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匣SAYAから発信・やきものの話2 ~織部(おりべ)~

by staff on 2011/1/10, 月曜日

「織部」は武将の名前から!?

 前回、桃山時代に隆盛した「桃山陶」(ももやまとう)について述べましたが、その中でも特に際立って造形や意匠が斬新なのが、「織部」という技法です。
 今、「織部」というと、一般的には緑色の釉薬(うわぐすり)がかかったものを呼ぶことが多いのですが、当時は茶道の世界で主に使われていたようで、何箇所かに緑色のうわぐすりが掛かっていてその合間に鉄色で文様を描いている様式のものを「織部」と指すことが多かったようです。これらは現代では「絵織部」とも言われています。つまり、簡単に言いますと、織部という技法は、緑色の釉薬を一部、あるいは全体に使ったものといえます。

 桃山陶で作られた「織部」を見てみると、その大胆なフォルムとデザインがとても魅力的で、当時のお茶席などでお客様を驚かす趣向であったのではないかと思われます。お客様を驚かして喜ばす、現代に通じる最高のおもてなしが当時もあったのでしょう。

右の画像は、桃山時代17世紀の織部焼 水注や鉢。
写真-矢部良明著「日本やきもの史入門」より

 
画像をクリックして拡大写真をご覧ください。
 

 さて、その大胆な造形を生み出した人物がいます。当時の茶人でも武将でもあった、古田織部(1544~1615)という美濃の大名です。何故『織部焼』という名前がついたかというと諸説あるようですが、古田織部の名前から取ったというのが一般的です。織部は、茶の湯の始祖と言われる千利休の次の時代を担った茶の湯の名人(数奇者)で、それに続くのが小堀遠州となります。それぞれ各時代の茶人の好みを生かした、利休焼、織部焼、遠州焼などと呼ばれる焼き物があります。千利休が静とすれば、古田織部は動、自由闊達なその精神は、茶器の製作以外に建築や造園などに及び、「織部流」として、桃山時代を一世風靡しました。織部は、利休の教え「人と違う事をせよ」に学んで、既存の概念を破り新しいものを生み出す精神を開花させました。沓形茶碗(くつがたちゃわん)と知られる織部の抹茶碗は、一般的な円形の茶碗をくずし真ん中をへこませ沓形にしており、今でも新鮮に感じられる造形を創造しています。芸術としての陶器は織部から始まっているという評価をする人もいる所以です。

 織部の人物を物語るエピソードをひとつご紹介します。千利休が秀吉に追放される際に、親交のあった諸大名は秀吉を恐れて見送りに現れなかったが、古田織部と細川忠興だけは堂々と見送りに現れたそうです。人物的にもきっと温情溢れる立派な人物だったのでしょう。「織部」という技法はこんなに自由な精神に満ち溢れた人物から生まれたのです。織部の器を使う機会がありましたら、ぜひこの歴史の人物に思いを馳せて、大胆豪放な気分を味わってください。

現代の「織部」

 現代の陶芸の世界では、「織部」はどうなっているのでしょうか。

 「織部」の技法としては、先ほどご紹介した「絵織部」の他に、「総織部」と呼ばれる、全体に緑の釉薬をかけたもので、陶器の表面に鎬(しのぎ)、刻線、櫛目などの模様を入れているものや、一部分に織部釉を使って装飾が施されているものなどがあります。現代では、伝統を引き継いで多種多様な陶器が「織部」を使って制作されています。「織部」の器は余り一般には出回ってはいないかも知れませんが、陶器の専門店へ行けばすてきな現代作家や窯による器に出会えるはずです。ぜひ深緑の美しい釉薬(うわぐすり)と楽しい造形を身近に楽しんで頂きたいと思います。

「絵織部」

緑の織部釉の合間に現代作家による鉄絵の模様が楽しめます。
左  岡本芳久 織部片口鉢
左下 岡本芳久 織部5寸皿
右  常滑焼 織部ドレッシング入れ
右下 常滑焼 織部ドレッシング入れ
*画像をクリックした拡大写真をご覧ください。
  「総織部」

器本体に入れられた、美しく力強い彫りの造形力。
高内秀剛 織部角皿
*画像をクリックした拡大写真をご覧ください。

 最後に、織部の食器の使い方のワンポイントをご紹介させて頂きます。
 美しい深緑の「総織部」の器は、笹の葉などの葉を敷かなくてもお料理が映えます。中でもお刺身がとても引き立ちます。何点か盛り合わせにしてもいいですが、ひらめの薄造りなどは織部の大皿の上に、花びらのように広げて置きますと、白色のきれいな大輪の華ができたようで目にも楽しめます。

 次回は「志野」(しの)についてと、陶器と磁器の違い、焼き物の温かさについて触れてみたいと思います。

「くらしの器と絵 匣」主宰 重田葉子
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交通 :
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