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ソーシャルメディアの正体(第四回)

by staff on 2011/11/10, 木曜日

デジタルハリウッド大学大学院/NVD株式会社 松本英博

1.ソーシャルメディアでつぶやきに挑戦

 前回の傾聴、つまり「きき耳をたてる」ことと、つぶやきの大きな違いは、ソーシャルメディアに参加している生活者や更につながっている生活者を含めた不特定多数に対するアクションであることだ。企業が取るアクションであるからリアクションもあるし、つぶやきに対するリアクションに責任を持つ必要も出てくる。

 ここでは、つぶやき、更に対話への戦略を考える前に、通常の企業の情報発信を考えておこう。というのは、一足飛びに顧客への対話に進む前に、従来の情報発信との違いを知ることだ。現段階で課題を抱きながら、対話戦略を取ることにリスクを伴うことを知っておこう。

2.情報発信の目的は?

 一般に、企業が情報発信する媒体(メディア)として、自営メディア、購入メディア、ソーシャルメディアがあると言われる。ソーシャルメディアは、すでに紹介しているので省くと、自営メディアは、広報部門や宣伝部門が所轄し、自ら情報を提供する。商品発表のプレスリリース等がこれに当たる。一方、同じ所轄部門でも広告代理店なども含めて企画をねり、自社ではメディア自身を持たずに、商品情報など情報の中身(コンテンツ)だけを提供し、出稿料を支払う購入メディアがある。

 さて、気付くべきは、自営や購入メディアは、自社からの一方的な情報発信であること。言い換えれば、生活者のニーズによって、受け入れが決まり、情報発信の良否が決まる。すでに購入した生活者なら、新製品の広告をしても、タイミングが悪かった、と悔いる情報になるし、未購入者で興味がなければ、騒々しいだけのものかもしれない。

 そこで、明確にすべきは、商品のを伝えたいのかということである。こう訊ねれば、経営者の誰しもが、「それは商品の良さ」と答えるかもしれない。しかし、本当に「良さ」が、とことんまで追求されているだろうか?また、それが今までの情報発信で明確に伝えられているだろうか?

 さらに、ソーシャルメディアにつぶやく前の点検として、以下の問いに答えていただきたい。

自社は社会の何に貢献しているのか。その価値を具体的にあげてみよう。

お客様にどのように貢献するのか。具体的なアクションをあげてみよう。

お客様も含め、取引先や仕入れ先、納入先や販売店など自社の関係者に、商品を通じて自社はどのように貢献しているか。

言行一致が約束できるか。一部が全体、全体が一部の代弁者となりうるか。

生活者(購入者とは限らない)と具体的に誰がどんな手段でどのように対話するのか。商品の開発、製造、物流、マーケティング・販売、サポートの各部門で、誰がどのように生活者の目線で対話ができるか。

 

 さて、これらの回答は、自社の対話戦略の設計図になりうる。なぜなら、これらが明確になった時、初めて、一方通行の情報発信に終始した自社が、一歩前に出るチャレンジの準備になるからだ。つぶやきのよる責任やアクションに対するリスクはある。しかし、ここで手に入る果実は、お客様の生の声という、自社のどの部門も喉から手が出るほど欲しい情報である。

3.対話へのいざない

 傾聴戦略が基本であることは、前回のべた。リスク管理は先ずは傾聴した情報から、上記の5つのポイントを明確にして、「小さく始めて、大きく育てる」戦略で進めよう。

 自営や購入メディアとは異なり、ソーシャルメディアは、自社を取り囲むファン候補が核になることが多い。ファン候補を本当のファンとして自社と対話してくれれば、ソーシャルメディアに期待する口コミやブランドの強化も可能となる。それでは、自社のファンを見つけ、活性化するにはどうすればよいのだろうか?

 基本的には、ツイッターやフェイスブック、MIXIのようなソーシャルメディア自身に自社のファンを見つけ、活性化する機能はない。これを見誤ってはいけない。あくまでも自社の方で、ファン化を進める準備することになる。その第一歩が、自社の人格力を代表する経営指針やお客様から見た自社商品の「良さ」を整理し、対話を行う現場に理解されていることである。全く常識的なことだと思われるであろうが、対話が進んだときに、この理解があやふやで不十分あれば、上記の(4)言行一致が約束されなくなる。そこでもう対話は途切れてしまう。

 現場の各部門で対話を行う担当であれば、是非読んでほしい参考図書が、『生協の白石さん』(白石 昌則著、講談社)である。単なる売り手でない白石さんのウィットにとんだメッセージから多くのヒントが得られるはずだ。

 準備ができたら、現場の対話担当が自ら対話を「体験」すること。そして、社内で情報を共有すること。傾聴した内容と突き合わせて分析すること。そして、アクションも共有した社内のメンバの協議の上、出来るだけ速く進めること。ここから先はPDCAサイクルだ。

 対話戦略に定石はない。しかし、自社「ならでは」のお客様との対話が身に付けば、ソーシャルメディアが自分たちのコントロールできるものではなく、むしろ、自社を知って身を投じる必要があることに気付くだろう。

次回の予告:
次回の予告:次回は、「ソーシャルメディアの光と影」と題して「リスク管理とソーシャルメディア・マーケティング」を解説する。

松本英博 プロフィール

 

松本 英博(まつもと ひでひろ)

デジタルハリウッド大学大学院 専任教授/NVD株式会社 代表取締役

 京都府出身。18年にわたりNECに勤務。同社のパーソナルメディア開発本部で、MPEG1でのマルチメディア技術の開発と国際標準化と日本工業規格 (JIS)化を行い、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで画像圧縮技術を習得のため留学。帰国後、ネットワークス開発研究所ではWAPや i-モードなどの無線インターネットアクセス技術の応用製品の開発と国際標準化を技術マネジャーとして指揮。

 NEC退社後、ベンチャー投資会社ネオテニーにおいて大企業の新規事業開発支援、社内ベンチャーの事業化支援を行い、2002年9月にネオテニーから分離独立し、NVD株式会社(旧ネオテニーベンチャー開発)を設立、代表取締役に就任。大手企業の新規事業開発・社内ベンチャー育成などのコンサルティング 実績を持つ。

 IEEE(米国電子工学学会)会員、MIT日本人会会員。神奈川県商工労働部新産業ベンチャー事業認定委員、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授、現在に至る。

 

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