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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第86回)

by staff on 2020/5/10, 日曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第86回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

昨年、東京都美術館で “奇想の系譜” 展が開催されました。伊藤若冲・曽我蕭白など、江戸のアバンギャルドが一挙に集結しました。世界が行き詰まり、パラダイム変換が起きる時期には奇異・奇想なものに心惹かれるのは世の流れとか。日本美術は静謐・枯淡といわれますが、根幹には野生の血が溢れていることに驚愕。突然変異ではなく、過去からの流れの中での必然。奇異・奇想は傍流ではなく、曽我蕭白の “群仙図屏風” などはグロテスクのど真ん中。パンデミック時代の生存戦略は “ロープ・ア・ドープ” かも。王者フォアマンと挑戦者モハメド・アリが対戦し、アリが劇的な逆転勝ちをおさめたキンシャサ(コンゴ民主共和国)の奇跡。アリはロープにもたれてフォアマンのパンチをブロックして凌ぎ、打たれ疲れたところにパンチを浴びせてKO。ダメージを最小限にして、できることを継続させながら反撃力を蓄積する。梁塵秘抄では “雨は降る 去ねとは宣ぶ 笠は無し 蓑とても持たらぬ身に 忌々しかりける里の人かな 宿貸さず” とあります。弱り目にたたり目を柔らかく捌く。 “俗な欲望を持て” と作家・渡辺淳一。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

まだ足りぬ踊り踊りてあの世まで、とは創造への執念
書物なしの部屋・魂なき肉体 歴史から学ばずを学ぶ
技術は人間性を圧倒 知恵は時間とよき師匠から学ぶ
やがて死ぬ けしきは見えず 蝉の声、とは松尾芭蕉

松尾芭蕉は三重県伊賀上野の出身。母の実家があったことから子供の頃は何度か遊びに。当時は漫画で読んだ剣豪・荒木又右衛門の方に夢中。芭蕉は俳諧一直線というより、ある時期は東京・神田川の分水工事に関わる土木事業者。俳聖といわれた芭蕉も、順風満帆とはいかなかった様子。このあと、初めて職業的な俳諧師に。弟子の曾良を伴い “奥のほそ道” の旅に出たのは、西行500回忌の年。陸奥・加賀・越前などを巡りました。石川県育ちのため、加賀で詠った “あかあかと日はつれなくも秋の風” は小学校で繰り返し教え込まれました。 “私は凡才。天才の域に引き揚げねば” と版画家・恩地孝四郎。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

サイロの中で仕事はしない 高度な猜疑心が不可欠
問題の根本原因 実はそれこそ問題解決策そのもの
あらゆる障害を少しずつ軽減 これが優位性を生む
年立つや もとの愚が又 愚にかえる、と小林一茶

小林一茶は、信濃に生まれた江戸後期の俳人。一茶が詠んだ俳句の数は約15000句、芭蕉は約1000句。一茶が家庭を持ったのは52歳、28歳の妻を迎えています。しかし、家庭を持った幸せはあっという間に崩れ去りました。3男1女の全員が2歳までに死亡、さらに妻も37歳の若さで病死。軽やかで飄々とした一茶の句の根っこには、これだけの深い悲しみが宿っているのかも。晩年、大火で母屋を失った一茶は、焼け残りの土蔵に移り住み、65歳の生涯を閉じました。 “もとの愚が又 愚にかえる” は一茶の心痛の呻き。 “多様な思考の結果の中にしか、自由な選択などありえない” と文筆家・平川克美。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

何を知らないかを知らないということはありうる
忘れたいことを忘れてしまうと何度も失敗する愚
コミュニケーションは多様で便利 反面深い孤独
成功・失敗は日常茶飯事 けものの嗅覚が生命線

“けもの道” とは、野生動物が通ることで自然にできる山道。科学が全盛で、論理重視が叫ばれる中では “論理の呪縛” の落とし穴もありそう。AIは強力で破壊的ですが、今まで遭遇したこともない事象には論理への固執に陥りがち。けものの嗅覚は、直接的・即時的な知覚。アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスのスピーチに “In the end, we are our choices(結局のところ、我々は自分が下した決断の集大成)” があります。画期的イノベーションも、意外と “通路での立ち話・夜中の電話会議” から出てくるもの。 “理屈をつけたものはみんな滅んだり衰えたりする。二枚腰でしたたかに” と俳優・森繁久彌。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(九)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第86回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(九)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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