが果たすべき役割についてはっきりした自覚を持っていた青年たちの集まりだったからに他なりません。

世界遺産になっている松下村塾

共通の目的や課題を持つ人々の集まりは、その達成に向かってベクトルと化します。「運動体」と言ってもいいでしょう。それが縄文人にとっての「集団」だったのです。

縄文人の「集団」は、「課題解決型の仲間の集まり」ですので、西洋のようなきっちりした階層やカリスマ的な指導者がいません。 大体10人から50人くらいで集団を形成し、最大でも500人ほどの集団だったようです。

そういう集団にも、もちろんリーダーはいますが、権力者として他の人々の上に君臨したり、支配したのではありません。 もともと平等な人々がフラットな状態で集まり、課題解決のために、その時々にふさわしい人が合議でリーダーに選ばれます。 その他の役割も、集まった人々の中から選ばれます。

それも必ずしも「適材適所」という訳ではありません。 時には苦手な役が回ってくることもあるでしょう。 それでも周囲に助けられながら、なんとかお役をこなしてしまうのが、縄文に根差した日本的組織でよくある話です。 この点は、優秀な能力を持つ少数の指導者が無知な大衆を統治する西洋型の組織と大きく異なります。

ところで、なぜその道のプロフェッショナルでもないのに、日本人は与えられた役目を卒なくこなせるのでしょうか? そんな日本人の資質を、私は勝手に「iPS細胞」のようだ、と思っています。

元の細胞は同じでも、血液の役割を与えれば血液に、皮膚の役割を与えれば皮膚になります。細胞は自分から「皮膚になりたい!」と選んだわけではないのです。でも、与えられた役目をきちんとこなしていきます。 この受動的な役割分担をこなせるのは、細胞自身に初めからどの役割にも耐えうるだけのポテンシャルが備わっていたからではないでしょうか?

細胞の中に、様々な能力がいわばアイドリング状態で待機しており、ひとたび役割が与えられると、その役割達成に適した能力が一挙にブーストしていくのだと思います。

万能細胞のiPS細胞

iPS細胞のように、無限の可能性を秘めながら、共通の目的(ここでは「生命活動」)のために与えられた役割に向かって自己を組織化していくー ここに、争いのない生き生きした「集団」の一つのモデルがあるような気がします。

現在、様々な組織で、いじめやパワハラ、モラハラ等々○○ハラが横行していますが、それは「共通の目的のためにともに戦う仲間」という「集団」本来の在り方が失われてしまったからではないでしょうか?

目的を共有すべき集団が目的を喪失したとき、戦うターゲットは集団の外部ではなく、内部に求められていきます。 これが、現代社会の「いじめ」や「○○ハラ」の淵源です。 ですから、組織や規則をいじっても「いじめ」や「○○ハラ」が解決することはないでしょう。 まず、個々人が「自分は何をしたいのか?」「何のために学校(会社)に行くのか?」をとことん自分に問い詰めることから始めなければいけません。

学生時代、大野盛雄さんの「アフガニスタンの農村からー比較文化の視点と方向」(岩波新書)を読んだ時のことです。

詳しい内容は忘れてしまったのですが、とても印象に残っている部分があります。
それは、大野さん一行が「稲作の起源」を調査する過程で、アフガニスタンの辺鄙な農村にやってきた時のことでした。大野さんが稲作の起源について訊き始めると、農民が怪訝そうな顔をしてこう言ったのです。

「ツ・パイダ(なんのために)?」

別の農村で聞いても同じでした。やはり「ツ・パイダ?」が返ってくるのです。 「何のために?」−確かに、自分は何のために「稲作の起源」を探しているのだろう、と大野さんは自問します。 それは日本では考えたこともない問題でした。

アフガニスタンの農民にとって、「いつ頃から稲作がはじまったか」などという問題は、稲の収穫と全く関係のない問題で、考えたこともないでしょう。 大野さんは「ツ・パイダ」を前に、自分たちの研究が「本当に何のためにしているのだろう?」と考え込んでしまうのでした。

「ツ・パイダ(何のために)?」−この問いは、私にとっても一つの呪縛となりました。

当時の私は目的論的な行動は好きではありませんでしたが、年齢を重ねるに従い、「何のために」という問いとそれに答えようとする意識が、自分の精神の軸になることに気が付きました。 「何のために?」という問いに答えを出せる行動には、ぶれがないのです。

「何のために?」は不思議な言葉です。 自分をむき出しにさせる問いです。
例えば、誰かをいじめたくなったとき、「何のために?」と自問してみてください。その答えを出してみましょう。「なんとなくむかつくから」は答えになりませんよ(笑)。

今、吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」がベストセラーになっています。私も中学時代に読んだ記憶がありますが、80年以上前に出版された本が今また注目されているのは、それだけ人々が「何のために?」を見失っており、その答えを懸命に探し求めているからに他なりません。

個人でも集団でも、「何のために?」という問いに明確な答えを出せるところには、「いじめ」や「○○ハラ」が生まれる余地はないのではないでしょうか?

筆者紹介

 
本 名 田尻 成美 (たじり しげみ)
略 歴 著述家・株式会社エランビタール代表取締役
著書 「しあわせのコツ」(幻冬舎)
主な訳書「都市革命」(H・ルフェーブル著 晶文社)、
「空間と政治」(H・ルフェーブル著 晶文社)、
「文体論序説」(M・リファテール著 朝日出版社)
比較文化的視点から、日常の出来事をユーモアを交えて考察していきます。
著 書 「しあわせのコツ」(幻冬舎)



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