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佐々木彬文の「四季・色・贅・食」 第10話 猪の子のお祝い?

by staff on 2012/10/10, 水曜日

 宮中にて旧暦十月の大陰の日の大陰の亥の刻(午後9時から10時頃)に「亥の子餅(いのこもち)」(玄猪餅/げんちょもち)を焼き下賜する祭りがあります。 猪は多産です、それにあやかり子孫繁栄と無病息災を願い分け与える行事です。

 

『和歌』を皆様に伝える活動をなさっている早苗ネネさん

 『和歌うた10周年を記念コンサート』が2012年11月14日に横浜みなとみらいホール(小ホール)で催されます。
(和歌うたについて→ ヨコハマNOW»横浜カルチャー»和歌うた

 飛鳥時代から奈良時代、そして平安時代に詠まれた「和歌」。 それに呼応して、今回のわたしのお話は、「猪(亥)の子の祝い」です。

 平安時代の宮中行事が、市中に広まり、形を変えながら現代に伝えられています。

 

和歌うた10周年を記念コンサート 早苗ネネ
『和歌うた10周年を記念コンサート』が2012年11月14日、横浜みなとみらいホール(小ホール)で催されます。

 

亥の子餅

 平安時代に禁中(宮中)で亥の子餅を群臣に下賜したと橘広相(たちばなのひろみ)の『蔵人式』に記されています。

     京都の護王神社 亥の子祭り
京都の護王神社では、十一月一日に亥の子祭りが古式ゆかしく執り行われます。 祭事は夕闇迫る午後5時から営まれ、本殿での祈願祭の後、舞殿で「御春(おはる)の儀」と呼ばれる三種(赤・白・黒)の亥の子餅がつかれ、神前にお供えされます。
護王神社HP:http://www.gooujinja.or.jp/
(写真:yahoo画像から)

 時は貞観、清和天皇の頃、源氏物語の若紫の段に『その夜さり、亥の子餅参らせたり かかる御思いのほどなれば ことことしきさまにあらで こなたばかりに をかしげなる檜破籠などばかりを』(訳:その夜のこと、(館のものが)亥の子餅を御前に差し上げた。 このような(葵の上の)喪中のことであるから儀式ばらず、こちら(紫の上)だけに美しい檜破籠(ひわりご)に入れられて※)とあります。

 

能勢の御所献上 御亥子 の絵です

 摂津能勢の村人達より、餅や小豆や農作物が明治3年まで京の禁裏へ献上されていました。

 『亥の子餅』も能勢から献上されていましたが、やがて宮中においても『亥の子餅』が作られるようになりました。

 平安時代から明治3年まで行われていたこの行事も、天皇が京都御所から東京に移られた今は行われなくなり、知る人も少なく成りました。

 その内に作り方も忘れ去られるのではないかと、危惧いたしております。

栗  6枚が猪の骨
糯  猪の肉
熊笹 猪の牙 を表しています。

 


作:佐々木彬文

 亥の日は陰陽五行では『大陰』の日に成り、その日に一点 陽である火を入れ炉開きを行い。陰から陽に移って行きます。猪は多産ゆえ、子孫繁栄の祈りを込め、亥の子餅を献上する慣習が出来ました。

 

猪の子の祝いは収穫の祝い

 また、旧暦十月の大陰の頃はちょうど刈入れが終わった頃です。京雀(京の市中の人々)の祭りとして『子供たちが地面を竹の棒で付いて廻る』行事が有ります。収穫の祝いと感謝の気持ちを表し田を耕す姿を写したものではないでしょうか?

 地面をたたく祭りも所変われば・・・(亥の子の祝い・十日夜・モグラ叩き)ルーツは同じ?

(クリックで写真拡大)


わらを束ねたもので地面をたたく

 


石臼のようなもので地面をたたく

 


竹の先端にわらを巻いたので地面をたたく

(脱穀の様子をまねしている説、稲作の敵であるモグラをたたき出す説など。地方により早春に行うところもある。 写真:yahoo画像から)

 

● 餅の代わりになぜ蜜柑(ミカン)?

 現在でもこの旧暦十月の大陰の頃に、京の町を散策されましたら、大げさな祭りではなくて、家の前に七輪が一つ・・・用意された七輪の前で、その家の方々が頭を垂れ、氏神社の神主様が詔を奏上した後、蜜柑を網にのせて焼き、通る人たちに分け与えるといったお祭りに、出くわすかもしれません。

 「七輪の上で焼かれるのは、なぜ餅では無く蜜柑なの?」と思うでしょう。

 平安時代 禁中(宮中)では餅(糯米)を用いられましたが、下々の者にとってお米はごちそうで、普段は食べられませんでした。しかし「祭りはしたい」・・・そこで、京雀は考えました(陰暦10月頃で丸い物で身近に有り、お金が掛らないで幾らでも手に入るものとは?)これ等の条件を満たす物が身近に有りました。それが「蜜柑(みかん)」というわけです。(だと思うのですが)それに、蜜柑が焙ると甘く成る事を知っていたのです。 そして、蜜柑も子沢山? 皮をむけば小さな袋に分かれていて、皆で分けられます。 ビタミンCの豊富な蜜柑をみんなで食べて、無病息災と子孫繁栄を願ったのでしょうか。

 

(クリックで写真拡大)

子ども会や町内会で祝う亥の子大明神
「お供えの『蜜柑』に注目!」
(写真:yahoo画像から)

 「お祭り」と言うと、神社の境内で人が集まり賑わうのが「お祭り」だと思われがちですが、まだまだこのように各家ごとに静かに祝う「お祭り」もあります。 この様な「お祭り」は、(私もそうですが)祭らないと気持ち悪い・・・それが風習といわれるものなのでしょうね。

 

お茶事の中の「亥の子」

 丁度、亥の子日は御茶の世界でもとても大切な日なのです。 陰陽五行の全てが陰に成って居ます、この日に一点陽『火』である炭を入れます。これにより、陰から陽に移って行きます。

 是を表した式が『炉開き』なのです。

 本来は、亥の子の日に冬の設えに替え炉を開き、皆様に無病息災・子孫繁栄を願い『炉開き』のお茶事が行われます。 現代は、中々皆様お忙しく、厳格には出来ず、その月の内に執り行う事が多く成りました。

(クリックで写真拡大)

 

 

猪の子ども「うりん坊」に似せてつくられる「亥の子餅」お茶事の「季節のお菓子」です。 写真:yahoo画像から

 また、亥は陰陽五行説では「水」にあたり、火難を逃れるという信仰から、江戸時代には、亥の月の亥の日を選び、囲炉裏(いろり)や炬燵(こたつ)などの暖房器具出すという風習がありました。そろそろ暖房の季節ですね、風邪などお召しにならぬように「用心用心、火の用心!」

 

茶懐石料理を楽しむ

 茶懐石は、亭主が季節の食材でおもてなしをする質素なお料理です。 毎回、季節の新鮮な食材を使い、1~2品をいただきながら、日本人の心の安らぎを感じて、「裏千家茶道」の心を楽しんでください。

『卵素麺(箸洗い)と萩蒸ご飯』の学習風景
9月26日の『卵素麺(箸洗い)と萩蒸ご飯』の学習風景

 

佐々木彬文プロフィール

 日本画家(彬文会主宰)
 茶道講師(裏千家 佐々木宗秀)
 クラッシックギター演奏者

文・絵:佐々木彬文(日本画家・裏千家茶道講師)/編集:高野慈子

 

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