横浜スケッチ(第41回) 銀座Beautiful展
ペンネーム 成見 淳
今年2019年の展示会への出品は5回でした。
展示順に、①5月「成見兄弟展」、全くの同時期展示で、②「県立鶴見高校OBOG展」、③7月「AKC2019水彩画展(赤坂孝史先生教室生徒展)」、④8月「ギャラリーダダ/アートフェスティバル(公募展)」、そして⑤9月銀座ASAGIARTSでの「Beautiful展」の5回でした。②の会場は横浜市鶴見区民文化センター サルビアホールのギャラリーで①③④は横浜そごう9階のギャラリーダダです。
今回の横浜スケッチは⑤のBeautiful展を取り上げます。
突然のメール
Facebookの8月12日の投稿記事にBeautiful展の事が載っているので、お誘いを受けたのはアートフェスティバルが始まる少し前の8月初旬だと思われる。銀座の画廊の女性経営者から「水彩画のグループ展に出品しませんか。」という内容のメールを頂いた。
『銀座の画廊から出品のお誘い?』初めは耳、いやメールだからこの場合は眼を疑った。続いて『え!銀座って、あの銀座!』、そして『まさか?』、『いや確かに銀座って書いてある!』 こんな具合に?マークと!マークが頭の中で交互にグルグルと回った。
『いつかは銀座で個展を。』、と思わないことはなかったが、個展ではないにせよこんなに突然やって来るとは思わなかった。サプライズというのは突然起きるからサプライズ。
興奮状態を感じながらも昔の嫌な記憶がよみがえって来て、一旦冷静に戻って心を落ち着かせることにした。一度否定的にとらえ直して、それを再否定することによって肯定に結び付けられるか否かを検証してみたかった。
面白そうな事、楽しそうな事にはすぐ飛びつく質だが、リスクは常に計算している。
嫌な記憶
嫌な記憶とは。30年位前油絵を始めて2年位経った頃、全日本美術協会という所に会友として入れてもらい、上野の東京都美術館に初めて30号の油彩「赤レンガ倉庫」を出品した時の事。日曜日の朝家内が素っ頓狂な声で「電話ですよ。『大澤先生いますか? 絵のことでお話が。』だって。売って欲しいという事かしら?」と興奮気味に呼びに来た。(当時は油彩で、ペンネーム成見を使い出したのは水彩を本格的に始めたここ数年。)
電話に出てみると、新聞だか美術雑誌に作品を掲載したいとの事。てっきり謝礼でもくれるのかと思いきや掲載料5万円を払えと言う。前々から絵の仲間に「大手の新聞社でもその手の話があり、初出品者は特に狙われるよ。」と聞いていたのを思い出して即断った。なかには「もう輪転機が回っているので。」とか詐欺まがいの事もあると聞いた。
真偽確認、出品決意
念のためASAGIARTSという画廊が実在するかどうかホームページで確認し、内容を把握した。どうやら本物らしい。さらに確かめるべく、メールで出品要領を送ってもらったり、逆にこちらの自己紹介を兼ねてホームページに加え「ヨコハマNOW」の事、「横浜スケッチ」のコラムの事を紹介したりした。自分をオープンにすることは相手との距離を縮め、相手の情報を得る必須条件でもある。ヨコハマNOWは特に有効なツールとして活用させてもらっている。
お誘いのきっかけは画廊の代表浅黄弥生さんがインスタグラムの私の絵をご覧になったことだった。
基本的にお受けすることにしたが、『なぜ自分が誘われたのか?』、また他の出品者がどういう方かも全く知らないので『自分の絵が場違いではないだろうか?』という事が心配だった。
そこで、直接銀座の会場に行って、場所の確認と絵を見て頂いて出品の可否を判断してもらうことにした。一度目は京橋に友人の出品作を見に行く帰りに銀座6丁目の会場に向かい、散々迷って『まさかこの細い道の奥ではないだろうなあ?』と思った場所に画廊があったが、3階の灯りは点いているもののシャッターの鍵がかかっていて入れず、場所だけ確認して帰宅。場所を確認したから一安心、は甘かった。
二度目に画廊を訪れたのは8月19日丸善丸の内の展示会「東京こだわりの風景画展」に行った時で、スケッチツアーでご一緒した佐藤ツエ子、野島朱美両先生の絵を拝見した後、迷うことなくASAGIARTSに着くことが出来た。
ASAGIARTSではちょうど「It’s so delicious展」をやっていて、7人の作家(全員女性)によるお菓子やスウィーツなどの小さな絵が沢山展示されていて、そのうちのKailene Fallsさんというアメリカ人作家とお話しすることが出来た。日本語が目茶目茶上手で頭の回転の超早い方で、交換した名刺の肩書の一つにtv talentと書いてあり、家に帰ってから検索すると https://kailenefalls.com/ 「NHKワールド」に出演したりTBSの「世界くらべてみれば」のレギュラーメンバーだったりとの事だった。どうりで言葉(日本語)が適確で早口と納得。
画廊の代表者は不在でお母さんがいらしたので絵を見て頂いて「これなら出品に何の問題もありません。」とお墨付きを頂き一安心。出品の気持ちが固まった。
出品が本決まりとなり、プロフィールや作品リストやコメント、名刺などを作成した。搬入搬出は郵送で会期中作家は必ずしも常駐の必要は無く、画廊の方(代表は子育て中との事でほとんど代表のお母様)が対応してくれた。
出品作家と代表作品
徐々に解って来たことは、Beautiful展は初めにグループありきではなく、画廊のコンセプトに合った作品の作家をピックアップした展示会、画廊主導の企画展だった。それ故4人の作家達は全くの初対面で、それまで顔も作品も知らなかった。
期間中に改めて選定基準を伺うと、「絵が美しい事」「本人が手で描いたものである事」の二つを挙げられた。2番目が理解できなかったので伺うと「コンピュータグラフィック等でない事」と説明されな、『今はそういう時代か。』と納得。
作家をPost Cardの右側の宛名に従って紹介すると。
①atsukoさん:本名井上敦子、広島市在住。パース、イラスト(CG,手描)制作を手掛け、文化センターで水彩画講師。作品は左上(一番上)、オーソドックスな水彩画。二日目にお会いした。https://inoue-atsuko.jimdo.com
②亀井則通さん:水戸市在住、期間中吉祥寺で個展を同時開催。作品は全てハガキサイズながら実に細密な水彩画(半透明水彩いわゆる学童用の画材)。2017年元旦にインフルエンザにかかり自宅待機となったのを機に水彩画を描き始められたとの事。
インスタグラムはfitiilokamei、作品は右上(上から2番目)。確か最終日にお会いした。
③齋藤雅史さん:千葉県の船橋市在住。作品は右下(4番目)で実に繊細なパステル画。アメリカの美大を出られて受賞歴も多数。会場では一番多くご一緒した。作品は「齋藤雅史 パステル」で検索。インスタグラムは masafumi_saito.pastel
④成見 淳:現在の戸籍上は大澤、2歳前まで成見。横浜市在住。以下ピロフィールは最終ページに。4人の中では最年長ながら画風は最も未熟。作品は左下(3番目)。
インスタグラムはjunnarumi1143
会場にたどり着くまで
会場のASAGIARTSは中央区銀座6丁目4-12 あさぎビル3階。私はここへ行くのに2回迷った。1回目は初めて行った時で6丁目の4までなかなかたどり着けなかった。銀座通りからかなり皇居側に寄った所だから。2回目は迷うことなくすんなりなり着いた。
3回目は初日に家内と、つばめグリル銀座コア店でランチをしてから行ったが迷ってしまった。2回目ですんなり行けたので安心したのがまずかった。その原因は銀座通りと外堀通りを勘違いした事だ。交差点だと銀座六丁目と銀座西六丁目の違い。
さらに解りにくいのは六丁目4までたどり着いても画廊が通りに面していない事による。
高校同級生のN君からは「こんど銀座で個展をやる時はもっと解りやすい所で頼む。」と言われ、同じくIさんからは「友達6人を連れて行きましたが会場が解らずに帰りました。」とのメールをもらい、その中の一人が翌日来てくれた。
実は私もその一人だったが「銀座」という言葉から華やかな所をイメージし過ぎていて、その既成概念が邪魔をしたと思う。銀座も一本中に入ると、明治大正とは言わないが戦前の昭和を感じさせる所が結構あって、これが何ともノスタルジックな良い雰囲気なのだ。
「横浜スケッチ」第21回の中で書いた俳人鈴木柾真砂女さんのお店「卯波」のあった界隈を思い出せてくれた。オーナーの浅黄さんのお話では結構昭和を彷彿させる所が残っているという。表通りから入った所は再開発しにくいためらしい。
既成概念にとらわれると道に迷うのは、なまじ昔の事を良く知っている場合にも起る。既成概念が街の発展変貌に追いつかない。今風によると上書き、更新されていない。
大学に入ったばかりの頃、吉祥寺の同級生の三畳間の下宿に行った事があった。数年前吉祥寺に行く機会があり、その変わりように驚いた。そんな下宿はどこにもない。「学生の街」が変わったのではなく学生の生活スタイルが変わったのだ。下宿アパートは無くなりこぎれいなマンションに変わっていた。
解りにくいと言われた場所だが何日か通ううちに『実は一番分かり易いのではないか。』と思うようになった。客待ちの間に周辺を歩き回ると画廊に至るには六丁目4のどこから来ても「まさか」と思う狭い路地、ビルの隙間を入れば良いのだ。ルートは四つもある。中に入れば昭和の雰囲気。実に新鮮だ。「旧い」や「古い」は「新しい」と反対だが「新鮮でない」とは言い切れない。「旧い」「古い」からこそ「新鮮に感じる」ことはある。
画廊の母、娘、3歳の孫の三世代による家庭的な温かさも相まって、すっかりこの場所、この画廊の雰囲気が好きになった。
話は少しそれるが、我が家に出入りしている保険関係のIさんの息子さんがドルチェ・ヴィータ銀座というイタリアレストランを経営されていて「お店に絵を飾ってあげたいのでイタリアらしい絵を描いて欲しい。」という依頼を前々から頂いていた。
たまたま今年の6月のスケッチツアーが北イタリアと国境近くのスイスの村だったのでツアーの基点空港となったミラノでスケッチをと考えていた。結果的には北イタリアの景勝地オルタ・サン・ジュリオでは沢山描いたが、スェーデンから戻ったミラノでは描く時間が無かった。
Iさんがギャラリー・ナルミに来られて、色々絵を見て頂いた結果選んだ絵(の複製)が会期中に家族3人でドルチェ・ヴィータに伺ったら飾ってあった。
何と銀座6丁目4まで画廊と同じ所在地。展示会の初日に歩測したら約50歩の距離だった。
展示風景(入り口、左から)
初日、ドキドキしながら3階のドアを開けると、それまで全く知らなかった4人なのに何故か調和のとれた、統一感にまずほっとした。とても心が休まる良い雰囲気。何よりも私の絵が皆さんの邪魔をしているようには見えなかったのでひと安心。
展示作品を良く見ると「6号1点、4号3点と言われていたのに6号が2点になっていた。展示スペースも一番広くて恐縮。
成見 淳(透明水彩)
亀井則通(半透明水彩)
井上敦子(透明水彩)
齋藤雅史(パステル)
機会があればまた是非同じメンバーで展示させて頂きたい。
年の最後に横浜スケッチらしい絵を1点。(実はこれ2019年私のインスタグラムの中で一番「いいね」が多かった絵。)
1年間お読みいただきありがとうございました。どうぞ良いお年をお迎えください。
外交官の家(横浜市山手本通り) 透明水彩6号
筆者紹介
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