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「人間の器量」 福田和也 著 新潮新書

by staff on 2011/6/10, 金曜日
「人間の器量」新潮新書 福田和也  

 完璧な人間がいないように、まったく無価値な人間もいないと冒頭で書かれる。人間の器量は時代によって求められるものが違うように思う。

 福田は著書のなかで大隈重信を取り上げている。大隈は声を聞く前にみな逃げてしまうほどの凄まじいひとであったようだ。それが弟子でのちの実業家五代友厚の謹言を受け入れたのだという。

一 議論聞くべし
二 地位が下のものが閣下と近い意見を言ったらすべて採用する
三 怒るべからず
四 即決せずぎりぎりまで待つ
五 進んで嫌いな人との交際を求めるべし

 訪ねてくる人間とは、誰とでも会うことにしたという。器とは修行によっておおきくなるという。人は何歳になっても変わることが出来るという。

どうしたら器量の大きい人間ができるか、器量を大きくできるかとは、まずなにより先人に学ぶ必要があるとのべている。

 「開国をめぐる風雲が急を告げると、再び登用されて京都で奔走します。この時期西郷は、権謀術数を尽くして幕府を倒壊に導いていくのですが、ただ鷹揚なだけではない、悪にも強い西郷の貌がのぞいています。」「西郷という人はとても細かい人でもありました。郡の役人をしていたので、金勘定などにきわめて細かかったといいます。細かいことが全部わかった上で、すべてを飲み込んで大きく構えている。」

 「西郷は至誠の人であるとともに、権謀の人でもありました。開国的な斉彬の薫陶を受けた西郷が開国に反対の訳がありません。けれども、開国を否定する攘夷のエネルギーを利用して、幕府を徹底的に追い詰め、その挙句に倒してしまった。そして倒幕が成功した途端、方針を大転換して全面的に開国し、近代化政策にを推進した。」

 国の将来の為に自分の身を捨てたのである。新政府が出来てうまくいったことばかりではない。汚職が頻発し理想が地に落ちたところもあった。こんなはずではなかったという武士たちにその一命をくれってやったのだという。

 さて、今の時代、なぜ器量が必要なのか。著者は次のように言う。

 「死を前にした時、いくらお金があっても仕方がない。高級車も豪邸も意味はない。栄誉も経歴も、何の役にもたたない。見苦しくなく死ぬためには、人間の容量を大きくするしかないのです。」

 「器が大きいと云われるほどの人物は生涯かけて自分をあらたな場所に立たせ続けてきたのではないでしょうか。徳富蘇峰などは、八十歳すぎて敗戦を経験し、その思想と立場を大転換している。なかなか蘇峰のようにはいかないけれど、私も生きて、筆をもっている限りは、そのように拡がり、変わり続けていきたいと願っています。」

 ゆっくりと歩み続けることを提唱される福田氏に共感をしたのだった。

(文:横須賀 健治)

<参考>

 

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