ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第89回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第89回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
人類は今日まで、約1000億人が生まれて死んでいったのだとか。今回のパンデミックも、その大きな流れの中での一つの出来事かも。その流れの中でしっかり生き抜いていくには何より健康であること。これは人間も組織も同じかもしれません。人間の方は手洗い・運動・睡眠の大切さが指摘されていますが、企業や商店などの組織も人体と同じ。組織も “組織としての健康” が問われそう。債務超過・過剰在庫・教育不在など。冷静にみれば、組織も不健康なまま生き延びることは困難。イノベーションでも、ただ前進突破を図るのでなく、伝統的形式や現行手法も大切にすること。20世紀のあらゆる芸術で失敗を招いた原因の一つは、独創性に固執したことだとの指摘もあります。千利休も、茶道の精神・点前作法の心得の中で“規矩作法守りつくして破るとも離るるとても本を忘るな”との戒め。梁塵秘抄では “我が恋は 一昨日見えず昨日来ず 今日訪れ無くは 明日のつれづれ如何にせん” とあります。固執せず、新たな道を探るのも一案。 “好きなことを一つやるには、好きでない九十九もやらなければならない” と作家・東山彰良。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
三〇年間同じ食べ物を食べてきた生き物は一つの食中毒で全員が破滅する
多様性の弱さが際立つ 多面的に炎を絶やさないのがチャンピオンへの道
拳闘 アマは足を前後・プロは左右 重心は足の中央、とコーチ・サラス
東京五輪は新型コロナウイルスで1年延期が決まりました。1964年の東京五輪では、ボクシングを後楽園で観戦しました。1回戦でしたが、その時の桜井孝雄選手が決勝まで進み金メダルを獲得。2012年のロンドン五輪で村田諒太選手がその時以来の金メダル。今回も両国国技館のボクシング・チケットを確保。その後、村田選手はプロの道へ。アマは足を前後にしてパンチを出すこと、プロは足を左右揃えたままで重心は足の中央、これでパンチを出すこと。でないと長いラウンドを戦えないらしい。名コーチ・サラスの洞察に得心。 “発酵期間:昨日より一昨日の方が自分には濃密” と漫画家・山藤章二。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
化学品の価格にナレッジも織り込む
顧客と契約しオペレーションも売る
化学品はそのための費用と割り切る
米国の化学会社では、事業の苦境を脱する起死回生策として、事業の生命線である化学品そのものを売るのでなく “化学” 全体を売るコンセプトに180度転換。化学の会社だから化学品をつくって売るのは当たり前ですが、イチかバチか、売るものを化学に関わるすべてに拡大。自社の化学品を原料として使う製品生産のオペレーション作業も支援。化学原料の特徴を最大限生かす製品開発のコンサルテーションも。化学品はあくまでサービス上の手段。コンサルテーションは、化学品というモノと異なりマネされ難い強み。 “ああ面白かったと臨終の際にどこまで言えるか” とジャーナリスト・筑紫哲也。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
オペレーション文化からコラボレーション 更にコラボ学習へ
学習なしのコラボレーションは無力 単に適応するだけのこと
目的達成 人間関係に沈まず振り切り前へ進む、と大久保利通
大久保利通は、西郷隆盛と並ぶ傑出した薩摩藩士。鹿児島では、西郷の方が圧倒的な人気ですが、大久保にも西郷にはない切れ味を評価する声も。二人が育った実家は意外と近く、ともに郷中(ごじゅう)という薩摩藩の武士階級子弟の教育で鍛えられました。武術は多少不得意ながらも、討論や読書などの学問は郷中の中でも突出した存在。 “武士道の本義を実践” “嘘を言わない” “万事に質実剛健” などを叩き込まれました。大久保が目標とした国家はドイツやイギリスで、日本の官僚機構の土台を築きました。 “ネガティブ・ケイパビリティ:できない状況を受け止める力” と科学哲学者・村上陽一郎。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(九)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第89回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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