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匣SAYAから発信・やきものの話3 ~志野(しの)~

by staff on 2011/2/10, 木曜日

「志野」は陶器 ~陶器と磁器の違い~

 今回は「志野」(しの)についてと、陶器と磁器の違いや焼き物の温かさについて触れてみたいと思います。

 「志野」のお話の前に、「陶器と磁器」の違いについてご説明を致します。この違いをご存知の方も多いと思いますが、陶磁器店を営んでおりまして知らない方も割合多いと感じますのでここで改めて2つの違いについて簡単に説明致します。

 焼物は陶磁器ともいいますが、大まかには「陶器」と「磁器」の2種類に分かれ、その材料、質感、扱い方も大きく違っています。この二つの性質をしっかり把握してご家庭で使用すれば、より一層に豊かな食卓やくらしを実現することが出来る事でしょう。とは言っても、皆様はご家庭でご自身の感性できっと自然とこの二つを使い分けていらっしゃるかも知れませんね。

 「陶器」は土ものとも言い、土から作る粘土を焼成して出来たものを言います。日本全国で土は取れますので、皆様ご存知のように各地の土の特徴を生かした焼物が全国で作られているわけです。陶器は多くは粘土を成形し乾燥させてその上に釉薬(ゆうやく)という材料を汁物が滲みないように掛けて焼成します。中には土の性質で粘土質が強く粒子の細かい土で、釉薬を掛けなくても岡山県の備前焼のように焼しめるだけで完成する「土もの」もあります。逆に釉薬を掛けても土が軟らかく、釉薬のガラス質の隙間(乾入)から汁物が入り込み、山口県の萩焼のように長年使い込むことによる変化を楽しむ土ものもあります。萩焼は茶陶に多く「萩の七化け」(ななばけ)とも言われています。基本的には「陶器」は吸水性のあるものと考えて頂き、煮汁などが滲み込む可能性がありますので、長時間煮物の汁ごと入れて保存などは避けて頂いた方が賢明です。出来れば使用前に一度水かぬるま湯をくぐらせてさっと拭いてから使っていただくと滲みにくくなり長くきれいに使えます。また、使用後はなるべく早く洗ってしまうことも一つの方法です。最初から陶器は多少手の掛かる焼物であるという事を認識して使って頂くといいかも知れません。しかし、陶器にはそれを補って余るほどの魅力があることも確かです。それは後ほど、「焼物の温かさ」の所でお話したいと思います。

 一方、「磁器」は、簡単に言いますと陶石という石原料で出来ています。代表的なのは、有田焼で、その他、伊万里焼、九谷焼、砥部焼などで、海外で作られている洋食器はほとんど磁器で出来ています。見た目にも素地が白なので分かりやすいですが、簡単に区別をつけるには、器をひっくり返して底の足の部分が白いものは磁器だと判断できます。陶器で「粉引」(こひき)という手法があり一見白い仕上がりで磁器と錯覚するものがありますが、土の器形の上に白い土を掛けてあるので、底を見ると足(高台)の底が土色をしていますので区別がつきます。

 磁器は水を通しませんので、水漏れや経年劣化の心配が余りなく長くきれいに使えますので、扱いやすさや効率性を求める現代の日本では主流になっているといえます。冷蔵庫でお惣菜を保存したりするのには磁器を使用すれば、器に滲みたり臭いがついたりしませんので、安心してお使い頂けます。現在、大量に作られている、いわゆる量産物と言われる工業製品の食器はほとんどがこの磁器でできています。

 また、磁器は白い素地の上に描かれる絵を主に楽しむ器とも言えるでしょう。素地がきめ細かいので、繊細な絵付けが可能だからです。その他磁器には、絵を描かずに器形と色の美しさを尊ぶ白磁、青磁という中国から伝えられた格の高い焼物もあります。一方、陶器はその土の持つ性質が色々あり、焼成方法により様々な肌合いの焼物表現が可能ですので、手で持った触感や焼き肌に現れる炎や灰(釉薬)の出方を主に楽しむものと言えます。

 よく「焼物の温かさ」という言葉を耳にしますが、それは陶器を表現する時に用いられる表現です。磁器はその材料と性質上硬質などちらかと言うと冷たい触感がありますが、陶器は土のもつ軟らかさやぬくもりが感じられる焼物と言えるでしょう。その「温かさ」はきっと土や灰といった自然の恵みから出来ているから伝わってくるのだと思います。

 磁器が主流になった現代の食卓の中に、どこかほっとする温かさを持った陶器の食器をぜひ、いくつか付け加えてください。食卓がより豊かにまた優しく美しく彩られることでしょう。

 今回のテーマである「志野」という焼物も、今までお話した「桃山陶」の所で出てきた焼物も全てこの陶器という分類に当り、作家のたゆまぬ情熱的な炎と土と釉薬との格闘から生まれてきた産物と言えます。ある意味、陶器は日本のオリジナルな焼物として世界に誇れる芸術と言えるのではないでしょうか。

 

桃山陶の志野焼の美しさを現代陶工が昭和初期に復興

 志野焼は16世紀の桃山陶の隆盛の時代から現れた一種の焼き方です。織部焼と共に桃山陶を代表する美しい焼き物です。当時の茶人の美意識から生まれ出てきた焼物と言えます。一説に中国の焼物を再現しようとして失敗して生まれたのが志野だとも言われています。失敗作に当時の茶人が思わぬ美しさを発見したのでしょう。その美しさとは、白い軟らかい肌合いのもので、雪が積もって表面が凍った所に朝日が当った有様と表現する人もいるくらいで、白い肌の所々に出る薄紅色が優しさと気品を醸し出しています。表面に柚子のようなおうとつが現れるので、柚子肌とも表現されています。

 志野は白土に白く発色する長石釉という釉薬を分厚く掛けたものが主流で、それに鉄で絵を描いたり、また白土の上に鉄(鬼板)を全体に塗って釉薬を掛けて地肌を鼠色にしたりして、無地志野、絵志野、鼠志野などと呼ばれる色々な志野が造られています。

国宝 志野茶碗 銘「卯花墻」 美濃

桃山 16世紀 径11.8cm
写真「特別展 日本の陶磁」東京国立博物館より
*画像をクリックした拡大写真をご覧ください。
  鼠志野鶺鴒文鉢  美濃

桃山  16から17世紀
写真「特別展 日本の陶磁」東京国立博物館より
*画像をクリックした拡大写真をご覧ください。

 写真の国宝「卯花墻」(うのはながき)志野茶碗は、日本で焼かれた茶碗で国宝に指定されている2つの茶碗のうちの一つです。当時、美濃の牟田洞窯で焼かれたもので、現在は三井記念美術館が所蔵されています。この茶碗もその大胆な造形から古田織部好みで作られた茶碗ではないかと言われています。

 志野が美濃の大萱牟田洞窯(おおがやむたぼら)で焼かれていたというのは、昭和5年に現代陶芸家の荒川豊蔵が志野の陶片をそこで発見して初めて実証されました。桃山陶も時代を経て江戸時代に入っていくと、時代の嗜好で次第に磁器の有田焼や京焼にその座を取って替わられていきます。そして、中には窯が途絶えてしまうものも多く現れました。志野焼も時代の趨勢で一旦は途絶えてしまいましたが、荒川豊蔵が志野の陶片を発見して、再び、桃山陶を復興させようという気運が高まり、荒川豊蔵をはじめとする現代陶芸家が心血を注いで現代に桃山陶を蘇らせることに成功しました。何もない所からの出発ですからその大変さは想像を超えるものだった事でしょう。豊蔵の他には、備前の金重陶陽、瀬戸の加藤唐九郎、唐津の中里無庵、萩の三輪休和などがその歴史的な大仕事を成し遂げています。

 そして、そういった先達の功労のうえに、現代には桃山陶の伝統を受継いだ数々の独創的な焼物が開花している訳です。荒川豊蔵も見事に志野を復活させて、現代の創造性を加味してすばらしい陶芸の数々を創造していきました。昭和30年には、志野、瀬戸黒で人間国宝に指定されました。

 写真の茶碗は、薄紅色に発色した地肌に蕨の絵が描かれており、銘の「早春」の通り、何とも言えない春の暖かさが伝わってくるような優しいお茶碗です。形は地味でも、寡黙で人と積極的に交際することもなく地道に陶芸取り組んだ豊蔵の内包した真の通った美しい生き方が伝わってくるような一品だと思います。
荒川豊蔵 志野蕨絵茶碗 「早春」 1964年 径12.3cm 写真「現代日本陶芸全集」集英社より)

 
画像をクリックして拡大写真をご覧ください。
 

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