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第84回 悩み多き現代的家づくり-2

by staff on 2020/3/10, 火曜日

acaa建築研究所
岸本和彦

悩み多き現代的家づくり-2

1年半ほど前になりますが、前回の私の当番で家は小さくてよい、といった様な内容を執筆いたしました。今回、同様のタイトルでその続きを書こうと思います。家をどうにかしようと悩んでいらっしゃる方々、または過去にそのように悩んだ経験をお持ちの方々に読んで頂きたい内容です。多くの場合、皆さんが理想とされる家を考えるとき、坪数や間取りやスタイルは重要な物差しではないかと思います。もしかしたら他に思いつかない方もいるかもしれません。坪数とは家の大きさを示しますし、間取りは幾つベッドルームがあるかとか、リビングは開放的で日当たりは良いかといったことですね。そしてスタイルはそのままご自身の好みの問題で、和風とかモダンな感じとか、ナチュラルなのがいいとか。前回、私が書いたのは、その3つの物差しよりももっと重要なことがあります、といった内容でした。そしてそれはひとの体の寸法に寄り添うように出来た、コンパクトで多様な居場所の豊富さです、といった内容だったと思いますが、今回はそこをもう少し掘り下げて考えてみましょう。

誰もがしっているLDK。例えば3LDKといえばベッドルーム3部屋に、リビングとダイニングとキッチンがある、と読めます。しかしそれは戦後の日本に登場した”間取り”のひとつの考え方であることをご存じでしょうか。「さざえさん」を見ていると確かにお茶の間でお膳を出してご飯を食べています。戦前までの日本の住宅は、ご飯を食べる部屋、とか家族団らんの部屋といった具合に機能と部屋は必ずしも連動していませんでした。ひとつの部屋で食べたりテレビ見たり、寝たりもしました。しかも壁は多くなく建具で仕切られた空間が多かったので、部屋は広がったり縮んだりもしました。お陰で様々なイベントにも柔軟に対応できたり、季節によって閉じたり解放したりして風抜けを調整し、さらに過ごす場所すら微妙に移動したものです。これは機能と部屋が連動せず、状況により自由に変化したということなのです。予定される出来事ごとに部屋を用意する必要はないわけです。しかも住人が減った時にも無駄が出ないばかりか、増えたとしても使い方や場所を調整すれば済んだのです。戦後生まれたLDKは、歴史的にも有名な昭和51年に公営住宅標準設計として建設された51C型から始まったと言われています。なんだ、最近じゃないか、と思う大人は多いはずです。そうなんです。それまでの主婦は上げ膳下げ膳で、ふとん敷いたりといった家事が大変でしたので、寝る部屋と食べる部屋とご飯つくる部屋を分けたことは、すなわち主婦の家事労働からの解放であったわけです。そこまでは良かったと思います。しかしその後、間取りを示す数字だけが一人歩きをはじめ、大手メーカー、量産住宅、マンション、工務店などのように、設計そのものでは勝負出来ないビルダー主導型の住宅に上手に利用され、現代に至るわけです。なぜならば、LDKシステムによって設計すれば、設計は極めて”簡単”ですから。だってクライアントは数字が大切なのですから。戦後間もないころ、国際会議で日本の住宅は”うさぎ小屋”と酷評されました。それほど粗末で小さく、非衛生的であったのでしょう。その反動で、間取りはより大きく、部屋は多く、天井は高く、といった一義的価値が一気に普及したことはまさに辻褄があっているわけです。しかし、立派な住宅は全国に行き渡り、家が余っている現代の状況において、戦後物資が不足するバラックでの生活という背景から生まれた、LDKシステムは、もはや卒業しなければならない時期ではないでしょうか。昔に戻ろうと言っているのではありません。多様性が必要なのです。はっきり書きますが、LDKは概念です。そこに空間の豊かさを示す指標は何も示されていません。そろそろ目を覚ましませんか?

 

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高橋 正彦 佐賀・高橋設計室
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水口 裕之・松井 理美子 tentline(テントライン)
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