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【新年のご挨拶】
みなさま、新年明けましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

ソーシャルメディアの正体(第七回)

by staff on 2012/2/10, 金曜日

デジタルハリウッド大学大学院/NVD株式会社 松本英博

1.ソーシャルメディアでモノ・コト創りを考える

 第二回で紹介したグランズウェルで考えると、企業としては、ソーシャルメディアに関わるのだから、高度な支援戦略や統合戦略まで漕ぎ着けたいところが本音であろう。

 支援戦略は、顧客のニーズにあった解決法(ソリューション)をソーシャルメディアの環境で生み出そうという戦略である。具体的にはお客さまが参加する商品企画などがこれに当たる。商品開発の初期の段階にお客さまに絡んでもらって、売れる商品づくりを目指そうという考え方だ。

 よく引用される事例として、「無印良品」を展開する良品計画がある。今ではフェイスブックページ(フェイスブックでの企業ページ)の成功事例として引用されるが、成功に至るまでの多くの努力が背後にあることも忘れてはならない。フェイスブックをやったら、すぐに成功するといった単純なことではない。積み上げた努力が重要だ。

 良心計画ではネットを使った顧客との共創の模索は、2001年にさかのぼる。もちろん、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアも存在しないときである。当時は、「ものづくりコミュニティー(現『くらしの良品研究所』としてリニューアル)」を設置し、生活者との交流によって、生活者視点の商品開発を進めていた。すでに、このサイトから「体にフィットするソファ」といったヒット商品も生んでいる。

 現在開発中の「スマートフォンでも使用可能な手回し充電付きラジオ」も顧客の声に応えた商品づくりだ。東日本大震災以後のエコと防災グッズのニーズを巧みに捉えている。

 先ず、お客さまがどのように商品企画に参加するのかを見てみよう。

 商品企画のプロジェクトに参加するには、同社サイトのメンバー登録を行う。登録完了後、掲示板などに投稿を行い、次々と投稿される内容から、「これは」と思ったアイデアを開発テーマとして選定するといった流れである。最終的には、ソファの場合「すわる生活」といったテーマで紹介され、良品計画自身がコンセプトを設定する。更に顧客の知恵の集約である複数のコンセプトに対して、顧客が人気投票する。その後は、通常の同社の商品設計、商品開発、販路設定を経て、確定された商品案に、購入予約を募る。購入予約数が一定の予定ロットを越えた時、初めて商品販売の段階となる。

 ここでの良品計画の姿勢が重要だ。実店舗と同様に、ネット上でお客様の声を聴き、要望からニーズやアイデアを取り上げていく姿勢が活かされていることである。フェイスブックページを運営する「中の人」(=社員)も同社の実店舗での販売経験があることから、さらに具体的な商品化に持っていくノウハウがこのあたりにある。

 良品計画の事例は、多くのネット上のファンを捉え、ソーシャルメディアによるモノづくりの枠組みを提供した好例である。

 モノづくりには、企画に顧客が絡むことでオープンであり、顧客同士や企業も加わったことによる「面白さ・楽しさ」が重要である。市中で購入できないレアな(稀な)商品は、初めて提案した顧客にとって、決してレアとは思わないが、企業から見れば、希少品(レア)である。その後、コミュニティーの中で、購入したい顧客同士の交流によって潜在需要が広がることで、レアから企業が扱える相当数の商品に変化する。と同時に、企業は、売るべき顧客像や商品イメージを手に入れられるというわけである。

 売るべき商品を買うべきお客様に届ける。最もマーケティングで達成したい環境が拡がる。

 それでは、コト(イベント)ではどうだろうか。

2.ソーシャルメディア・マーケティングで集客を考え、イベント開催する

 店舗への集客では飲食業や小売、コンビニエンス・ストアなどが事例として挙げられる。中でも、コンビニエンス・ストアでの取り組みで集客をコトで進める「クーポン」の効果は大きい。すでに、グル―ポンなどのクーポン連動型SNSが話題に上り、利用した読者もあるだろう。

 国内で最初にコンビニエンス・ストア業界で、ソーシャルメディアをマーケティング戦略として取り組み始めたのは、ローソンやファミリーマートである。ローソンは、2010年4月からツイッターを皮切りに、同年8月にはニコニコ動画、ミクシィページなどを設定、公式アカウントが15サイトと拡げている。

 重要なのはその対応の速さ。ソーシャルメディア参入を企画からソーシャルメディア・ポリシー策定、経営会議の承認、ツイッターの運用開始まで約2カ月で行った。そこには大手広告代理店が入る余地はなく、自社チームで、メディアや提携企業と直接取引で運営しているという。更に重要なことは、クーポン発行というコトに対する評価を設定したことである。評価は、自社サイトへの流入数とクーポン発行数、そしてPOSで分析できるクーポン発行による店舗への来店数である。これを従来の購入メディアで概算すると、10年度の流入数はバナー広告概算で4億円相当の効果があったという。

 商品キャンペーンや新商品発表会、サービスの開始と言ったイベントには、今後お客さまを無視できないのと同様に、ソーシャルメディアも無視できなくなるだろう。イベントでの販売促進は、自社商品のファンを増やし、継続的に商品を手に入れてもらわなければならない。生活者だけでなく、最近はB2B(企業間取引)でも、顧客である企業のファンも、自社のファンになって頂くといったマーケティング戦略が必要となっている。

 良品計画やローソンの事例から分かることは、これまでのマスメディアの専門家(広告代理店)ではなく、自社商品を良く知っている「中の人」(=社員)が対応していることだ。大きな広告宣伝費をかけて一過性のお客さまを得るのが目的ではなく、中長期的にファンとなるお客さまを捉えるなら、「中の人」がうってつけというわけである。ファンの心理としては、相手が社員であれば、企画や開発への自分のアイデアを盛り込んでもらえるのではないか、という期待が大きいと思われる。実際に、良品計画のような商品づくりに参加した場合、その満足感は大きいだろう。この満足感や期待感が引き金となって口コミを生み、ファンの獲得につながるというわけである。ただし、第五回でも述べたように、顧客の期待を裏切ってはならない。期待を裏切り、信頼を失ったときのしっぺ返しは、「炎上」事件を引き起こし、果ては会社の存続も危うくするだろう。

 これまで何度も説いてきたようにソーシャルメディアを挟んで、ファンと企業が対峙するのではなく、同じ視点で立ち、自社の経営理念が、全社員、ピタッと一致しておれば、ソーシャルメディアに危機感を持つ必要はない。

3.統合戦略は「何でもござれ」ではなく、ブランド作りに通じる一貫性を持とう

 統合戦略は、自社の経営理念を元にしたブランドに共感を覚えるファンを支援し、商品の企画から販売までお客さまと共創する戦略である。好きなブランドに自分の思ったモノを作ってもらい、自分も参加して、購入するといったサイクルである。企業にとっては、正に「夢のサイクル」であろう。

 では、ここで言うブランドとは何であろうか。マーケティングの専門的な話はおいて、ここでは、ソーシャルメディアとして次のような経営理念を社員と共有していることである。つまり、

  • 経営理念に基づく自社の社会的な使命、ミッションが明確であること、
  • 自社がもつビジョン、つまり商品やサービスを通じて進めていく将来像が明確であること、
  • 自社が社会的に存在する意義と強み(コア・バリュー)が明確であること、

である。

 ソーシャルメディアでは、お客さまの声がすぐに聞き取れ、対話ができる利便性ゆえに、企業としては、経営理念を社員で共有していないと、個々の社員が、ブランドイメージにそった回答が出来ないことになる。つまり、統合戦略では、お客さま側に社員が更に踏み込むことが多くなり、ブランド作りに通じる一貫した応対が基本となる。お客さまも経営理念を十分に知っており、ブランドイメージに共感しているからこそ、社員は、その応対に「変わらない経営理念」とブランドイメージを念頭におかねばならない。極端に言えば、この一貫性がないならソーシャルメディアには関与出来ないともいえる。

 変わらないものから、「変えるべき」ものは、刻々と変化するニーズに対して常に自社の商品やサービスを進化させ、提供する組織や知恵もどんどん進取していかないとおぼつかない。広く社外の知恵を傾聴して、公開していくとともに企業の構造もニーズにあった形態に変わる必要があろう。

 次回は、ソーシャルからみた企業イメージ、ブランドについて考える。ソーシャルメディアだけでなく、他のメディアとも連携して、よりお客さまから愛されるブランドとなることについて詳しく見ていこう。

次回の予告:
次回は、いよいよ最終回。「ソーシャルメディアと他のメディア」と題して「ソーシャルメディアを使ったブランド作り」を解説しよう。

松本英博 プロフィール

 

松本 英博(まつもと ひでひろ)

デジタルハリウッド大学大学院 専任教授/NVD株式会社 代表取締役

 京都府出身。18年にわたりNECに勤務。同社のパーソナルメディア開発本部で、MPEG1でのマルチメディア技術の開発と国際標準化と日本工業規格 (JIS)化を行い、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで画像圧縮技術を習得のため留学。帰国後、ネットワークス開発研究所ではWAPや i-モードなどの無線インターネットアクセス技術の応用製品の開発と国際標準化を技術マネジャーとして指揮。

 NEC退社後、ベンチャー投資会社ネオテニーにおいて大企業の新規事業開発支援、社内ベンチャーの事業化支援を行い、2002年9月にネオテニーから分離独立し、NVD株式会社(旧ネオテニーベンチャー開発)を設立、代表取締役に就任。大手企業の新規事業開発・社内ベンチャー育成などのコンサルティング 実績を持つ。

 IEEE(米国電子工学学会)会員、MIT日本人会会員。神奈川県商工労働部新産業ベンチャー事業認定委員、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授、現在に至る。

 

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