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書評 「それでも、幸せになれる 「価値大転換時代」の乗りこえ方 」 清流出版 鎌田 實(著)

by staff on 2020/11/10, 火曜日
 
タイトル それでも、幸せになれる 「価値大転換時代」の乗りこえ方
単行本 216ページ
出版社 清流出版
ISBN-10 4860294977
ISBN-13 978-4860294977
発売日 2020/9/15
購入 それでも、幸せになれる 「価値大転換時代」の乗りこえ方

「価値観が大転換する時代の始まり」で第一章は始まる。ビジネスはどう変化していくのかを考えることが大事だと話される。これを機に、生産体制やサプライチェーンの見直しが求められる。「少しでも安い生産費や効率を目指して、中国などに展開してきた部品つくりなども、一部は国内回帰してくると思います。」

「14世紀、中国からユーラシア大陸にかけて、経済的なつながりが密になっていきました。いまでいうグローバリズムの始まりです。同時にその頃、ペスト菌が蔓延します。繰り返し波が続き経済は疲弊していきます。しかしその間に農奴の解放なども行われ、構造的変化が起こって封建時代は終わりをむかえていきます。そしてルネッサンスが生れ、経済も文化も大きく変わっていきました。この新型コロナウイルスによっても、間違いなく一人ひとりの世界観が転換していく。」そして次のように語られます。「どんな時代がやってくるかを予測しておくことが大事です。必ず時代は代わり、おもしろい時代がやってくる・・・そう読んでおくことが重要になってきます。」

コロナは後遺症があるかもしれないと言われます。「新型コロナは厄介なウイルスです。かかっても8割は軽症。しかもなんと、最後までかかったことすらわからない無症候感染が5%あることが分かっています。その反面、5%は重篤化し、集中治療室に入り人口呼吸器につなげられたり、命を奪われることもあります。」「厄介なことは、イタリアの論文で発表された“中等症以上に病気が進んだ人は、命が助かったとしても3割に後遺症が残るのではないか”という推測です。」

過去は疑え、未来は信じよう、というコーナーがあります。「壁でも逆風でも、諦めなければ、いつか、壁の向こうに出られたり、風がやんで、追い風になったりするはずです・・・・。コロナの壁がどんなに厚くても、必ず僕らは壁を乗り越えていけます。今が大切なのです。過去は終わったこと。たいへんだったにせよ、大変でなかったにせよ、壁も逆風も関係ありません。いまさら影響を及ぼすことはありません。だから大事なのは、いまを精一杯生きること。」

逆境の乗り越え方は様々ですと言われます。脱出法のヒントは、ちょっとしたところにあります。心が折れそうになったときは、まず「悩むだけ悩め」「時には力め」「へこんでもいい」の三つの言葉を自分に言い聞かせて、自分の気持ちを自由に解き放つことだと。「“がんばらない”も大事だけれど、アフターコロナのこれからは、力んで、もっと自分を解き放って生きることも大切だと思っています。」と。

「無常の世界はなりたい自分に代わるチャンス」が第二章です。僕たちは日々「なんでもない毎日」を生きていました。普段、それが当たり前にあると、ありがたみを感じないものです。でも今回のコロナによって、それが“特別なもの”であったと気づきました、と始まりました。万物流転、絶対なんてない、のところでパラリピックの南アフリカの競泳の男子選手の話です。「彼は右足がありません。二〇〇六年に、右足の膝から下をサメに食いちぎられてしまいました。兄弟でライフガードのトレーニングをしていたとき弟がサメに襲われ、それを助けようとして代わりに犠牲になったのです。さぞかしサメが憎いのではないかと思いきや、彼はこう語っています。“サメのおかげでパラリンピック選手になれた。サメにありがとうと言いたい”そしてシャークボーイというニックネームを自分でつけ、環境団体の一員として、サメを含む海洋生物の保護活動に力を注いでいます。」

「変わる可能性がある自分を見つけろ」という項があります。世の中は無常なものです。絶対的なものがないからこそ、状況はいつでも変わるし、変えることが出来ます。変えるのは僕たちの「心」です、と言われます。「いまは幸福とはいえない境遇にある人も、心のあり方次第ではいつまでも不幸のままではない。“そうか、運命は変えられるんだ”と思えば希望が生れ、生き方が変わっていくはずです。」「それぞれの人生にはそれぞれの物語があります。自分にしかない素敵なストーリーを作れるか否か、それはこのコロナ後の日常の中に、“変わる可能性のある自分”を見出すかどうかにかかっています。」

「こんなときは、もっと孤独でもいい 孤独を恐れてはいけない」という項があります。「孤独ってそんなに悪いことでしょうか。孤独の時間をもつということは、生きる強さの獲得に繋がっていきます。それは自分自身を確立するためにとても大事な、必要な時間だからです。コロナ前、僕たちは“人生で一度は立ち止まって考える時間があってもいい”、そんな言葉をいろいろな本や雑誌で目にしてきました。ただ現実には、日々忙殺され、孤独の時間をもちたくても、もてない人間がほとんどでした。孤独は人間を成長させます。孤独は成長のバネです。孤独を怖がらないでください。きっとあなたは変われます。」「おすすめなのは、読書です。読書をしていると、いつの間にか自分ならどうするだろう、どう考えるだろうなどと自分と対話をするものです。」「あるいは、思っていることを文章に書き出してみることもいいですね。数行でもいいから日記を書いてみてはどうでしょうか。」

「不透明な明日を切りひらく生き方」が第三章です。「静かにスタートをきる時期が来た」の項があります。著者は、大変だけれど、そこにはおもしろい生き方があるはずです。これまで都市にこだわっていた若者が。地方で新しい生き方を模索するようになるかもしれないと言われます。「人間はとても強いものです。弱いけど強い人間たちが、大変だけどおもしろい世界に飛び込んでいきます。過去はどうにもならないが、現在と未来はいくらでも変えられるのです。」「必要以上に不幸を考えない 幸せは、きっと自分のなかにある」の項があります。人間は緊張の糸が切れると、自分でも理解できない行動をとってしまいます。「自殺未遂をした男性が居ます。部長に昇進したのがストレスになったのです。自分には荷が重いと考えたのです。友人がなにかを感じました。駆けつけた友人のおかげで一命を取り留めました。その後は精神科のお世話になりながら、彼をおおっていた不安も減って立ち直ることができました。彼の人柄がよかったことも大きかったのでしょう。部下が彼を支えようとしました。すると会社の中で彼の部署の成績が、かえって上がったのです。“力のない上司だと下がしっかりする”と笑って話せるようになりました。」そして語られます。「家庭や会社や地域において、人の足を引っ張ったり、SNS上で人をぶっ叩いたりする空気を、これからどれだけ減らしていけるかが、僕たちの国にとって大事な課題のような気がしています。」

バルザックの言葉を紹介しています。「“自らの心の中に幸福の源泉をもつその人の人生は、なんと美しいことか!”これを不幸のどん底にいると感じている人には、残酷な言葉かもしれません。でも不幸を考えたらきりがありません。少しでも“あ、いいな”と感じたら、それを大切にすること。それを感じるのは“自分の心”なのです。」

「誰かのために役立ちたいーーその気持ちが人生を美しくする」という項があります。山口県の高校で養護教員をしていた横山智子さんの話です。「亮年40歳。6年以上にわた悪性胸膜中皮腫という病気と闘い続け、最初の手術で左肺を摘出したのですが右肺に転移してしまいました。その間に脳梗塞もおこした。」「やがて頻繁に呼吸困難をおこすようになり、息をするのもやっとになってしまった。“もう、無理”と辞表提出を相談されたとき、僕は“君はつまづきそうな子どもたちの杖。そういう姿が子供たちに勇気を与える。自由に生きるためにも仕事はやめない方がいい”と激励しました。校長先生も“あなたの存在は大きいからやめないでほしい”と言い、“子どもたちに命の授業を”と、頼んだのです。」「彼女は“つまづいてもいいから、自分自身で道をきりひらいていきなさい”と生徒たちに教えていました。僕と彼女は毎日のようにメールや手紙、携帯で連絡を取り合い、“最期の授業”の相談をしました。“10月には先生の高校で一緒に命の授業をしよう”と勇気づけたのですが、でももう彼女には体力が残されていませんでした。」

「コロナを超えて”新しい人間”を目指す」が第四章です。今こそスローライフの項があります。「僕は、ビヨンドコロナの時代に人間が人間らしく生きていくためには、”リアル”が大事と考えています。人間同士の愛情や友情、信頼関係や助け合いの気持ちなどは、顔を見せ合って相手と呼吸を合わせ、気持ちを共有することから生まれやすいと思っています。だから新型コロナウイルスをぶっ飛ばして、早く握手や抱きしめることができるリアルな世界が戻ってきてほしいものです。リアルな自然との繋がりも大事です。SNSで伝えられる風景がいくら綺麗でも、それは実物ではありません。人間らしく生きるためには自然の中に身を置いて、光や香りを実感することが大事です。「スローライフでわすれてはいけないのは、”人と自然”の繋がりだけではなく、”人と人”との繋がり、”体と心”の繋がりです。」

「スルーライフ」という生き方の項があります。「スマホが手放せずいつも眺めていると、その情報にとらわれ、いつしか”本当に正しいもの”がなにかわからなくなります。目の前にあるごく当たり前にあるスマホやメディアをいったんスルーしてみると、自分自身の意識が解き放たれ、感覚を研ぎ澄ます訓練になります。」

「五つの技法が家族関係や組織を円滑に」という項があります。「バリデーション」具体的な技法とは「傾聴する」「共感する」「誘導しない」「受容する」「ごまかさない」の五つです。「バリデーションの中で育った人間は、バランスのいい人間になっていきます。しかも自信をもっているので、壁を突破する力があります。共感させる力があることでリーダーとなり、大きなことを成すことが出来るようになります。」そして著者は言います「ビヨンドコロナの中で、”新しい人間”が生れてきて、日本が魅力的でおもしろい国になることを期待しています。コロナ後はチャンスが溢れているはずです。」

変化を楽しみなさいと言うことなのかもしれない。大変な勇気がいることなのかもしれない。

(文:横須賀 健治)

 

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