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「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束」 中村哲 澤地久枝 対談 (岩波書店)

by staff on 2011/3/10, 木曜日
「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る アフガンとの約束」 中村哲 澤地久枝 対談 (岩波書店)  

 ペシャワール会、アフガニスタン、井戸掘りという言葉が浮かぶ。
 しかしそんな言葉で終わってはいけないのだと、じっと考え込むことになる。
 あとがきに添えてで、中村さんは次のように言う。「今アフガニスタンで進行している出来事は、やがて全世界を巻き込む破局の入り口にすぎない。」「私は九州と東部アフガンしか知らない田舎者である。ヒトは自分が生きた時代と地域の精神的な気流の中でしか、言葉を発することが出来ない。だがどんな小さな村や町も、世界の歴史の反映ではある。二十五年前、遠いお伽の国の話だと思っていたことが、一人の日本人としてこれほど身近になったことはなかった。世界中でグローバル化の功罪がささやかれるが、その不幸な余波をまともに受け続けているのが、この国である。アフガニスタンは、良きにつけ悪しきにつけ、一つの時代の終焉と私たちの将来を暗示している。」

 少し長く引用してしまった。井戸掘りという行為そのものが必要なのだが、政治環境は簡単ではない。そしていくつかの言葉を知る必要がある。

 タリバンはマドラッサで学んでいる子供をいう。アラビア語。複数形であるという。マドラッサで学ぶ子どものタリバンと、政治勢力としてのタリバンは違うということ。マドラッサはモスクを中心とした識字教育をする伝統的な寺子屋のようなもの。地域の共同体のかなめであるということ。伝統的な習俗を否認無視して地域は再生されるのかと中村医師は訴える。自主性を生かす、水路によって生活の自立を促す。気の遠くなるような活動を日本人が行っている。「水路沿いだけでなく、我々は。ほかの涸れた用水路もてがけている。クナール川の水位がさがっているので、川沿いのどこも取水に困っています。堰上げ工事をやりまして、ほかの村々の用水路も復活させているんです。われわれが撤退すると砂漠化していまうだろうという用水路、それらを併せて灌漑面積が約1万4千ヘクタールです。全部で約六十万人の農民が暮しています。その人たちの生命が、どうなるかなのです。」

 澤地さんは言います。「先生は泰然として笑っておられるけど・・・。先生はつぎつぎに何段階にも深みにはまっていって、ついに水路建設までいっちゃったなと思います。でも気持ちがない人は、おなじ事態におかれてもそうはならない。先生は、目の前にいる人を助けたいという気持ち、見捨てるのは胸が痛いという気持ちがおわりになるから、次のステップへ、さらに次のステップへと進まれたのだと思うのです。」

 中村さんは次のようにいいます。「アフガニスタンという国全体が伝統的な体質を尊重する国だということで、そこからは、われわれが想像するような国際テロ組織というものは生まれようがない。コンピュータを駆使して、飛行機を乗っ取ってというような芸当が、あのおじさんたちに出来るはずがない。いわゆるテロ実行犯というのは、アラブ系のエリートで、ほとんどがドイツ、アメリカ、イギリスで育った若者たちです。」

 「中村医師が己をかたろうとしないのは、自慢話は死ぬほどいやであることのほか、苦労や愚痴話は言ってどうなるものか、という誇りもしくはあきらめあってのものと思える。」「死の危険に幾度も直面し、しかしその瞬間、これで楽になれるという思いがひらめいたという。それだけ、生きていれば逃れられない重い荷物を背負っているのだ。」そしてこうも書かれる。この20数年、国際援助の名のもとに巨額の現金が寄せられた。一部の人は、それで富貴の夢をみたし、忘れられている貧しい人々との格差は絶望的なものになった、と。

(文:横須賀 健治)

<参考>

 

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