ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第71回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第71回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
縄文時代が始まったのは約13000年前。狩猟・漁労を行っていた縄文人が暮らしの中で創り出した道具類は生命力に溢れています。日本文化の原点として、よく “わび・さび” が語られますが、縄文土器・土偶に潜む “逞しさ・強靭さ” ももう一つの日本文化。迫力・弾力性が感じられ共生と循環を内包。自然環境を認識し、その利用技術は極めて高度。芸術家・岡本太郎は縄文土器に出会い、燃える思いを1952年の美術誌に “縄文土器論” として発表。それが1970年の大阪万博の “太陽の塔” に繋がりました。縄文土器・土偶は上野の国立博物館でしばしば観ることができます。昨年開催された “縄文(JOMON)特別展:35万人動員” では日本列島の様々な地域で発掘された土器・土偶が一堂に。 “縄文のビーナス・縄文の女神・火焔型土器” など国宝全6点も集合。現在のデザインの枠組みでは捉えきれない奔放さ・純粋さ・機能美。これぞAI時代の基本理念かも。境界線を捨て、常識に囚われず、人間っぽさたっぷり。梁塵秘抄では “常に恋するは 空には織女流星 野辺には山鳥秋は鹿 流れの君達冬は鴛鴦” とあります。炎を燃やして思い切り生きる。 “今しかできない努力というものがある” と脚本家・倉本聰。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
葛藤・洒脱の果て 心身ともに一番の充実期は九〇歳と老画家
効率良ければ納得 一方で、無駄と感じる時間も意外と得難い
辛くても5年はやる、3年の後の2年が大切、と女優清川虹子
清川虹子は女優として、喜劇だけでなく人情ものでも存在感。戦前には俳優マーロン・ブランドとも共演。また、歌手・江利チエミの母親代わりとしても有名でした。晩年は芸能界の世話役を任じ、若手の歌手や俳優を励まし続けました。後年ビッグ・ネームになった歌手や俳優も世に出るまでは挫折の連続。多くの若手が挫折しかけた時の応援歌が “辛くても5年はやること。3年の後の2年が大切よ” の言葉。よく石の上にも3年といいますが、現実は石の上にも5年というのが、経営コンサルタントとして悪戦苦闘した私の実感。AI時代もそこは変わらないはず。雌伏といわれる期間も後々には強力な武器に。 “科学的分析だけでは今も1000年前の勘には勝てない” と写真家・杉本博司。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
制度としての家族は一面 逆に生物学的男女関係がぼやける恐れ
サラリーマン根性は死語 損得を超えたライフワークを意識する
自ら道を切り開いた人間 目標の確認・行動の修正・成功の体感
高度成長時代のサラリーマンは、大きな流れに身を任せながら頭脳よりは体力。儲かる事業と儲からない事業の見える化には無頓着で、仕事の重複・繰り返しを解消する標準化にも無関心。市場ニーズを各部門に繋ぐといいながら実質は顧客の言いなり。 “腕を斬られたら噛みついて倒す・首を斬られたら化けて出る” という精神論。しかし、今後はアイデンティティの再創造に向けて、境界を破壊していく革命へ。 “実践・理論・道楽” を生き様に。夢を仕事にして仕事に夢をもつのがAI時代のビジネスパーソン。AIで市場を征服するというより市場の深淵を探索。 “人間は遊びながら働く生き物。善事を行いつつ知らぬうちに悪事をやる。悪事を働きつつ善事を楽しむ” と作家・池波正太郎。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
多様な情報・知識が関連付けられて構造化、見える化される
失うものは何もない、守るものなど何もない ただ色即是空
文化は比較できる量でなく比較できない質、とラードブルフ
“文化は比較できる量ではなく比較できない質である” と書いたのはドイツの法哲学者・ラードブルフ。多様な価値の共存を秩序づける原理について研究。AI時代は “間違いを犯す自由” が何よりも大事。 “カオス” が定常化しつつありますが、これも一つの構造として受けとめる。整然たる構造こそかえって脆弱で危険かも。 “老い” もまたカオス。 “時代遅れの中の鮮烈・衰退の中での雅味” がこれからの突破口。考えることも行動することも自由。重要なのは “やりたいことを愛する・貫く”ということ。人生は“見る・聞く・試みる”のワンセット。試みるまでやってなんぼ。 “音楽家が楽器の音色と強さを選ぶように、画家は自分にぴったりする強さと深さで色を選ぶ” と画家・マティス。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(八)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第71回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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