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2010年12月  「我慢の哲学」

by staff on 2010/12/10, 金曜日

1980年代前半に土光敏夫氏の後の経団連を率いた稲山嘉廣氏は「我慢の哲学」を提唱した。当時の日米・日欧貿易摩擦の際、強すぎた自動車やVTRの輸出自主規制を実行していった。ミスターカルテルともいわれ、秩序を重んじ、過当競争の害を説いた。2008年ノーベル化学賞のお椀クラゲの下村脩博士は日本経済新聞の「私の履歴書」の最終回に「実際のところは、私は不器用で、実験は上手ではない。よく失敗する。ただ、簡単にはあきらめない。うまくいかなかったら考え直して、別なやり方を試みてみる。だめだったらもう一度。それを何度も繰り返す。それだけだ。」とある。失敗を我慢できるかどうかということかと思う。エジソンの実験方法にも通ずる不屈の精神の表れだ。

一方で、今年来日した政治哲学者のマイケル・サンデル博士の著書Justiceにウォール街の某社長が彼らはvictims of “financial tsunami”(金融津波の被害者)だと言った旨の記述があり、人災を天災にすり替えるのに都合のよい日本語が使われているのに驚いた。これなどは我慢どころか傲慢のなせる技であろう。

文化の日の週に五夜連続でTBS開局60周年番組「99年の愛―Japanese Americans」という橋田壽賀子作品を見た。これは20世紀の初めに島根県からシアトル郊外に移住した一族の4世代にわたるドラマで、差別や戦争、日系人収容所、再起、和解などの我慢の話だった。その後、NHKクローズアップ現代で「GAMAN 尊厳の芸術」を見た。デルフィン・ヒラスナさんという日系3世の方が5年前に書いた”The Art of Gaman”という題の著書を国谷裕子キャスターと脚本家の山田太一氏が語る番組だった。ワシントンのスミソニアン博物館で現在催されている同名の展示会のことも紹介されていて、当時収容された12万人の日系人は、尊厳を守りぬく決意で、表現の自由を貫いたことが分かった。

石の硯、木の根っこを利用した鳥、ひまわりの種のブローチ、貝殻と歯ブラシの花、下水管の花瓶など1千点が展示されている。番組のインタビューで、パット・ナカムラさんは両親の死後にガレージからこのような作品群や当時の資料を発見した由である。彼女たちには収容所の生活を楽しい話として伝えていたので小さい頃は自分も経験したかったほどだったそうだ。米国で育っていく子供たちが、反感を持たないように、また持たれないようにするために「貝殻と歯ブラシの花」の作品すら「見せないという我慢」があったのだろうと、ナカムラさんは、収容所跡地を訪問し、あたりの土を掘って貝殻を見つけた際にでてきた涙のことを静かに語っていた。

2008年の北京オリンピックの最後を飾った男子マラソンで優勝したのは、アフリカはケニヤから仙台の高校に留学し、「我慢の精神」を渡辺監督から学んだ、「努力と協調性の地球人」たるワンジル選手だった。ローマを裸足で走り、東京をシューズを履いて二連覇したあのエチオピアのアベベの時とは異なる、21世紀型の国際的な出藍の誉れに思える。我慢の哲学がアフリカの若者の心に開花していた。

九州場所で5連覇した白鳳に代表されるように、国技の相撲の世界では、異国で頑張る外国人力士は日常生活から日本人の数倍も我慢して努力を重ねその効果は明らかなものとなっている。日本人の我慢の哲学は国外で健在なのかもしれない。映画にもなったネルソン・マンデラ氏の座右の銘はインビクタス(不撓不屈の精神)であり20数年間の牢獄生活を支えた信念、究極の我慢の哲学だろうと思った。

歳の瀬を迎えて、日本伝統の信念と尊厳に支えられた前向きなGAMANがTSUNAMI やMANGAやANIMEを上回る知名度を得るようなウサギ年を「望年」したいと思う。

 

小田切英治郎 プロフィール

昭和30年5月、北九州生まれ。牡牛座、A型。横浜と横須賀育ち、県立横須賀高校から一橋大学で国際法を学ぶ。米国駐在を含めた金融機関勤務、中堅企業やベンチャー経験の後、文化や経営、社会や歴史を中心とする翻訳や執筆に従事。米国のビジネス論文、大手企業の週刊文化発信、米国の社会改革の論文等の和訳等に従事。ラッセル、ドラッカー、ガルブレイスに目を通し、中島みゆきに耳を傾けると、城達也の声や、淀川長治の顔が浮かんできた。21世紀の地球は、地上の星が満天の星と対等に挨拶できるような星になってほしい。三権+メディア+金融の五権の分立を基本として、ペンは剣よりも金塊よりも歯切れよく、人は大海に向かって船出し、笑顔で戻ってくるのだ。

     

 

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