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2011年11月 「ありがとう、スティーブ・ジョブズ!」

by staff on 2011/11/10, 木曜日

 このヨコハマNOWには、ジョブズのスタンフォード大学における2005年の卒業生へのはなむけの名演説が載っている。この演説は何度でも聞きたい普遍的な魅力をもつ。ジョウン・バエズの美しい旋律に乗せてキング牧師の鮮烈なメッセージを込めたかのようで、リンカーンのゲティスバーグ演説に匹敵する歴史を動かす珠玉の作品であると思う。

 突然の死からひと月もたたない間に100万部を突破した伝記が、日本語版も含めて世界同時発売されたスティーブ・ジョブズ。この天才的事業家の名前は既にエジソンやフォードと並ぶ名前となっている。彼の業績や人生はこれから何十年もの間、世界中の人たちから注目され続けるであろう。そして、その劇的な生涯を彼とともに生きてきた我々は時代の生き証人としての幸運を肌で感じ取れるのである。

 彼の亡くなった年齢を聞いてちょっと調べてみて、この魅力あふれる天才には有名な同級生がたくさんいることを知った。第二次世界大戦が終結したあの1945年。それから10年して、日本では55年体制と呼ばれたその年に生まれたジョブズ。彼と同じ年に生まれた人たちの中に、なんと、ビル・ゲイツがいて、また日本には、郷ひろみと江川卓がいるのをご存知だろうか。養子として育った天才的なスティーブは人生を走り抜け、その命は燃えつき夜鷹の星となった。ビルは巨万の富をもとに世界一の基金をつくり21世紀のカーネギーになろうとしているかの如くだ。郷ひろみは「君たち女の子いぇいいぇい」のティーンのアイドルから、日本発ラテン系エンターテイナーとしての新境地を開いている。怪物くん、江川は大学受験に失敗、空白の一日などを経て、《エガワる》存在から小林との和解と別れや事業の問題などを乗り越えんとし、数年のうちにはおそらくは遅咲きの巨人の監督として一時代を築くのであろうか。

 たまたまこの4人と同じ1955年にこの世に生を受けたわたくしは、どうゆうわけか、彼ら、「天才秀才鬼才美才」を常に同時代人(contemporary)のなかの同級生として意識して生きてきた。ゴウゴウ(55)から権六(56)となったわれら、55年体制世代は、《松坂世代》でも《ハンカチ世代》でもない《ジョブズ世代》であり、パソコン革命と通信革命の嵐をその身に感じて成長してきた。手書きの清書をする仕事が存在したころに社会人になり、ワングの英文ワープロからしばらくして東芝ルポの日本語ワープロが登場し、パソコンがいつの間にか必須用品となり、デスクの上に大きな場所を占めるようになっていった。そしていつしかインターネットというものが当たり前になり、携帯が小さくなり、メイルが送れるというiモードなるものが時代の先端となったかと思う間もなく、いまやスマホなどという変な名前が流行語となる時代だ。

 この間、バトンを受け取った我々の世代は世代間の架け橋となって、先輩世代の知恵や良心を受け渡す《ワン・ブリッジ》たらんとして懸命に生きてきた。そして今、ジョブズの遺言となったあのスピーチを何度でも繰り返し聞き直してみて、情報革命というものは何だったのかを振り返ってみたい気分になった。先日この《ヨコハマNOW》のものづくり研究会の企画で再度見る機会のあった木下徹監督の作品「さくらさくら」の高峰譲吉博士の精神 “Try, Try Again” を思い出した。偉人たちに共通するこのような不屈の魂をすべての世代とともに分かち合いたい気持ちで一杯だ。日本語でも英語でもその楽しみを同じ志や気質をもつ友人たちと分かち合って、天から与えられた生命の奇跡を深く味わっていきたい。そのためにはできればジョブズのスピーチを暗記してみるのがよいだろう。歌を覚えるつもりでこの若人たちへのはなむけの言葉の簡潔にして美しい英語の詩とその背後にある思想を味わおう。そうすれば知らぬ間に英語が上達しているのに気づくだろう。

 言葉は意味を噛みしめながらゆっくりとスローフードのごとくに覚えるといいと思う。外国人が日本語を覚えるのも同じだ。本日地域の国際交流座談会に出席してそう思った。8人のパネリストの中にタイからきて20年になる日本人と結婚した女性がいた。実にさわやかな人だった。彼女の好きな言葉に「幸福」というのがあった。彼女と話した。とても幸せな良い笑顔だった。そして幸せなのは、優しくて良いご主人とめぐりあってこの日本での生活を一生懸命生きているからだと分かった。ルイ・アームストロングの名曲が心に浮かんだ。What a wonderful world! IT革命を経験した我々は、人類の史上はじめて、地球人という感覚を日々感じながら生きているのだ。30年以上前に初めて行ったロサンゼルスのディズニーランドでBank of Americaスポンサーによる建物が気に入った。あの音楽が聞こえてくる。It’s a small, small world. 世界の子供たちの人形が歌う世界だ。

 11月の文化の日の翌日からの3日間、山口百恵と水谷豊の住む中央線の郊外の学園都市である国立市は天下市と一橋祭に沸いていた。われこそは、21世紀を、前世期までとは全く異なる《向上心》と《和解》そして《寛容》を基調とし、《競争のための競争原理》と《自己満足》からの脱皮を実現するひとりとならんと欲するものである。「われは海の子、白波の」の歌とともに《ジョブズ世代》の一員として、駅伝の選手として美しく突っ走っていきたい。宮澤賢治の「雨にも負けず」の精神でもって大震災後の世の中に新時代の指導理念を創出したい。自分はこの激動の時代に日本男子たることに幸運を感じるものである。

 ”Stay hungry, stay foolish. It was their farewell message. I have always wished that for myself. And now as you graduate to begin anew, I wish that for you. Stay hungry, stay foolish. Thank you all, very much.”

 スピーチの最後に響くギターの音色を胸に今日も明日も明後日も前進していこう。

 

小田切英治郎 プロフィール

昭和30年5月、北九州生まれ。牡牛座、A型。横浜と横須賀育ち、県立横須賀高校から一橋大学で国際法を学ぶ。米国駐在を含めた金融機関勤務、中堅企業やベンチャーでの仕事を経て、文化や経営、社会や歴史を中心とする翻訳や日本語や英語での執筆に従事。 米国のビジネス論文、大手企業の週刊文化発信、米国の社会改革の論文等の和訳に加えて、バイリンガルのライフスタイル雑誌・ウェブサイト・ブローシャー等の日本語版制作にも携わる。 ラッセル、ドラッカー、ガルブレイスに目を通し、中島みゆきに耳を傾けると、城達也の声や、淀川長治の顔が浮かんできた。21世紀の地球は、地上の星が満天の星と対等に挨拶できるような星になってほしい。三権+メディア+金融の五権の分立を基本として、ペンは剣よりも金塊よりも歯切れよく、人は大海に向かって船出し、笑顔で戻ってくるのだ。

 

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