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しあわせの「コツ」(第40回) 女性のちから

by staff on 2020/4/10, 金曜日

第40回 女性のちから

もう10年以上も前のことですが、日本人でアフガン戦争に「傭兵」として参加した高部正樹さんのインタビュー記事をSAPIO(小学館刊)で読んだことがあります。日本にいては想像もできない、まさに「殺すか殺されるか」の凄まじい世界に圧倒された記憶があります。

インタビュアーが戦場における「性」の問題について質問したところ、高部さんは「いわゆる娼婦はいます」と答えていました。ただ、それは平和な日本で想像していたとは、大違いの話でした。

戦場で何人も殺傷してきた日は、「血に酔う」というのか、心臓がドキドキし、異常に神経が高ぶってなかなか寝付けないそうです。そういう時に、女性がそばにいるだけで気持ちが落ち着き、眠れるというのです。高部さんは、あまりに気が高ぶってワナワナしているときは、赤ん坊のように娼婦の胸にしがみついたまま、じっとして夜を明かすそうです。具体的な行為をするというより、原初的な「女性性のエネルギー」にただ抱かれていたい、その思いしかない、というのです。

戦場での女性は、兵士の性のはけ口というより、男性の存在を支え、安堵させる原初的な女性性のエネルギーの具現者なのです。

アフガン戦争で傭兵をしていた時の高部正樹さん

柳田国男の「妹(いも)の力」でも、かつて女性は神秘的な力を持つとされ、その霊力で男性を支え、祭祀を司り、崇敬の対象であったことが民俗学的なフィールドワークで確認されています。戦時中、戦地に赴く兵士が無事に戻れるよう、千人の女性たちが布に一針ずつ縫う「千人針」というのがありましたが、これも「女性のちから」を皆が信じていたからこそ盛んに行われていたのでしょう。

     
  街頭で道行く女性に一針縫ってもらう
「千人針」
  実際の千人針  

1970年代に左翼的な思想をベースにした「ウーマンリブ」運動が始まり、その後も事あるごとに「女性の時代が来る」「男女の機会均等」などの動きが活発化し、一見女性にとって良い時代が到来したかのように見えます。果たして実際はどうなのでしょうか?
私から見ると、最近の女性はどこか「生きづらさ」を抱え、自信を持てないでいるように思えてなりません。それは、全体的な社会背景もあるでしょうが、女性を評価する際に、性的な側面がかつてないほど比重が大きくなっていることも原因の一つではないでしょうか。

女性性と、一口にいっても女性には
1)セクシュアリティの側面
2)母性的側面
3)聖女的側面

があるのです。1)は、身体や女性特有の感情など、いわゆる女性らしい特徴の部分です。2)は、自分の子に限らず、人や物を育み慈しむ心の部分。3)は、超感覚的な感性を持っていたり、一途に何かに捧げつくしたりする、現代ではあまり顧みられない「女性のちから」の部分です。

女性は男性より一途になりやすい傾向があります。一度こうと決めたら、地位や名誉、お金、あるいはハニートラップで寝返ることは殆どありません。よく信仰の場で「女人禁制」というのがありますが、「女性が汚れている」からというのは表向きの理由で、本当は男女が同じように修行を始めると女性の方がなぜか早く悟りを開いてしまうからだそうです(笑)。だから修行の場から女性を排除した、という話です。それだけ女性は一途だという事ですね。

きっとジャンヌダルクやマザーテレサは、3)の聖女的側面が大きかったのでしょう。聖母マリアは2)と3)を併せ持っていたのでしょうね。

「聖女」性を持っている女性たち。
左からジャンヌダルク、マザーテレサ、聖母マリア

「なんとなく変な感じがする」と理屈を超えた「勘」がはたらいたり、高次元からのメッセージを降ろす能力も、女性の方が高いようです。最近は一般の女性が高次元からのメッセージを受信したり、ヒーリング能力を発揮したりしています。これも本来女性がもっていた「ちから」が現れたものだといえましょう。
 最近の女性の「生きづらさ」、それは、女性の中に眠っているこの「聖女」的な部分がなおざりにされ、先ほど挙げた1)の部分を強調した「(男性にとって)都合のよい女性」を生きざるを得ない女性の苦悩とストレスが、もう我慢できないところまできたからではないでしょうか。

「アナ雪」が根強い人気を博しているのも、エルザが世間体を捨て、「ありのままの自分」で生きることを選んだ、その生き方に多くの女性が共感したからに他なりません。

ありのままの自分をさらけ出して、
たくましくなったエルサ「アナ雪2」より

「男女平等」と肩ひじを張るのではなく、傭兵だった高部さんが体験したような、男性を活かし安堵させる原初の女性性を取り戻したいものです。
それは、単にセクシュアリティの魅力だけでなく、母性も聖女的な部分も合わせ持った本来の「女性性」が開花した自立した女性になることを意味します。

女性がそのように変われば、男性も変化せざるを得ないでしょう。丁度女性の特徴と対をなすように、男性にも

1)セクシュアリティ的側面
2)父性的側面
3)戦士的側面

があります。

これからは男性・女性という分離を前提に「平等」と言って肩を並べるのではなく、お互いの違いを補い合うようにコラボする「統合」の時代となっていくことでしょう。長い間の習慣で、男性がその意識を変えるのはとても大変です。ここは女性の方から「ありのままの自分」に戻る努力をして、エルサのようにしなやかにたくましくなっていきませんか。

え? それは難しいですって?

いえいえ、エルサのように、「ありのまま」のあなたに戻るだけですから。もっとはっきり言うと、「自分軸に立って生きる」だけですから。

誰しもが「自分軸で生きる」時代の扉を、女性が先に開けさせていただきましょう!

筆者紹介

 
本 名 田尻 成美 (たじり しげみ)
略 歴 著述家・株式会社エランビタール代表取締役
著書 「しあわせのコツ」(幻冬舎)
主な訳書「都市革命」(H・ルフェーブル著 晶文社)、
「空間と政治」(H・ルフェーブル著 晶文社)、
「文体論序説」(M・リファテール著 朝日出版社)
比較文化的視点から、日常の出来事をユーモアを交えて考察していきます。
著 書 「しあわせのコツ」(幻冬舎)



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