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【新年のご挨拶】
みなさま、新年明けましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

ソーシャルメディアの正体(第三回)

by staff on 2011/10/10, 月曜日

デジタルハリウッド大学大学院/NVD株式会社 松本英博

1.ソーシャルメディアでお客さまの声を聴いてみよう

 前回、ソーシャルメディアと企業側の活用、さらに、その戦略に触れた。今回は、企業側の戦略の基本となる傾聴戦略について具体的に説明してみようと思う。

 「傾聴戦略」、つまり、聴き耳を立てることは、ビジネスでは不可欠でありながら、これまで意外に軽視されてきた。軽視された原因の1つは、ソーシャルメディアの出現まで企業の傾聴の費用対効果が極端に悪かったからである。従来の傾聴戦略と言えば、企業が市場調査という限定的で形式的な方法で、お客さまの声を聴く手段に訴えるしかなかった。結果は、お客さまの偏った声、あるいは限定的な意見がピックアップされれば良い方で、ほとんど、ニーズが見えてこないものだった。

 ソーシャルメディアの時代には、企業が聴くことは、かなりたやすくなった。と同時に、お客さまも自分たちの要望や意見、クレームを聴いてくれない企業は、罪人扱いされる。今や顧客の声を聴かないことは罪ですらある時代である。

 傾聴戦略を立てる前に、現状把握をするのが定石。自分たち企業や自社商品・サービスがどう見られているのか、他社と比べてどうなのかといった評価を把握しなければならない。そのためにも、自社によるコミュニティー(プライベート・コミュニティー)やブランドモニタリングサービスの利用が考えられる。これらが何であるかは、後で詳しく述べるとして、社内の経営資源と簡単なITツールを使って、「自ら聴き始める」ことが重要である。ここで「自ら」とわざわざ断っている点に注意してほしい。幾多の分析サービスの分析報告を鵜呑みにするのではなく、自社の社員が生情報を目に触れておく必要があるということだ。ソーシャルメディアの生情報は実に多種多様である。切り口鋭く見ることも重要だが、全体の大きな流れ(傾向)をつかむことも重要である。

では、現状把握のポイントは何か。

自社のブランドがイメージしているものを知ろう

 先ず、「がっかり」してはいけないこと。それは、自社が伝えたいメッセージと人々が話している内容が一致していない場合である。さらに言えば、ブランドは、企業側の訴求したイメージではなく、生活者が持ったイメージで創られる。ツイッターやフェイスブック、ブログに自社の話題が出た場合、そこでのイメージが自社のブランドである。

会話の変化を知ろう

 少し傾聴に慣れ、現状が把握できると、会話の変化に気付くはずだ。ライバル会社が話題をさらうこともあろうし、製品の中身よりも価格の高さが話題になることもなろう。アンケート調査などでは明確な変化が分からないが、ソーシャルメディアでは鮮明に動きが読み取れるだろう。しかも、週ごと、あるいは日ごとでその変化が見える。問題は、この変化と売上高という変数を突き合わせると、会話の内容が、先行指標として捉えられるかもしれない。問題を抱えているお客さまがあれば、その解決に手を貸すことで売上につながる場合もある。

傾聴の費用対効果を最大にしよう

 もし、自社に調査予算があれば、市場調査よりも傾聴戦略による調査に予算を回す方が、効果が大きい。プライベート・コミュニティーで「理由」を訊ねることも可能だ。ブランド・モニタリングではアンケート調査などで拾い切れなかった詳細を分析できる。

ソーシャルメディアで大きな影響を与えているのは誰かを特定しよう

 ブログの世界ではアルファブロガーと呼ばれ、コミュニティーで話をリードしている人物を特定することも重要だ。いわゆるインフルエンサーである。傾聴戦略ではその特定までだが、会話戦略、活性化戦略などでは非常に重要な人たちだ。傾聴戦略が基本であるというのは、インフルエンサーを含め自社のお客さまの漠然としたイメージを特定できるからだ。お客さまの構成が分かれば、自社からの情報発信が適切にできる。

危機対策として傾聴しよう

 ユーチューブで批判的なビデオが投稿されたり、否定的なブログ記事があふれたり、フォーラムに悪評が立つといった広報上の危機を、傾聴していれば事前に察知できる。ブランド・モニタリングが早期警戒システムとなり、収拾のつかない事態に発展する前に手を打てるようになる。危機回避のキーはスピードであるのは周知の事実である。

新製品やマーケティングのアイデアを得よう

 お客さまの方が製品やサービスを改善するためのアイデアは豊富である。なぜなら、対価を支払って自分の問題解決に使えるかどうかを厳しい目で見ているからである。サービスを効率化する方法を教えてくれるお客さま、新しい機能やパッケージを提案してくれるブロガー、効果的なマーケティング・メッセージや店舗のアイデアを語るお客さま・・・。よく考えると、このような貴重な情報が、ソーシャルメディアを通じてアクセスできる時代はこれまでなかったと言える。

2.傾聴戦略は現場から経営中枢へ拡げる

 傾聴、つまりお客さまの声を聴く、と決めたら、先ず、すべきことは何だろうか?

 顧客との接点の多い部門、あるいは顧客の行動や興味を常に知りたがっている部門の現場から始まるだろう。具体的には、リサーチ(調査)部門やマーケティング部門、商品企画などである。経営中枢の思いも重要だが、これらの部門が傾聴に対して十分な理解があるないかで、傾聴戦略の成功不成功が決まる。つまり、商品を買ってくれるお客さまを客観的に見つめ、そこからの意見を吸い上げることに理解があるかである。商品の良さや機能ばかりを並べ立てて、お客さまの課題にどう取り組むのか分からない商品戦略や広報、広告宣伝、販売促進策は、決して「傾聴」ではない。

では、傾聴を進める戦略はどうあるべきだろうか?

自社に興味ある(あるいはクレームしたい)お客さまのプロフィールを調べる

 自社に対してプラス(興味あり)、ナイナス(クレームしたい)お客さまは、性別、年齢、住所、企業の顧客であれば、どの部門であるかなどのプロフィールを調べる必要がある。また、自社を取り巻く、ファンやコミュニティーの存在を把握する必要がある。そこで何が語られ、何が話題になっているのか、どんな課題があり、それをどう解決しているのかなどを「傾聴」しなければならない。

小さく始めて、大きく考える

 多くのブランドや商材を持つ企業の場合、全ブランドや商材を網羅したモニタリングプログラム(監視調査)を行おうとすると相当な予算が必要となってしまう。先ずは、1つのブランドを選ぶ。そこでのファンに関するプライベート・コミュニティーなどを調査する。小さく始めて、その様子を聴きながら、他のブランドや商材に展開すること。そうでないと、情報の管理が大変になり、手に負えなくなる。

今最先端のコミュニティー分析サービスを利用する前に、自社に専任のスタッフが約束されているかを確認する

 今や多くのベンチャーやICT企業が、ソーシャルメディアの分析ツールを使って、傾聴に必要なデータを揃えてくれる。ただ、気をつけたいのは、サービスを売り込んできた部門は切れ者だが、実際に分析に当たるスタッフの質に保証はない。常に、アウトソース先のスタッフも経験豊富なチームで対応しているかなどを調査しておこう。

情報分析後、他のデータと統合する仕事は、経営中枢の役員が担当する

 先ずはアウトソースであっても自社で傾聴した結果を分析して、ベンダーや関係者、社内の適当な部門と情報を共有するには、少なくとも現場に専任者が必要だ。傾聴の具体的な手段などの設計を行うのもこの専任者である。ただ、共有する傾聴分析の結果は、多くの部門に必要となるはずで、現場の専任者だけでは、全社に展開するには力不足である。全社的な視点で、経営陣の担当役員が、情報戦略として現場に指示し、計画の実行などを決めなければならない。つまり、現場のボトムアップと経営陣からのトップダウンが協調されるかで傾聴戦略の成功・不成功が決まる。

3.傾聴戦略で社内組織を変えざるをえなくなる

 顧客から情報を引き出せるようになると、傾聴戦略の推進者の分析データが、社内の幾つか部門で重宝するようになる。やがて、全社的に情報の共有が重要となり、経営に影響を与えることになる。これが組織の最適化の原動力となる。

 さらに、これまでの商品企画や開発での失敗事例や愚行が、容赦なく、顧客のパーソナル・コミュニティーなどで暴かれることになる。クレームだと思って単純に処理し、具体的な策がなければ、顧客や顧客候補からもそっぽを向かれてしまう。傾聴により、企業側の活動が「ガラス張り」状態であることが理解できれば、現状の組織の再編を行って、顧客に応えなければならないともいえる。

 さて、次回は、聴くことから話をすることに移ろう。しかし、忘れてはならないことは、傾聴が基本であり、これが出来ていないのに対話戦略に移行しては行けない。傾聴も出来ていないうちに対話を行うと、大きな、顧客やファンのコミュニティーから大きなしっぺ返しが起こる危険性がある。

次回の予告:
次回は、「ソーシャルメディアでつぶやきに挑戦」と題して「対話戦略」の実際を考えたい。

松本英博 プロフィール

 

松本 英博(まつもと ひでひろ)

デジタルハリウッド大学大学院 専任教授/NVD株式会社 代表取締役

 京都府出身。18年にわたりNECに勤務。同社のパーソナルメディア開発本部で、MPEG1でのマルチメディア技術の開発と国際標準化と日本工業規格 (JIS)化を行い、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで画像圧縮技術を習得のため留学。帰国後、ネットワークス開発研究所ではWAPや i-モードなどの無線インターネットアクセス技術の応用製品の開発と国際標準化を技術マネジャーとして指揮。

 NEC退社後、ベンチャー投資会社ネオテニーにおいて大企業の新規事業開発支援、社内ベンチャーの事業化支援を行い、2002年9月にネオテニーから分離独立し、NVD株式会社(旧ネオテニーベンチャー開発)を設立、代表取締役に就任。大手企業の新規事業開発・社内ベンチャー育成などのコンサルティング 実績を持つ。

 IEEE(米国電子工学学会)会員、MIT日本人会会員。神奈川県商工労働部新産業ベンチャー事業認定委員、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授、現在に至る。

 

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