Skip to content

書評「自分の花を咲かせよう ~祈りの詩人 坂村真民の風光」 PHP研究所 神渡良平(著)

by staff on 2019/4/10, 水曜日
 
タイトル 自分の花を咲かせよう ~祈りの詩人 坂村真民の風光
単行本 254ページ
出版社 PHP研究所(2017/5/23)
ISBN-10 4569838022
ISBN-13 978-4569838021
発売日 2017/5/23
購入 自分の花を咲かせよう ~祈りの詩人 坂村真民の風光

「一人でもいい。わたしの詩を読んで生きる力を得て下さったら・・・」カバーの真民さんの言葉です。プロローグで神渡さんは書いておられる。「坂村真民先生の詩に魅せられて、松山市郊外のタンポポ堂にはじめて訪ねたのは、24年前の平成五年二月のことでした。八四歳になる真民先生はすっかり枯れきっておられ、透明な早春の空気のように澄みきっておられました。」神渡さんが坂村真民さんの評伝を書かれた。書店でその本が目にとまったときに嬉しかった。嬉しくて・・・・・。

「暁天に祈る詩人」のところで
円覚寺の横田南嶺管長は真民さんの詩は、宗教的境地の披瀝だと言われ、随筆集「巡り合いの不思議」に書かれている真民さんの言葉を紹介されます。「もしもわたしの詩が、他の人の詩と、どこか違うものを持っているとすれば、一番電圧の強い未明混沌の刻に招喚起床して、霊に守られ、愛の電流を受けているからであろう。せっかく人間に生まれてきて、この尊いありがたい愛の電流を知ろうともせず終わる人のなんと多いことか。思えば早く父を失って不幸不運な人生を送ってきたが、そのためわたしは霊を受信する得難い心をいただいた。感謝でいっぱいである。」

「悟り」 真民
  悟りとは
  自分の花を
  咲かせることだ
  どんな小さい
  花でもいい
  誰のものでもない
  独自の花を
  咲かせることだ

横田南嶺さんは東日本大震災の被災者への法話にはいつも「二度とない人生だから」を朗読してから話をされているそうです。

「二度とない人生だから」 真民
  二度とない人生だから
  一輪の花にも
  無限の愛を
  そそいでゆこう
    一羽の鳥の声にも
    無心の耳を
    かたむけて
    ゆこう

「スポーツ指導者が捉えた真民さんの詩」のところで
柔道の山下さんのお話があります。出版社から「山下泰裕さんが大部数お買い上げくださいました」と著者の神渡さんに電話が入ったのです。「下坐に生きる」に序文を書いてくださり、帯に推薦の言葉をかいてくださったのが真民さんでした。この本をみんなにすすめている理由を、山下さんはつぎのように説明されています。「私の目を開いてくれたのは、自閉症の次男でした。外では柔道の指導にあけくれていましたが、一歩家庭に入ると、家内が次男の子育てに奮闘していました。思いやり、理解し、共感し、支え合わなければ、一日だっていきていけないのです。強いだけでは全く通用しません。私は家内に誘われてボランティアに参加するようになり、ハンディキャップを背負った人たちの立場でものを考え、親身になって接することが大事であることを教えられました。家内と次男がいなければ、自信過剰で鼻持ちならない人間になっていたかもしれません。」そういって真民さんの次の詩をしめされる。

「尊いのは足の裏である」 真民
  1
  尊いのは 頭でなく 手でなく 足の裏である
  一生人に知られず 一生きたない処と接し 黙々として
  その務めを果たしていく 足の裏が教えるもの
  しんみんよ 足の裏的な仕事をし 足の裏的な人間になれ
  2
  頭から 光が出る まだまだだめ
  額から 光が出る まだまだいかん
  足の裏から 光が出る
  そのような方こそ 本当に偉い人である

「足の裏を尊く思うなんて、それまで考えたこともなかったから、驚きました。でも足の裏に感謝してこそ、全体も生きてくるんですよね。大切なことに気づかされました。」家庭の事情が山下さんの心の目を開いたのです。「その気づきによって山下さんの世界はひろがりました。」山下さんは平成十二年七月、シドニー・オリンピックにいく直前、松山市に出張したとき、真民さんにお会いしたそうです。すでに九十一歳になっておられたが、すがすがしい風がふいているような、凛としたものを感じたと言います。山下さんも好きな詩は「念ずれば花ひらく」とのことです。

念ずれば花ひらく
苦しいとき
母がいつも口にしていた
このことばを
わたしはいつのころからか
となえるようになった
そうしてそのたび
わたしの花がふしぎと
ひとつひとつ
ひらいていった

「ある刑務所の服役囚の願いに応えて」のところで
「真民さんはよく書店に立ち寄ります。でもそれは必ずしも本を買うためではなく、所狭しと並べられている新刊書に囲まれていると、その一冊一冊が“あなたもいい詩を書くんですよ”と奮起を促してくれ、気持ちがたかまるからです。」ある方が3冊も買われたのでびっくりされ、話かけられたようです。「これは私が読むんじゃありません。私は刑務所に勤めているんですが、中に入っている人に買ってきてくれと頼まれたんです。この詩集はあなたがお書きになったのですか。本当にいいところでお会いしました。このことをみなさんに伝えます。」真民さんは自分の本がどんな人に読まれているのか、初めて知ったのです。その翌日、真民さんは刑務所を訪れ、昨日の話をし、全国の刑務所に贈呈したいと申し入れをしたのです。

「震災の被害者たちを励ました真民さんの詩」のところで
「東日本大震災が起きた年の六月に着工された坂村真民記念館は、翌年の三月十一日にオープンしました。震災は日本史上最大の被害をもたらしましたが、被災した人々はめげることなく、復興にたちあがりました。真民さんの詩“タンボボ魂”はそれを応援しているかのようでした。」

「タンポポ魂」 真民
  踏みにじられても
  食いもぎられても
  死にもしない
  枯れもしない
  その根強さ
    そしてつねに
    太陽に向かって咲く
    その明るさ
    わたしはそれを
    わたしの魂とする

「生きた聖人マザー・テレサ」のところで
「NHKテレビで“マザー・テレサ その人・その世界”を観て、真民さんはとても感銘をうけました。“その人の信仰はその人の行動にどう表れているか”で宗教を判断する真民さんは、マザー・テレサの行為にいっそうキリスト教に刮目しました。」貧しさとは飢えることではなく、見捨てられたことだという、マザー・テレサの言葉には愛の実践からくる重みがずしりと感じられたと昭和五十六年六月の「詩国」に書いておられる。

「マザー・テレサの足」 真民
  テレビは
  マザー・テレサの足を映した
  素足にサンダルばきの足を
  顔は苦労のため
  深いしわがきざまれていたが
  足には
  マザーの豊かな情感が
  じかに感じられた
    こういう人に
    日本の土を踏んでもらったことが
    うれしかった
    史上最大の恵まれた日本になり
    そのありがたさを
    見失っていこうとしている
    今の日本の土を

「しつこい皮膚病が教えてくれた!」ところで
晩年、真民さんは皮膚病に悩まされたそうです。アレルギー性と診断され、薬を処方してもらいましたが、全然効きません。ところがそのうちに心境の変化が起きてきて、病気を憎まなくなったそうです。「つらい、不幸だと思っていたらますます辛く不幸になっていくが、心を切り替えたら、それすらありがたくうけとめられるようになっていくものです。」光と闇と題した詩は、真民さんが掴み取ったものを伝えてくれています。

「光と闇」 真民
  光だ
  光だ
  という人には
  いつか光が射してくるし
    闇だ
    闇だ
    という人には
    いつまでも闇が続く

「エピローグ」のところで
「今回一人の詩人の人生をたどってみて、つくづく “めぐり合いの不思議さ” を感じました。坂村真民さんは体が小さくてかけっこもびりで、友だちもできず、コンプレックスにさいなまれていた少年でした。ところが坐禅の修行に打ち込んでいた四十四歳のとき、自分をまるごと受け止め、評価してくれた杉村春苔尼に出会ったことから、真民さんの人生は一変し、自分に自信を持つようになりました。自分に自信を持つという人生航路の船長が二本の足でしっかり立ったということを意味します。」と、神渡さんは書かれます。

(文:横須賀 健治)

 

Comments are closed.

ヨコハマNOW 動画

新横浜公園ランニングパークの紹介動画

 

ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
(動画をみる)

横浜中華街 市場通りの夕景

 

横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。
(動画をみる)

Page Top